要介護認定の見直しに伴う認定の基準は、2009年4月の施行前から「認定結果が軽く出る」「いままでの介護サービスが受けられなくなる」との批判を浴び、厚生労働省は急遽検証を実施、10月から修正した基準を用いて認定を行うことになりました。
今回のキャッチアップは、その一連の経緯と改訂内容のポイント、実務とのかかわりを概観します。
今回のキャッチアップは、その一連の経緯と改訂内容のポイント、実務とのかかわりを概観します。
Vol.60 認定調査員テキスト2009改訂版レビュー
要介護認定見直しの理由
今年4月に行われた要介護認定の見直しは、元々の理由は以下のようなものでした。
(1)データのアップデート
従来の要介護認定の第一次判定は、2001年のデータを反映した作りだったため、最新(07年)の介護の手間を反映させ、データのアップデートを行いました。<br />
(2)バラツキの是正
認定調査による判断基準については、調査員が状態を勘案することでバラツキが出ていた部分があったため、新しい基準では客観的事実、つまり調査時点での「見たまま」の状態で判断し(日頃の状態は勘案しない)、個別判断が必要とされるものは特記事項に書くことされました。
見直しによる問題
見直しにより、要介護認定区分等が軽度に判定され、従来受けてきたサービスが受けられなくなる恐れがあることが施行前の段階で利用者団体等から指摘されました。
・普段はほとんど答えられなくても調査の際に答えられれば「できる」となってしまう
・「自分の名前」について、旧姓しか答えられなくても、「できる」となってしまう
・「買い物」について、品物を選び代金を支払っていれば無駄な買い物をしていても「できる(介助なし)」となってしまう など
これらに対し、厚労省はいったん通知による部分的な修正を出したものの、世論の懸念の声を受けて急遽4月に「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」を設置、検証結果が明らかになるまでは、見直し前の認定結果を適用できる経過措置を設けました(ただし申請が必要です)。
検証では、在宅や新規の申請者が非該当や軽度に判定される割合が増えたことが示され、軽度化傾向になるという指摘を裏づけるものとなりました。また、判断のバラツキを押さえる効果については、一定程度は効果があったものの、「下肢・麻痺」「起きあがり」「立ち上がり」といった一部の項目では逆にバラツキが拡大していることが判りました。
・普段はほとんど答えられなくても調査の際に答えられれば「できる」となってしまう
・「自分の名前」について、旧姓しか答えられなくても、「できる」となってしまう
・「買い物」について、品物を選び代金を支払っていれば無駄な買い物をしていても「できる(介助なし)」となってしまう など
これらに対し、厚労省はいったん通知による部分的な修正を出したものの、世論の懸念の声を受けて急遽4月に「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」を設置、検証結果が明らかになるまでは、見直し前の認定結果を適用できる経過措置を設けました(ただし申請が必要です)。
検証では、在宅や新規の申請者が非該当や軽度に判定される割合が増えたことが示され、軽度化傾向になるという指摘を裏づけるものとなりました。また、判断のバラツキを押さえる効果については、一定程度は効果があったものの、「下肢・麻痺」「起きあがり」「立ち上がり」といった一部の項目では逆にバラツキが拡大していることが判りました。
これらを受けて、調査項目の選択方法をはじめ、全項目の約半分にあたる43項目について加筆・修正を加えることになり、これらを反映した「訂正版」認定調査員テキストが8月7日に完成、10月1日から改訂版に基づいて運用されることとなりました。
認定調査テキストの変更点
「(1)能力」「(2)介助の方法」「(3)(麻痺・拘縮等の)有無」の3つの評価軸のうち、(1)と(3)について、2009年当初版では「調査当日の状況だけで選択する」としていましたが、日頃の状態の聞き取りも含めて、より頻回な状況で選択することとなりました(図2のポイント1)。
また「起きあがり」等の項目は、当初、自分の体をつかんで起きあがる場合、「何かにつかまればできる」ではなく「できる」を選択することになっていましたが、物でなくても、自分の体に加重をかけて立ち上がる場合もあることから、「何かにつかまればできる」を選択するよう修正されました(同ポイント3)。
また「起きあがり」等の項目は、当初、自分の体をつかんで起きあがる場合、「何かにつかまればできる」ではなく「できる」を選択することになっていましたが、物でなくても、自分の体に加重をかけて立ち上がる場合もあることから、「何かにつかまればできる」を選択するよう修正されました(同ポイント3)。
次に、(2)の評価軸(介助の方法)の考え方についてですが、これも「実際に行われている介助」をみて選択し、その介助が適切かどうかは特記事項に記すようになっていました。訂正版では、これを「基本的には調査員の方が適切だと思われる介助を選択した上で、実際に行われているものが不適切な場合には、その旨を特記事項に書く」という方法に修正されました。(同ポイント2)。
また、「髪の毛のない方の整髪」など、実際に生活習慣等によって行為が発生しない場合は、当初版では「介助なし」を選択することとなっていましたが、改訂版では、たとえば頭部の清拭などを類似の項目としてとらえ、それが自分でできるかどうかで選択することとなりました(同ポイント4)。
従前の課題であったバラツキを押さえるため、判断基準の曖昧さをできる限り排除しようとして修正された項目が、一部についてはかえって実態と異なる結果につながってしまい、再度修正を余儀なくされたという格好になりました。
