7月22日から24日までの3日間にわたり、全国介護老人保健施設大会が新潟・朱鷺メッセで開催されました。大会開催通算20回目となる今大会は、「老健が創る新文明〜トキめく長寿社会をめざして〜」と題し、認知症や在宅支援、リハビリなど数々のテーマで合計1000を超える発表がありました。
「キャッチアップ」では、メイン会場で行われた講演の中からピックアップしてレポートします。
「キャッチアップ」では、メイン会場で行われた講演の中からピックアップしてレポートします。
Vol.55 第20回介護老人保健施設新潟大会開かれる(前半)
厚生労働省の特別講演
大会2日目の厚生労働省・宮島老健局長による特別講演は、大会前日に起こった大雨による山口県の特別養護老人ホーム等の被災を受けて対応中ということで、急遽、同局老人保健課の鈴木課長より「地域包括ケアと今後の介護老人保健施設について」というテーマでの講演となりました。
鈴木課長は、今日の社会保障をとりまく現状について、
・今後、高齢者の絶対数はあまり増えない(ただし80歳以上の高齢者の割合は非常に増えていく)
・一方で少子化は進み、若い労働力の確保が深刻な課題になる
とデータを提示しながら話しました。
鈴木課長は、今日の社会保障をとりまく現状について、
・今後、高齢者の絶対数はあまり増えない(ただし80歳以上の高齢者の割合は非常に増えていく)
・一方で少子化は進み、若い労働力の確保が深刻な課題になる
とデータを提示しながら話しました。
女性が出産し、働ける仕組みの確立が課題
また、諸外国は働く女性の割合が高いほど出生率も高いが、これは嫡出でない子(結婚の外で産まれる子)が多く産まれているためで、結婚と出産の結びつきの概念が強い日本や韓国ではそういう結果にはなっていない、と説明しました。
介護現場は今後、確実に成長が見込まれる「産業」であるとともに、多くの女性が活躍する現場だという解説を聞きながら、働きながら子供を産み育てる「仕組み」が、介護の現場にとって喫緊の課題であると改めて実感しました。
介護現場は今後、確実に成長が見込まれる「産業」であるとともに、多くの女性が活躍する現場だという解説を聞きながら、働きながら子供を産み育てる「仕組み」が、介護の現場にとって喫緊の課題であると改めて実感しました。
独居高齢者に対応した新しい住まい方を
鈴木課長は、「介護保険制度は、家族(のヘルプ)をある程度念頭に置いたものとして設計されてきたが、今後単身世帯の高齢者が全体の4割を占める予測であることや、都市部では年間4〜5%の割合で独居化が進むとされており、都市部での介護をとりまく環境は大変厳しいものになる」と指摘。高齢者専用賃貸住宅(高専賃)など、都市部の住まい方についても早急に考えていかないといけないと述べました。
今後の医療と介護の展望―3つのポイント―
今後の老健のあり方については、以下の3つをキーワードに説明が行われました。
1 潮目が変わりかけている
プラス3%の介護報酬改定にも現われているが、社会保障費を抑制しつづけてきた今までの方針から「潮目が変わりかけている」。
2 今が分かれ目
社会保障国民会議で医療・介護の必要な部分に人、モノを思い切って集中投入するシナリオが提案されている(下記URL参照)が、そのぶんお金もかかることになる。消費税率にすれば5〜7%の負担増と見込まれている。
医療・介護を充実するためには財源の話は避けて通れないが、今後15〜20年先、医療と介護をどうしていくか、この1、2年で決めなければならない時期に来ている。選挙も近く、「今が分かれ目」である。
社会保障国民会議(医療・介護サービスの重要と供給のシミュレーション)
医療・介護を充実するためには財源の話は避けて通れないが、今後15〜20年先、医療と介護をどうしていくか、この1、2年で決めなければならない時期に来ている。選挙も近く、「今が分かれ目」である。
社会保障国民会議(医療・介護サービスの重要と供給のシミュレーション)
3 老健が鍵
後期高齢者、要介護者が増え、自宅に住めなくなる人が増えると、高専賃やナーシングホームのような住まいなど、新しい場とサービスが必要になる。そのときに、入り口から出口まで、つまり医療から介護、在宅、リハビリ、看取りなど、多種性をもつ老健は鍵になる。
講演は冒頭から終わりまで、詳細なデータや模式図を一つひとつみながらの解説となりました。この国の医療・介護、社会保障をどうしていけば良いのか、選挙が近づく今、私たち一人ひとりが考えることが、一番必要なことなのかもしれません。
講演は冒頭から終わりまで、詳細なデータや模式図を一つひとつみながらの解説となりました。この国の医療・介護、社会保障をどうしていけば良いのか、選挙が近づく今、私たち一人ひとりが考えることが、一番必要なことなのかもしれません。
(後半に続く)