9月に発足した鳩山新政権─障害者自立支援法、後期高齢者医療制度だけにとどまらず、民主党の掲げる政策には今後の社会保障に大きな影響を与えるものも少なくありません。介護・福祉業界は今度どのように再編されていくのか。介護福祉ジャーナリスト・田中元さんに、新政権下によるこれからの変化を語ってもらいました。
Vol.67 政権交代で、介護・福祉はどう変わるのか? (前編)
新たな政権の掲げる介護・福祉施策とは
今年8月に行われた総選挙での圧勝を受け、民主党を中心とした新たな政権が誕生しました。すでに行政刷新会議における「事業仕分け」などを通じ、これまでの政策にも大きなメスが入ろうとしています。
この新政権スタートで、介護・福祉の現場にはどんな影響がおよぶのかを考えてみましょう。まずは、民主党が選挙前から掲げている「政策集」にスポットを当ててみます。
現場として関心の高い「介護報酬」ですが、政策集では「事業者に対する介護報酬を7%加算し、介護労働者の賃金を月4万円程度引き上げる」としています。特に強調されているのが、前政権が打ち出した「介護職員処遇改善交付金」の対象から漏れたケアマネジャーについて、介護報酬の引き上げとともにデスクワークを軽くするという方針です。
また、要介護認定についても、見直しを行うということが記されています。同時に、介護労働者の処遇改善、社会的地位の向上、家族介護者の負担を軽くすることを目的とした実態調査を行うとしています。そのうえで、介護保険制度そのものを抜本的に改革するという目標に踏み込んでいます。
そもそも民主党は、たび重なる介護報酬の減額で現場職員の待遇が問題になった際、当時の与党に先がけて国庫負担による介護報酬アップと職員待遇の改善を掲げた「介護労働者の人材確保特別措置法案」を提出しています。いま目指している政策も、その延長にあると考えていいでしょう。
さらに、介護型療養病床の削減計画を中止し、同時に介護施設の建設スピードを前政権時の3倍で行うことも示しました。グループホームや小規模多機能型居宅介護の事業所など、地域密着型サービス拠点の整備にも力を入れることも掲げられています。
この新政権スタートで、介護・福祉の現場にはどんな影響がおよぶのかを考えてみましょう。まずは、民主党が選挙前から掲げている「政策集」にスポットを当ててみます。
現場として関心の高い「介護報酬」ですが、政策集では「事業者に対する介護報酬を7%加算し、介護労働者の賃金を月4万円程度引き上げる」としています。特に強調されているのが、前政権が打ち出した「介護職員処遇改善交付金」の対象から漏れたケアマネジャーについて、介護報酬の引き上げとともにデスクワークを軽くするという方針です。
また、要介護認定についても、見直しを行うということが記されています。同時に、介護労働者の処遇改善、社会的地位の向上、家族介護者の負担を軽くすることを目的とした実態調査を行うとしています。そのうえで、介護保険制度そのものを抜本的に改革するという目標に踏み込んでいます。
そもそも民主党は、たび重なる介護報酬の減額で現場職員の待遇が問題になった際、当時の与党に先がけて国庫負担による介護報酬アップと職員待遇の改善を掲げた「介護労働者の人材確保特別措置法案」を提出しています。いま目指している政策も、その延長にあると考えていいでしょう。
さらに、介護型療養病床の削減計画を中止し、同時に介護施設の建設スピードを前政権時の3倍で行うことも示しました。グループホームや小規模多機能型居宅介護の事業所など、地域密着型サービス拠点の整備にも力を入れることも掲げられています。
実行にはさまざまなハードルも
ただし、これらの施策を実行に移すには、大幅な予算組み替えのほか、国として「介護・福祉」の枠組みを大きく見直すという作業が必要になります。政権交代後、新政権の前には様々な課題が立ちはだかっており、これまでのところ、介護・福祉に関する部分での大きな動きは見られません。厚生労働関係でも、新型インフルエンザ対策という緊急の課題に手を取られているのが現状です。
とりあえず、前政権が打ち出した「介護職員処遇改善交付金」の申請率を高めることと、新たな要介護認定にともなう実態調査の結果を年内に取りまとめることが予定されています。そうした施策を含めて、当面の改革がどこまで進むのかを次回展望してみます。
とりあえず、前政権が打ち出した「介護職員処遇改善交付金」の申請率を高めることと、新たな要介護認定にともなう実態調査の結果を年内に取りまとめることが予定されています。そうした施策を含めて、当面の改革がどこまで進むのかを次回展望してみます。
(介護福祉ジャーナリスト 田中 元)