去る7月18日(土)に介護福祉士養成大学連絡協議会2009年度総会およびブロック別交流会・公開シンポジウムが開催されました。その中で盛り上がりをみせた公開シンポジウムの様子をレポートします。
Vol.54 介護福祉士養成大学連絡協議会が開催
介護福祉士養成大学連絡協議会・公開シンポジウムは「大学教育の中で介護福祉士を養成することの意味を問う」というテーマで行われました。コーディネーターは東洋大学ライフデザイン学部教授の本名靖先生。シンポジストとして、東北文化学園大学教授の西本典良先生、わかばケアセンター障害者介護課長の入山未央さん、横浜共生会経営企画室長の山崎貴美男さん、コメンテーターとして京都女子大学教授の井上千津子先生が参加しました。
介護福祉士を養成する大学は66校を数えるまでになり、大学で介護福祉士を養成することの意義とは何なのか、大学、介護現場、卒業生のそれぞれの立場から、これからの介護福祉士に求められる専門性と養成教育のあり方を議論しました。
介護福祉士を養成する大学は66校を数えるまでになり、大学で介護福祉士を養成することの意義とは何なのか、大学、介護現場、卒業生のそれぞれの立場から、これからの介護福祉士に求められる専門性と養成教育のあり方を議論しました。
大学教員の立場から
多くの大学で、介護福祉士だけではなく社会福祉士の養成課程をもっており、学生たちの多くもその2つの受験資格を得て卒業していきます。大学教育では2つの資格をもつマルチタレントを作り出そうとしているわけではなく、2つの資格過程を学ぶ中で、どのようなアイデンティティを築き、どのような実践能力をもった専門職を作ることができるかを考えていくべきであると述べました。特に、介護教育における「技術教育」と「実習教育」のありようを考えなければいけないとし、今日の介護技術教育がテクニックもしくは「やり方」でとどまっていないだろうかと問いかけました。
卒業生の立場から
現場では多種多様な問題が常に起こり、その問題の原因追求や解決策の検討など論理的に考える力も必要とされ、大学教育で養われる理論的な思考が、現場で生かされるのではないだろうかと振り返りました。
特に強調されていたのは、「「人」が「人」を相手に関わっていくのがこの仕事。「介護」というもの以前に、「人」として社会性や常識なども身につけてなければならない。他よりも学ぶ時間の多い大学だからこそ、こうしたことも身に付けられる機会があるのではないだろうか」ということです。実際に大学でバスケットボールをやっていた入山さんは、福祉の勉強以外のそんなチームプレイのなかで、今の仕事に役立つ大切なものを身につけられたようです。
介護現場の立場から
山崎さんの所属する施設では、6回の新任研修、2年目研修、3年目研修、4年目研修、5年目以上研修、グループチーフ職員研修、主任/係長月例研修、その他さまざまな研修があります。
4年制大学を卒業し、介護福祉士の資格をもっているからといっても、何ももっていない新人と同じような研修をしないと現場でやっていくことはできないという考えから、新人の研修を厚くしています。大学で得た知識がリセットされてしまうのが現場で、資格をもっているからといっても、研修を怠ることができないというのが現場の立場だそうです。
介護福祉士養成大学の課題
今年4月からの新カリキュラムによる履修時間の増加によって、以前のように介護福祉士・社会福祉士両方の取得をできるカリキュラムを組むことが難しくなりました。これまでは、ダブルライセンスの取得が大学の特色でありましたが、それが困難な状況です。その中で、大学教育でできることを模索すると、先に述べた入山さんの話が大いに参考になるのではないでしょうか。
介護福祉士養成大学の最大のメリットは、介護教育にプラスアルファの付加価値をつけられることです。その付加価値については大学によっても異なりますが、この介護福祉士養成大学連絡協議会でお互いの大学の情報交換をすることで、介護福祉士養成大学の活性化を図ることができるでしょう。