このほか、各項目固有の修正も行われました。(以下は主なもの)
座位保持(1−5):「1分間程度保持」から「10分間程度保持」に修正
つめ切り(1−11):「過去1週間の状況」から「過去1か月の状況」に修正
視力 (1−12):視力だけではなくて視野欠損等も含む。
食事摂取( 2−4):ほぐす動作を介助に含む/中心静脈栄養は「全介助」を選択
排尿(2−5)、排便(2−6):一定の掃除を行っている場合については「後始末」として評価
外出頻度(2−12):自分の敷地、庭に出るものは外出に含めない/「過去3か月の頻度」から「過去1か月の頻度」に修正
物や衣類を壊す(4−11):実際に壊れなくても壊そうとする行動が見られる場合には評価する
物忘れ(4−12):何らかの行動が起こっているということだけでなく、その行動を防ぐために周りの方が、例えば火の不始末について対応するというときには、介助とする。
薬の内服(5−1):経管栄養から内服薬を注入するような場合も評価する
また、「髪の毛のない方の整髪」など、実際に生活習慣等によって行為が発生しない場合は、当初版では「介助なし」を選択することとなっていましたが、改訂版では、たとえば頭部の清拭などを類似の項目としてとらえ、それが自分でできるかどうかで選択することとなりました(同ポイント4)。
従前の課題であったバラツキを押さえるため、判断基準の曖昧さをできる限り排除しようとして修正された項目が、一部についてはかえって実態と異なる結果につながってしまい、再度修正を余儀なくされたという格好になりました。
このほか、各項目固有の修正も行われました。(以下は主なもの)
座位保持(1−5):「1分間程度保持」から「10分間程度保持」に修正
つめ切り(1−11):「過去1週間の状況」から「過去1か月の状況」に修正
視力 (1−12):視力だけではなくて視野欠損等も含む。
食事摂取( 2−4):ほぐす動作を介助に含む/中心静脈栄養は「全介助」を選択
排尿(2−5)、排便(2−6):一定の掃除を行っている場合については「後始末」として評価
外出頻度(2−12):自分の敷地、庭に出るものは外出に含めない/「過去3か月の頻度」から「過去1か月の頻度」に修正
物や衣類を壊す(4−11):実際に壊れなくても壊そうとする行動が見られる場合には評価する
物忘れ(4−12):何らかの行動が起こっているということだけでなく、その行動を防ぐために周りの方が、例えば火の不始末について対応するというときには、介助とする。
薬の内服(5−1):経管栄養から内服薬を注入するような場合も評価する
周知方法の徹底
認定調査員テキスト2009の当初版については、調査全員に情報が行き届いていたかどうかも問題になりました。下のグラフでは、特に委託を受けた調査員への周知が完全にされていたかどうか疑わしい結果となりました。
厚生労働省は、この委託調査員の方について、もう少し現場の方に情報が届くように努力するべきだったとし、訂正版については、ホームページへのアップ、紙媒体の配布のほか、ブロック単位の研修会、動画配信、DVDの配布といったさまざまな媒体を使い、情報提供を徹底しようとしています。
特に、研修会になかなか参加できない調査員のために、研修会の模様、ポイントを動画で配信し、テキストもまとめて掲載した専用のホームページが開設されており、調査員はもちろん、今回の要介護認定の見直しについて詳しく知りたい人にも役立つ情報を一括して見ることができます。
特に、研修会になかなか参加できない調査員のために、研修会の模様、ポイントを動画で配信し、テキストもまとめて掲載した専用のホームページが開設されており、調査員はもちろん、今回の要介護認定の見直しについて詳しく知りたい人にも役立つ情報を一括して見ることができます。
経過措置は? 旧版で認定を受けた人は?
10月1日から修正版による認定がスタートすることにより、経過措置は終了します。ただし、今年4月1日以降に更新となり、経過措置を適用している方は、認定の有効期間が終了するまでその要介護区分を継続することができます。
また、今年4月以降、新規に要介護認定の申請をして認定を受けた方は、そもそも経過措置が適用されていません。もし要介護度が実際の状況と異なると感じたら、区分変更申請や、不服審査の手続きを経て、区分を変更する手段があります。申請はしたけれど非該当になってしまった、という場合も、実際に本人の状況が正確に反映されていないということであれば、その段階で再申請ができます。
今回の一連の見直しや修正は、介護現場に混乱を招きました。10月からは修正された新しい基準での認定が始まりますが、これが実際に運用されたとき、修正の意図が反映されたものになったか、一定の期間の後、あらためて検証が必要でしょう(検証・検討会も見直し後の実施状況について報告を求めています)。そしてこのように検証・検討を繰り返し、利用者や介護スタッフが声を上げながら、介護サービスの質を保ち、向上していかなければならないと考えます。
また、今年4月以降、新規に要介護認定の申請をして認定を受けた方は、そもそも経過措置が適用されていません。もし要介護度が実際の状況と異なると感じたら、区分変更申請や、不服審査の手続きを経て、区分を変更する手段があります。申請はしたけれど非該当になってしまった、という場合も、実際に本人の状況が正確に反映されていないということであれば、その段階で再申請ができます。
今回の一連の見直しや修正は、介護現場に混乱を招きました。10月からは修正された新しい基準での認定が始まりますが、これが実際に運用されたとき、修正の意図が反映されたものになったか、一定の期間の後、あらためて検証が必要でしょう(検証・検討会も見直し後の実施状況について報告を求めています)。そしてこのように検証・検討を繰り返し、利用者や介護スタッフが声を上げながら、介護サービスの質を保ち、向上していかなければならないと考えます。