介護職員処遇改善交付金の申請、皆さんの事業所はお済みですか? 実施開始の10月サービス分にまでさかのぼって交付を受けられる申請期日が、今月末に迫っています。
今月申請するのとしないのでは大きく異なる介護職員処遇改善交付金について、今一度、制度とポイントを確認します。
今月申請するのとしないのでは大きく異なる介護職員処遇改善交付金について、今一度、制度とポイントを確認します。
Vol.69 介護職員処遇改善交付金 遡及交付の締め切り迫る!
「介護職員処遇改善交付金」とは
そもそも、この「介護職員処遇改善交付金」とは何かを、少しだけおさらいしましょう。
介護職員処遇改善交付金は、他職種との賃金格差を少しでも埋めて、介護職員の処遇を改善するという目的で、介護報酬のプラス改定とは別に、政府が経済対策として約4000億円を計上したものです。
介護報酬は、上がれば当然保険料や自己負担額にも影響するということ、介護報酬が上がった分が必ずしも職員の賃金に反映されるとは限らない、という2つの問題をクリアするために、報酬とは別枠の「交付金」という形で、しかも職員の賃金に直接反映させるお金として設定されています。
期間は平成21年10月サービス分から23度末までの2年半。約4000億円という額は、介護職員の常勤換算で計算し、月額1万5000円分×2年半に相当する金額です。
介護職員処遇改善交付金は、他職種との賃金格差を少しでも埋めて、介護職員の処遇を改善するという目的で、介護報酬のプラス改定とは別に、政府が経済対策として約4000億円を計上したものです。
介護報酬は、上がれば当然保険料や自己負担額にも影響するということ、介護報酬が上がった分が必ずしも職員の賃金に反映されるとは限らない、という2つの問題をクリアするために、報酬とは別枠の「交付金」という形で、しかも職員の賃金に直接反映させるお金として設定されています。
期間は平成21年10月サービス分から23度末までの2年半。約4000億円という額は、介護職員の常勤換算で計算し、月額1万5000円分×2年半に相当する金額です。
伸び悩む申請率 今月中の申請が鍵
報道でも話題になりましたが、この交付金の申請率が思わしくなく、また自治体間でバラツキが大きいということで、厚生労働省は都道府県別の申請率を公表したり、事業所に案内のチラシを送付するなど、申請率を100%にしようとしています。
最初に公表された申請率が10月9日時点のもので48%、10月30日時点でも73%と、3割近い事業所が10月サービス分の交付を逃してしまっている結果が明らかになり、厚生労働省は、特例的に申請の延長を決定。12月末までに申請すれば、10月サービス分までさかのぼって交付を受けられることにしました。
その後、申請率の調査は行われていませんが、急激に駆け込み申請が発生している様子はなく、「少しずつ申請書が届いている」程度(東京都)という状況のようです。
最初に公表された申請率が10月9日時点のもので48%、10月30日時点でも73%と、3割近い事業所が10月サービス分の交付を逃してしまっている結果が明らかになり、厚生労働省は、特例的に申請の延長を決定。12月末までに申請すれば、10月サービス分までさかのぼって交付を受けられることにしました。
その後、申請率の調査は行われていませんが、急激に駆け込み申請が発生している様子はなく、「少しずつ申請書が届いている」程度(東京都)という状況のようです。
平成21年度の交付は、10月サービス分から来年1月サービス分までの4か月分です。これは、支払月をベースにして考えられているためです(支払は2か月遅れのため)。つまり、12月中に申請すれば今回の特例が適用され、今年度としては4か月分交付金が出ることになりますが、来月1月に申請を伸ばしてしまうと、今年度は1月分だけ、つまり1か月分しか交付されません。
介護職員の立場からすれば、1人1万5000円×3か月分=4万5000円のお金になりますので(実際の額は事業所により異なりますが)、できることであれば早い申請が望まれます。
介護職員の立場からすれば、1人1万5000円×3か月分=4万5000円のお金になりますので(実際の額は事業所により異なりますが)、できることであれば早い申請が望まれます。
事業主側は思案のしどころ
一方、事業主側には悩ましい問題があります。それは、申請対象が介護職員だけになっているということです。介護職員とは、指定基準で介護職員、介護従業者、ヘルパー等として勤務している方のことで、訪問看護など、人員基準上介護職員のいないサービスは交付の対象外です(逆に、看護師が介護職員として働いていれば交付の対象になります)。つまりこの交付金は、法定上の介護職員以外の賃上げに充てることは許されていないのです。
事業主側は、交付金を還元することで生じる介護職員と介護職員以外の職員との賃金差、介護職員どうしの賃金差、また、一時金で支払うか、ベースアップするかなど、どういう形で支払うかについても考えなければなりません。バランスをとるために、持ち出しをしなければならない可能性も考えられます。
しかも、どのような形で賃金アップするかを職員に周知する必要があり、金額まで提示することが望ましいとされています。
この交付金が終わる平成24年度以降はどうなるのか、長妻厚生労働大臣は「どのような形にせよ財源を減らすことはしない」としていますが、具体的な見通しが見えない分、経営者にとっては思案のしどころです。
事業主側は、交付金を還元することで生じる介護職員と介護職員以外の職員との賃金差、介護職員どうしの賃金差、また、一時金で支払うか、ベースアップするかなど、どういう形で支払うかについても考えなければなりません。バランスをとるために、持ち出しをしなければならない可能性も考えられます。
しかも、どのような形で賃金アップするかを職員に周知する必要があり、金額まで提示することが望ましいとされています。
この交付金が終わる平成24年度以降はどうなるのか、長妻厚生労働大臣は「どのような形にせよ財源を減らすことはしない」としていますが、具体的な見通しが見えない分、経営者にとっては思案のしどころです。
介護業界全体の処遇改善を考える
とはいえ、介護業界全体のことを考えれば、この交付金をみすみす逃がすのは得策ではありません。今のところ「ベースアップよりも、一時金や手当という形での支払形態が多い印象」(東京都)というように、一時的な手当であっても、処遇改善に役立てることが必要ではないでしょうか。
交付のあり方からその要件まで、さまざまな議論の余地のある今回の介護職員処遇改善交付金。来年度からは、キャリアパス等が交付要件になることが検討されています。今回の申請書類にも、介護報酬改定後、賃金「以外」の改善についてどのようなことを行ってきたかを記入する項目がありますが、研修や環境整備など、全体を含めて介護業界がレベルアップできる交付金や報酬のしくみであってほしいと思います。
介護職員処遇改善交付金の説明ページ(厚生労働省) ※本交付金の申請先は都道府県です。交付のあり方からその要件まで、さまざまな議論の余地のある今回の介護職員処遇改善交付金。来年度からは、キャリアパス等が交付要件になることが検討されています。今回の申請書類にも、介護報酬改定後、賃金「以外」の改善についてどのようなことを行ってきたかを記入する項目がありますが、研修や環境整備など、全体を含めて介護業界がレベルアップできる交付金や報酬のしくみであってほしいと思います。