去る5月30日(土)と31日(日)の2日間、「“おもい”そして“いのち”を支える社会福祉士」をメインテーマに、(社)日本社会福祉士会主催「第17回 日本社会福祉士全国大会・社会福祉士学会」が熊本にて開催されました。
Vol.52 第17回 日本社会福祉士全国大会・社会福祉士学会が開催
命を考える
大会1日目は、厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長の藤沢勝博さんによる講演「これからの社会福祉士への期待」と、長崎国際大学学長の潮谷義子さんによる基調講演「現代社会に応えるソーシャルワーク」からスタートしました。社会福祉士を取り巻く現状と制度見直しについての解説、多領域での活躍や、実践の知識化と結果の提言力といった社会福祉士の今後に向けての期待が語られました。
シンポジウム「ゆりかごから考える〜現代社会に応える社会福祉士」には、和田要さん(熊本学園大学教授)、鵜川弘行さん(慈愛園乳児ホーム施設長)、黒田信子さん(熊本県中央児童相談所児童相談課長)、田尻由貴子さん(慈恵病院看護部長)、蓮田太二さん(慈恵病院理事長)が登壇。「こうのとりのゆりかご」で全国的にその名を知られることとなった慈恵病院の取り組みから、本来の「ゆりかご」は新生児相談室であるということや、妊娠中に葛藤する女性が多いのにもかかわらず、その相談窓口などの受け皿が少ないこと、さらに子どもの福祉とは何か、施設での育ちと自立など、事例も交えて多くの課題が指摘されました。
内なる差別・共生
「内なる差別意識を問う」と題した、井上佳子さん(熊本放送報道部ディレクター)による取材報告では、おそるおそる始まった取材から、内なる差別をもった自身に気づく過程、さらには、身近にあった療養所に無関心であったことへの反省や、取材を超えた入所者との交流、メディアの責任・疑問などが、ドキュメンタリー映像を交えて語られました。
自殺や階層間格差、民族紛争など、話題は多岐にわたり、大会開催時に大きなニュースになっていた新型インフルエンザに対する人々の過剰反応を例に挙げ、インとアウトのボーダーが明確になった社会は、かつてのハンセン病患者隔離政策と同じ轍を踏む可能性が十分にあり得るのではないかと述べられました。
「皆が同じだから共に生きられる」なのか、「皆が違うからこそ共に生きようとする」なのか。姜さんの言葉は、観客の胸に響いたのではないでしょうか。