2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが起こってから9年が経過しました。
この9年間、人々の豊かさの指標も大きな変化を遂げています。物質的な豊かさから心の豊穣へ― 10年9月11日、広島で、介護の価値観を変える事業所の集い「Love&Peace」が開催されました。
この9年間、人々の豊かさの指標も大きな変化を遂げています。物質的な豊かさから心の豊穣へ― 10年9月11日、広島で、介護の価値観を変える事業所の集い「Love&Peace」が開催されました。
Vol.88 新しい介護の幕開け―9月11日に介護と平和を考える「介護バカの集い」
9年前の9月11日、何をしていましたか?
集いを開催したのは、広島の通所介護事業所・玄玄の藤渕安生さん。同時多発テロ当時は介護福祉士養成施設に通う学生で、試験勉強をしていたといいます。「なぜだかわからないけれど、勉強どころではないな、と感じ、テレビに釘付けに。おかげで赤点をとりましたが(笑)」と当時を振り返ります。今回登壇した7つの事業所の方々いずれも、仕事をしていたり、遊んでいたりとそれぞれに当時を過ごしていたといいます。
圧倒的な現実の前では単なる傍観者になってしまいがちですが、時間の洗礼を受けることによって、当時の自分の立ち位置を確認することもできます。現在介護事業所を運営し、介護の変革の真ん中にいる登壇者に加え、100名を超える参加者の誰もが、当時と現在の自分に思いを馳せていたことでしょう。
圧倒的な現実の前では単なる傍観者になってしまいがちですが、時間の洗礼を受けることによって、当時の自分の立ち位置を確認することもできます。現在介護事業所を運営し、介護の変革の真ん中にいる登壇者に加え、100名を超える参加者の誰もが、当時と現在の自分に思いを馳せていたことでしょう。
「死」をどう受け止めるか
当日は藤渕さんに加え、井戸端げんき(千葉)の伊藤英樹さん、いしいさん家(同)の石井英寿さん、こてっちゃん家(茨城)の高橋和宏さん、祥の郷(大阪)の細川鉄平さん、池さん(愛媛)の池内大輔さん、デイサービス榎町(広島)の武井桂子さんの計7名による持ち回りトークセッションで進行されました。全国異なる場所で活動を続ける登壇者ですが、介護に賭ける思いと実践は熱く、類は友を呼び、親交を深めてきた仲間たちです。
最近、介護業界ではターミナル期の利用者にかかわる機会が多いことから、「死」について語られることがあります。今回の登壇者も、利用者の「死」をどう受け止めればよいのか、それぞれ暗中模索の様子でしたが、死が当たり前にそばにない昨今、本人の思いとできること、できないことの間での葛藤に、職員も悩まされていることでしょう。細川さんは「もがくこと」の大事さを説いていましたが、死を経験することで職員は人間的にも専門職としても、大きな成長を遂げることができます。参加者の多くは現場の職員であり、当事者でもあります。語り部のリアルな声は、職員の心に届いたに違いありません。
最近、介護業界ではターミナル期の利用者にかかわる機会が多いことから、「死」について語られることがあります。今回の登壇者も、利用者の「死」をどう受け止めればよいのか、それぞれ暗中模索の様子でしたが、死が当たり前にそばにない昨今、本人の思いとできること、できないことの間での葛藤に、職員も悩まされていることでしょう。細川さんは「もがくこと」の大事さを説いていましたが、死を経験することで職員は人間的にも専門職としても、大きな成長を遂げることができます。参加者の多くは現場の職員であり、当事者でもあります。語り部のリアルな声は、職員の心に届いたに違いありません。
履き違えられる「自由」
登壇者の石井英寿さんと伊藤英樹さんは、同じ千葉県内の事業所であり、顔を合わせる機会も多いといいます。同じ宅老所という形態をとっていることもあり、外からみると同じことをしているようにみられがちといいますが、トップである石井さんと伊藤さんのスタンスは異なることが多いとか。「宅老所というと『自由』が優先されるイメージがあるが、その自由を履き違えられることが多い」と石井さん。「たとえば夜中、利用者と職員がお酒を飲みあう(深酒する)ことなどありえません。そこにはやはり、事業者としての責任があると思います」。
利用者に事故が起これば、事業所の営業停止につながり、結果的にほかの利用者に不利益をもたらしかねません。石井さんは、利用者を預かる立場としての責任について触れましたが、伊藤さんは逆に「そこで事業所が営業停止となっても、利用者の生活が終わるわけではない」といいます。これは責任の放棄ではなく、利用者をすべて受け止める、いわば丸抱えへの危惧を指しています。
サービスの内容が大きく異なるわけではありませんが、事業所の立ち位置は考え方一つとっても異なっているといえます。ほかの5つの事業所も、それぞれの考え方があります。「宅老所」とひとくくりにされてしまうことが多いものですが、目的は等しくとも、考え方や方法論は千差万別であり、それが良さ、多様性といえるでしょう。
主催の藤渕さんは「今回をきっかけとして、定期的に(同じような集まりを)開催していきたい」と言います。自称「介護バカ」「仕事が趣味」の皆さん、夜通し介護について語ってみませんか?
利用者に事故が起これば、事業所の営業停止につながり、結果的にほかの利用者に不利益をもたらしかねません。石井さんは、利用者を預かる立場としての責任について触れましたが、伊藤さんは逆に「そこで事業所が営業停止となっても、利用者の生活が終わるわけではない」といいます。これは責任の放棄ではなく、利用者をすべて受け止める、いわば丸抱えへの危惧を指しています。
サービスの内容が大きく異なるわけではありませんが、事業所の立ち位置は考え方一つとっても異なっているといえます。ほかの5つの事業所も、それぞれの考え方があります。「宅老所」とひとくくりにされてしまうことが多いものですが、目的は等しくとも、考え方や方法論は千差万別であり、それが良さ、多様性といえるでしょう。
主催の藤渕さんは「今回をきっかけとして、定期的に(同じような集まりを)開催していきたい」と言います。自称「介護バカ」「仕事が趣味」の皆さん、夜通し介護について語ってみませんか?