去る2月19日、厚生労働省による「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」が行われ、担当部局である厚生労働省老健局の各課より、新年度予算や事業内容、詳しい方針が説明されました。
この会議は、厚生労働省から各自治体の担当部署へ、来年度予算要求案とともに制度の方針を周知するための会議ですが、今後の制度の方向性や運用のポイントなど、現場の専門職の方々にとっても重要な内容となっています。
今回は後編として、要介護認定、認知症対策、住環境、介護報酬について解説します。
この会議は、厚生労働省から各自治体の担当部署へ、来年度予算要求案とともに制度の方針を周知するための会議ですが、今後の制度の方向性や運用のポイントなど、現場の専門職の方々にとっても重要な内容となっています。
今回は後編として、要介護認定、認知症対策、住環境、介護報酬について解説します。
Vol.43 平成21年度の具体的方針を示す「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」レポート(後編)
要介護認定の見直し
要介護認定については、一次判定のソフトが改善されることと、認定調査項目が削減されることが大きな見直しの要点です。一次判定のソフトは平成13年当時に開発されたものですが、介護技術が進歩するなど、介護現場の状況を適切に反映していないのでは、ということが指摘されていました。今回からは、より実態に近づくよう、19年に行われた高齢者介護実態調査に基づいてデータ更新が行われたソフトを用いることとなります。
また、18年度に介護予防重視の観点から導入された「要介護1相当」の判定に関しても改善が行われます。現行は一次判定で「要介護1相当」と判定した上で、介護認定審査会の場で「認知の具合」や「状態の安定性」を考慮して最終的な判定が行われていますが、煩雑で運用上もばらつきがあるとの指摘を受け、コンピュータ上で「要支援2」と「要介護1」の判別を行う仕組みに変更されます。
もう一つの要点である調査項目については、現行の7群82項目から、5群74項目に削減されます。従来、認定にかかる事務負担が多く、このことが要介護認定の質の低下をさせる原因にもなりかねないとの見方がありました。
今回の見直しでは、項目が減っても要介護認定のコンピューター判定の精度が落ちないことを検証し、その結果を受けて、「火の不始末」「幻視幻聴」「暴言暴行」「不潔行為」など、8項目が削除されることになりました。
また、18年度に介護予防重視の観点から導入された「要介護1相当」の判定に関しても改善が行われます。現行は一次判定で「要介護1相当」と判定した上で、介護認定審査会の場で「認知の具合」や「状態の安定性」を考慮して最終的な判定が行われていますが、煩雑で運用上もばらつきがあるとの指摘を受け、コンピュータ上で「要支援2」と「要介護1」の判別を行う仕組みに変更されます。
もう一つの要点である調査項目については、現行の7群82項目から、5群74項目に削減されます。従来、認定にかかる事務負担が多く、このことが要介護認定の質の低下をさせる原因にもなりかねないとの見方がありました。
今回の見直しでは、項目が減っても要介護認定のコンピューター判定の精度が落ちないことを検証し、その結果を受けて、「火の不始末」「幻視幻聴」「暴言暴行」「不潔行為」など、8項目が削除されることになりました。
認知症対策
平成21年度の認知症対策は、昨年に厚生労働大臣の指示の元で開催された「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」を受け、大幅な拡充が図られることになっています。
特に、全国150か所の市町村の地域包括支援センターに「認知症連携担当者」を常勤換算で1人以上配置し、保健士や社会福祉士、ケアマネジャーなどと地域における認知症ケア体制を強化したり、認知症の専門医療を提供する認知症疾患医療センターとの連携を強化するなど、介護・医療の両面から認知症者を支える仕組みが整えられます。
認知症連携担当者は、認知症介護指導者研修修了者やそれに準ずる者で、研修終了予定者も可能となっています。
また報酬の面からも、グループホームの看取りに加算が付いたり、認知症短期集中リハビリテーションを中重度者に含めたりと、今後増加が見込まれる認知症者を積極的に受け入れるための改定が行われています(詳細は下記の報酬の項で触れます)。
特に、全国150か所の市町村の地域包括支援センターに「認知症連携担当者」を常勤換算で1人以上配置し、保健士や社会福祉士、ケアマネジャーなどと地域における認知症ケア体制を強化したり、認知症の専門医療を提供する認知症疾患医療センターとの連携を強化するなど、介護・医療の両面から認知症者を支える仕組みが整えられます。
