9月に発足した鳩山新政権─障害者自立支援法、後期高齢者医療制度だけにとどまらず、民主党の掲げる政策には今後の社会保障に大きな影響を与えるものも少なくありません。介護・福祉業界は今度どのように再編されていくのか。介護福祉ジャーナリスト・田中元さんに、新政権下によるこれからの変化を語ってもらいました。
Vol.68 政権交代で、介護・福祉はどう変わるのか? (後編)
事業仕分けがスタート
鳩山新政権において、今、最も注目されている取り組みの一つに、行政刷新会議におけるワーキンググループがあります。いわゆる「事業仕分け」のことです。各省庁がとり行ってきた施策の費用対効果などを一つひとつ洗い出し、今後継続していく必要があるのか、現状の予算規模が必要なのかを、一般国民にも公開しながら評価するというものです。
この事業仕分けには、介護関連の施策もいくつか対象となっています。11月16日に行われた「仕分け」では、現任ケアマネジャーが対象となる(1)「介護支援専門資質向上事業」と、地域包括支援センター職員研修事業などを含む(2)「介護サービス適正実施指導事業」にメスが入れられました。翌日17日には、介護保険の地域支援事業のうち、特定高齢者や一般高齢者を対象とした(3)「介護予防事業」も俎上にあげられています。
仕分けの結論としては、(1)が「予算を半減」、(2)は「国の負担金を廃止して都道府県に全面委託」、(3)に至っては「予算を縮減するが、厚労省の説明不足により縮減規模は算定不能」という具合です。すでに複数年で進行している事業に、ここまで厳しい評価がくだったということは、管轄省庁はもとより現場にとってもショックが大きいと思われます。
この事業仕分けには、介護関連の施策もいくつか対象となっています。11月16日に行われた「仕分け」では、現任ケアマネジャーが対象となる(1)「介護支援専門資質向上事業」と、地域包括支援センター職員研修事業などを含む(2)「介護サービス適正実施指導事業」にメスが入れられました。翌日17日には、介護保険の地域支援事業のうち、特定高齢者や一般高齢者を対象とした(3)「介護予防事業」も俎上にあげられています。
仕分けの結論としては、(1)が「予算を半減」、(2)は「国の負担金を廃止して都道府県に全面委託」、(3)に至っては「予算を縮減するが、厚労省の説明不足により縮減規模は算定不能」という具合です。すでに複数年で進行している事業に、ここまで厳しい評価がくだったということは、管轄省庁はもとより現場にとってもショックが大きいと思われます。
今後の介護保険事業の行方は?
今回の仕分け評価が、実際の予算編成に大きく反映されるとなれば、介護保険事業全体にも様々な大ナタが振るわれる可能性があると考えなければなりません。
ただし、厳しい予算カットだけが待っているというわけではありません。前回でも述べたように、政権与党である民主党の総選挙前の政策集でも、介護分野に関しては特に力を入れることを明言しています。10月に打ち出された緊急雇用対策においても、雇用の受け皿として介護業界を名指しで取り上げ、「働きながら介護福祉士等の資格を取れる仕組み」を導入しつつ、その間の給与も国の予算で保障するという大胆な施策を打ち出しました。その意味では、予算を介護業界へと集中的に投入する流れになるといえます。
ただし、一方で、費用対効果という査定は今まで以上に厳しくなり、介護業界で働く人への資質向上もいっそう強く要求されるでしょう。問題は、その評価の仕方が、現場にとって理不尽と感じるものにならないかどうかということです。「このサービスを提供することで、利用者側にはこんなメリットがある」という指標をもう一度見直し、業界自らが「介護のエビデンス」にこだわっていく──この姿勢がますます求められているといえます。
ただし、厳しい予算カットだけが待っているというわけではありません。前回でも述べたように、政権与党である民主党の総選挙前の政策集でも、介護分野に関しては特に力を入れることを明言しています。10月に打ち出された緊急雇用対策においても、雇用の受け皿として介護業界を名指しで取り上げ、「働きながら介護福祉士等の資格を取れる仕組み」を導入しつつ、その間の給与も国の予算で保障するという大胆な施策を打ち出しました。その意味では、予算を介護業界へと集中的に投入する流れになるといえます。
ただし、一方で、費用対効果という査定は今まで以上に厳しくなり、介護業界で働く人への資質向上もいっそう強く要求されるでしょう。問題は、その評価の仕方が、現場にとって理不尽と感じるものにならないかどうかということです。「このサービスを提供することで、利用者側にはこんなメリットがある」という指標をもう一度見直し、業界自らが「介護のエビデンス」にこだわっていく──この姿勢がますます求められているといえます。
(介護福祉ジャーナリスト 田中 元)