2010年に公開し、介護現場の群像を描いたことで多くの話題を集めた『ただいま それぞれの居場所』から2年。『季節、めぐり それぞれの居場所』が公開されます。介護専門職の方々も大きな期待をもっていることでしょう。そこで今回は大宮浩一監督に、同作品に込めた思いを尋ねます。
Vol.115 生活の延長にある「死」をとらえる
――『季節、めぐり それぞれの居場所』公開記念 大宮浩一監督に聞く
生活の延長にある「死」を見つめる
――前作『ただいま それぞれの居場所』では、小規模な介護保険事業所を立ち上げた人とそこに集う利用者のかかわりを描いていますが、今回、2年後の彼らを追うことになったきっかけについて教えてください。
大宮監督 前作は介護保険制度の施行から10年、さらには固定化された介護のイメージではない実践を追うという、いわばケアの「光」の部分を現わした、ポジティブなイメージの作品でした。しかし現場には、ネガティブな部分もあり、その代表的なものが、「死」といえます。いわば介護は、死と向き合う仕事でもあるのです。今回は、ケアや医療の延長にある死だけでなく、地域や他者との関係性を含めた、広い意味での死について描いたつもりです。
――その意味では、続編ではなく、光と影のように対をなす作品といえますね。最近の日本は、病院で死ぬ人が圧倒的多数を占め、私たちが死を身近に意識することもなくなりました。しかし介護現場には、死が身近にあります。
大宮監督 人が死ぬことで、物理的な関係性は途切れてしまいますが、当事者たちの心の中ではまだ続いているわけです。そうした、生活の延長にある死があることを、映画を通して想像してもらえればと思います。
大宮監督 前作は介護保険制度の施行から10年、さらには固定化された介護のイメージではない実践を追うという、いわばケアの「光」の部分を現わした、ポジティブなイメージの作品でした。しかし現場には、ネガティブな部分もあり、その代表的なものが、「死」といえます。いわば介護は、死と向き合う仕事でもあるのです。今回は、ケアや医療の延長にある死だけでなく、地域や他者との関係性を含めた、広い意味での死について描いたつもりです。
――その意味では、続編ではなく、光と影のように対をなす作品といえますね。最近の日本は、病院で死ぬ人が圧倒的多数を占め、私たちが死を身近に意識することもなくなりました。しかし介護現場には、死が身近にあります。
大宮監督 人が死ぬことで、物理的な関係性は途切れてしまいますが、当事者たちの心の中ではまだ続いているわけです。そうした、生活の延長にある死があることを、映画を通して想像してもらえればと思います。
「変わらない」介護の実践者たち
――撮影は東日本大震災をはさむ形で行われましたが、2年前の実践者たちはこの間、どのような成長を遂げたと感じますか。
大宮監督 成長というか……、彼らは基本的な部分では変わっていないと思います。東日本大震災の際にはフットワークよく被災地に支援に入るなど、私たちスタッフが、彼らから学んだことのほうが大きいですね。
――介護の世界をみると、これまでは大規模施設に入所すると、家族と本人の縁や絆が途切れてしまった部分がありますが、作品に登場する実践者らは、住み慣れた地域の中で、家族や地域の力を借りながら本人を支えています。
大宮監督 震災をきっかけに家族の絆の大切さなどが叫ばれていますが、震災前からこうした地域や家族の絆は崩壊に近い状態にあり、震災がいろいろなことをあぶり出したといえます。その意味では、彼らはこうした絆の修復を試みる実践者でもあります。
――今回の作品でも、ある家族の死と絆が描かれています。仮に専門職の支援がなければ、彼らの死に対するスタンスや消化の仕方もまったく異なったものになったかもしれません。
大宮監督 絆とは常に一緒にいるだけでなく、一定の距離感をとることで深められることもあります。絆の修復者たる力が現場にはあるのです。現場でいえば、現在は介護職と医療職の間に壁があるようにみえるので、今回は医療分野の人に作品を観てもらい、家族や本人を支えるために医療側と介護側、両者が連携できるきっかけのひとつになってほしいですね。
前作『ただいま それぞれの居場所』を観た人からは、「私も(事業所を)始めることにしました」という言葉をかけられ、責任の大きさを実感しているという大宮監督。地域包括ケア、看取りなど、現場を変えるきっかけとなり得るエピソードがちりばめられています。前作を観た人、観ていない人両者に「生」をイメージしていただきたいと思います。
大宮監督 成長というか……、彼らは基本的な部分では変わっていないと思います。東日本大震災の際にはフットワークよく被災地に支援に入るなど、私たちスタッフが、彼らから学んだことのほうが大きいですね。
――介護の世界をみると、これまでは大規模施設に入所すると、家族と本人の縁や絆が途切れてしまった部分がありますが、作品に登場する実践者らは、住み慣れた地域の中で、家族や地域の力を借りながら本人を支えています。
大宮監督 震災をきっかけに家族の絆の大切さなどが叫ばれていますが、震災前からこうした地域や家族の絆は崩壊に近い状態にあり、震災がいろいろなことをあぶり出したといえます。その意味では、彼らはこうした絆の修復を試みる実践者でもあります。
――今回の作品でも、ある家族の死と絆が描かれています。仮に専門職の支援がなければ、彼らの死に対するスタンスや消化の仕方もまったく異なったものになったかもしれません。
大宮監督 絆とは常に一緒にいるだけでなく、一定の距離感をとることで深められることもあります。絆の修復者たる力が現場にはあるのです。現場でいえば、現在は介護職と医療職の間に壁があるようにみえるので、今回は医療分野の人に作品を観てもらい、家族や本人を支えるために医療側と介護側、両者が連携できるきっかけのひとつになってほしいですね。
前作『ただいま それぞれの居場所』を観た人からは、「私も(事業所を)始めることにしました」という言葉をかけられ、責任の大きさを実感しているという大宮監督。地域包括ケア、看取りなど、現場を変えるきっかけとなり得るエピソードがちりばめられています。前作を観た人、観ていない人両者に「生」をイメージしていただきたいと思います。
『季節、めぐり それぞれの居場所』
(C)大宮映像製作所
企画・製作・監督:大宮浩一
4月14日(土)より、ポレポレ東中野(JR・都営大江戸線「東中野」駅)ほか全国で順次公開
配給○合同会社 東風
〒160-0022 東京都新宿区新宿5-4-1-306
TEL03-5919-1542
映画公式ホームページ http://www.kisetsumeguri.com/
※4月7日(土)〜13日(金)連日19時より、公開記念「春の夜の ちょっとアナーキーな ケア・ゼミナール」開催(ポレポレ東中野)
詳細はhttp://kisetsumeguri.com/news/?p=54