認知症連携担当者は、認知症介護指導者研修修了者やそれに準ずる者で、研修終了予定者も可能となっています。
また報酬の面からも、グループホームの看取りに加算が付いたり、認知症短期集中リハビリテーションを中重度者に含めたりと、今後増加が見込まれる認知症者を積極的に受け入れるための改定が行われています(詳細は下記の報酬の項で触れます)。
住環境の整備
高齢者の住環境については、単身世帯や要介護の高齢者が増える中で、特に団地などはバリアフリー化が立ち後れていたり、福祉や医療などの生活支援が付属した住宅が不足していたりと、住宅施策と福祉施策を連携して進めなければならない課題が多くあります。
厚生労働省と国土交通省は、今国会に「高齢者の住居の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)の改正案を提出し、高齢者が安心して暮らせる住まいの整備を行うとしています。具体的には、公団の中に福祉・医療等の拠点となる施設(高齢者生活支援施設)を作ったり、高齢者向けの優良賃貸住宅を整備して、高齢者生活支援施設と合築し、認知症高齢者グループホームとして賃貸できるようにするなど、さまざまな取り組みが行われる予定です。
一方、既存の施設については、昨年の死者7名、負傷者3名を出した認知症高齢者グループホーム火災を機に、小規模福祉施設にもスプリンクラーを設置することが義務づけられ、今年4月から平成23年度までの間に整備しなければならないこととなっています(一部の適用外を除く)。定員29名以下の特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、認知症高齢者グループホームで、延床面積が275m2以上ある施設は、1m2あたり9000円の補助が出ることになっています。
また、高齢者を在宅生活を支える重要な介護サービスである小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護については、介護報酬の引き上げが行われ、これら地域密着型のサービスが一層普及するよう対策が講じられています。
厚生労働省と国土交通省は、今国会に「高齢者の住居の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)の改正案を提出し、高齢者が安心して暮らせる住まいの整備を行うとしています。具体的には、公団の中に福祉・医療等の拠点となる施設(高齢者生活支援施設)を作ったり、高齢者向けの優良賃貸住宅を整備して、高齢者生活支援施設と合築し、認知症高齢者グループホームとして賃貸できるようにするなど、さまざまな取り組みが行われる予定です。
一方、既存の施設については、昨年の死者7名、負傷者3名を出した認知症高齢者グループホーム火災を機に、小規模福祉施設にもスプリンクラーを設置することが義務づけられ、今年4月から平成23年度までの間に整備しなければならないこととなっています(一部の適用外を除く)。定員29名以下の特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、認知症高齢者グループホームで、延床面積が275m2以上ある施設は、1m2あたり9000円の補助が出ることになっています。
また、高齢者を在宅生活を支える重要な介護サービスである小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護については、介護報酬の引き上げが行われ、これら地域密着型のサービスが一層普及するよう対策が講じられています。
介護報酬改定〜処遇改善のほか、医療との連携・認知症ケアにも注目
今回の報酬改定では、介護従事者の人材確保・処遇改善(注目するべき項目は、第36回、第37回を参照ください)と並んで、医療との連携や認知症ケアを充実させることが改定の基本的な視点として挙げられています。
医療との連携面では、例えばケアマネジメント業務で、利用者が医療機関に入院することになったとき、その医療機関のスタッフに利用者の情報を提供した場合、「医療連携加算」として月150単位(利用者1人につき月1回)が算定されることになりました。
同じように、利用者が医療機関から退院・退所されて介護へ移行する時には、医療機関のスタッフと面談し、情報提供を求めるなどの連携を図ると、「退院退所加算」として月400単位あるいは月600単位が算定されることになりました(入院入所日数により単位が異なります)。
