認知症の早期診断・早期告知が進むにつれて、自らの病気を自覚し、自分の言葉で伝える当事者が増えています。そこで、本人が困っていることや支援体制づくりを構築するための調査・研究が始まりました。今回のキャッチ・アップは、その一環として行われる「本人の意見公募」を取り上げます。
Vol.94 認知症の本人の声に耳を傾ける――認知症の本人の意見公募始まる
本人の声を集めて集約し、施策や支援につなげる
「2004年、若年性認知症のクリスティーン・ブライデンさんが来日し、認知症の当事者の声を伝えました。このときから、本人の声を国の施策決定に反映する必要性を感じていたのです。08年には『認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト』の報告書が公表され、09年には当時の桝添厚生労働大臣と認知症の本人が意見を交換しました。さらに09年3月には、「若年性認知症対策の推進について」という通知が厚生労働省から出され、一人ひとりの状態に応じた支援がいわれています。今回は、本人の声を集めて集約し、施策や支援につなげていこうと考えています」
永田久美子さん(認知症介護研究・研修東京センター)によれば、認知症の本人からのこうした呼びかけは日本で初めてとのことです。
事業名:地域包括支援センター等を中心とした認知症支援地域ネットワーク構築のための事業 事業実施目的:認知症サポート医などの整備が進んでいるが、専門医、サポート医、かかりつけ医の協働のあり方をどうすべきか、地域では悩んでいる現状がある。また、医療機関と地域包括支援センター、介護保険事業所などが連携を行うための、認知症支援地域ネットワークの構築は不十分である。原因は、(1)認知症支援といっても、地域で働くそれぞれの専門職のイメージが異なっていること、(2)どのようなステージの人に対する支援を誰が行うのか(例えば、専門医は初期診断やBPSDへの治療を行い、BPSDの激しくないケースはかかりつけ医と介護保険事業所で支援するなど)が不明確であること、(3)地域の多職種が協働のためにイメージする研修や各事業へのイメージが明確でないことなどがあげられる。 本事業の目的は、これら認知症支援地域ネットワークのイメージをどのように共有化していくか明らかにし、その構築のために、これまで地域包括支援センターなどを中心に協働していった実績のある地域をモデルとして調査し、それを元に視覚教材を含めた、研修教材の開発を行うことである。 |
当事者から当事者への思い
今回の呼びかけ人である当事者は2名、埼玉県の佐藤雅彦さんと静岡県の佐野光孝さんです。2人とも50歳代で認知症と診断された若年性認知症ですが、現在でもボランティア活動をしながら前向きに生きています。
佐藤さんは「認知症の本人が望む生活は、私たちが声を上げていかないと誰もわかってくれない」と言い、できるだけ多くの当事者からの応募を待っているとのことです。また佐野さんは「本人同士が話し合う場所や情報交換ができる場があればいい」として、当事者には正面から病と向き合い、病気を理解することが大切だといいます。
佐藤さんは「認知症の本人が望む生活は、私たちが声を上げていかないと誰もわかってくれない」と言い、できるだけ多くの当事者からの応募を待っているとのことです。また佐野さんは「本人同士が話し合う場所や情報交換ができる場があればいい」として、当事者には正面から病と向き合い、病気を理解することが大切だといいます。
応募締切は2011年1月15日(第一次)と2月28日(第二次)。寄せられた意見は、3月6日に開催される予定の「普及セミナー」で発表し、そのあとホームページで紹介する予定だといいます。また、3月末には報告書を作成し、寄せられた意見が施策などに反映されるように働きかけるそうです。
本人主体と言いながらも、これまではケアの提供者側の都合になっていたことは少なくありません。「どうせ何もわからないんだから」という先入観を捨て、本人の声に耳を傾けてみませんか。皆さんの職場にも、たとえ認知症でも、自分の思いを伝える人はいませんか?
本人主体と言いながらも、これまではケアの提供者側の都合になっていたことは少なくありません。「どうせ何もわからないんだから」という先入観を捨て、本人の声に耳を傾けてみませんか。皆さんの職場にも、たとえ認知症でも、自分の思いを伝える人はいませんか?
- 公募に関する問い合わせ先
-
NPO法人 認知症の人とみんなのサポートセンター
http://npo.kenko.officelive.com/default.aspx