また、通所リハビリテーションでは、医療保険から移行してきた利用者が、介護保険でも引き続き短時間のサービスを行うことができるよう、「所要時間1時間以上2時間未満」という設定時間が新たに追加されました(従来は3時間以上からが算定の対象でした)。
このように、医療と介護の間で切れ目なく、スムーズにサービスを受けられるよう、医療との連携に対する加算や医療保険の算定方法との整合性を図る部分が多くみられるのも、今回のポイントといえます。
もう一方の認知症については、厚生労働省の資料中、各サービス項目の報酬改定ポイントと並列して「認知症関係」という項目が立てられており、今回の改定により質の向上を図るという意図を明確に感じることができます。
具体的には、グループホームの退居時相談援助業務に対する加算(400単位/回)や看取りに対する加算(80単位/日、死亡以前30日上限)、夜間ケア加算(25単位/日)などの創設、また、認知症の専門研修を受けたスタッフが介護サービスを提供した場合に「認知症専門ケア加算」(要件に応じ1日につき4単位あるいは4単位)が算定できるなど、新しい項目が多く設定されています。
また若年性の認知症についても、従来は若年性認知症者のみによって構成されるグループに対して、専門の職員配置や専用の介護が提供される場合にしか算定されなかった加算を、「若年性認知症者を1人でも受け入れ、本人や家族の希望を踏まえたサービスを行った場合」というように、要件を大きく緩和しており、老年・若年を問わず、これから急速に増えると思われる認知症へのケアを一層推進する意図がうがかえます。
医療との連携面では、例えばケアマネジメント業務で、利用者が医療機関に入院することになったとき、その医療機関のスタッフに利用者の情報を提供した場合、「医療連携加算」として月150単位(利用者1人につき月1回)が算定されることになりました。
同じように、利用者が医療機関から退院・退所されて介護へ移行する時には、医療機関のスタッフと面談し、情報提供を求めるなどの連携を図ると、「退院退所加算」として月400単位あるいは月600単位が算定されることになりました(入院入所日数により単位が異なります)。
また、通所リハビリテーションでは、医療保険から移行してきた利用者が、介護保険でも引き続き短時間のサービスを行うことができるよう、「所要時間1時間以上2時間未満」という設定時間が新たに追加されました(従来は3時間以上からが算定の対象でした)。
このように、医療と介護の間で切れ目なく、スムーズにサービスを受けられるよう、医療との連携に対する加算や医療保険の算定方法との整合性を図る部分が多くみられるのも、今回のポイントといえます。
もう一方の認知症については、厚生労働省の資料中、各サービス項目の報酬改定ポイントと並列して「認知症関係」という項目が立てられており、今回の改定により質の向上を図るという意図を明確に感じることができます。
具体的には、グループホームの退居時相談援助業務に対する加算(400単位/回)や看取りに対する加算(80単位/日、死亡以前30日上限)、夜間ケア加算(25単位/日)などの創設、また、認知症の専門研修を受けたスタッフが介護サービスを提供した場合に「認知症専門ケア加算」(要件に応じ1日につき4単位あるいは4単位)が算定できるなど、新しい項目が多く設定されています。
また若年性の認知症についても、従来は若年性認知症者のみによって構成されるグループに対して、専門の職員配置や専用の介護が提供される場合にしか算定されなかった加算を、「若年性認知症者を1人でも受け入れ、本人や家族の希望を踏まえたサービスを行った場合」というように、要件を大きく緩和しており、老年・若年を問わず、これから急速に増えると思われる認知症へのケアを一層推進する意図がうがかえます。
正しい理解と運用を
こうした制度の内容は全体にかかわるのもから、各サービスの細かい部分まで多岐にわたっており、一度に把握するのはとても難しいかもしれません。
しかし、経営の安定や従業員の処遇改善・キャリアアップ、ハードの整備に予算が付けられているかどうかなど、平成21年度に行われる制度内容を十分に理解し、報酬であれば加算が取れる部分は積極的に取り、また効率よく行える部分はスリム化するなど、考えながら運用を図っていくことが今後一層必要になってくると思われます。
しかし、経営の安定や従業員の処遇改善・キャリアアップ、ハードの整備に予算が付けられているかどうかなど、平成21年度に行われる制度内容を十分に理解し、報酬であれば加算が取れる部分は積極的に取り、また効率よく行える部分はスリム化するなど、考えながら運用を図っていくことが今後一層必要になってくると思われます。