介護保険制度は利用者と事業者が契約してサービスが提供されますが、サービスへの要望や不満は事業者に面と向かって言いにくいものです。しかし専門職としても、利用者の生の声を聞くことで、サービスの質を向上させることができます。
今回のキャッチアップでは、東京都および東京都国民健康保険団体連合会に寄せられた苦情相談から、利用する側の思いを探ります。
今回のキャッチアップでは、東京都および東京都国民健康保険団体連合会に寄せられた苦情相談から、利用する側の思いを探ります。
Vol.108 苦情相談をケアに役立てるためには?――東京都の苦情相談対応から考える
苦情相談の目的とは?
介護保険制度では、利用者が、サービスを提供する事業者と契約してサービスを利用することとなっています。
本来、利用者は事業者と対等の立場でサービスを利用することができるはずですが、利用者と事業者との間ではサービスに関する知識・情報の質や量について開きがあったり、“お世話をしてもらっているのだから”と遠慮したりして、仮に利用しているサービスに要望や不満があったとしても、実際にはそれらを表現しにくい場合も多いのではないでしょうか。
このようなことから、介護保険制度では利用者の権利を守るための仕組みの一つとして、苦情相談対応が定められています。
具体的には、市町村で苦情相談窓口を設けているほか、また事業者にあってはその運営基準に「苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置」を講じなければならないとされています。さらに、市町村で対応が難しい場合や、利用者が希望する場合などに国民健康保険団体連合会が苦情の解決に当たっています。
苦情相談の目的は、利用者や家族などからの苦情を通して、利用者の権利を守ると同時に、事業者に対する指導、助言を通じて、苦情に至った経緯などを事業者とともに考えることで、サービスの質の向上を図ることにあります。
本来、利用者は事業者と対等の立場でサービスを利用することができるはずですが、利用者と事業者との間ではサービスに関する知識・情報の質や量について開きがあったり、“お世話をしてもらっているのだから”と遠慮したりして、仮に利用しているサービスに要望や不満があったとしても、実際にはそれらを表現しにくい場合も多いのではないでしょうか。
このようなことから、介護保険制度では利用者の権利を守るための仕組みの一つとして、苦情相談対応が定められています。
具体的には、市町村で苦情相談窓口を設けているほか、また事業者にあってはその運営基準に「苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置」を講じなければならないとされています。さらに、市町村で対応が難しい場合や、利用者が希望する場合などに国民健康保険団体連合会が苦情の解決に当たっています。
苦情相談の目的は、利用者や家族などからの苦情を通して、利用者の権利を守ると同時に、事業者に対する指導、助言を通じて、苦情に至った経緯などを事業者とともに考えることで、サービスの質の向上を図ることにあります。
東京都の苦情相談の概要
編集・発行:東京都国民健康保険団体連合会
(1)苦情件数
全体の苦情件数は2619件で、21年度と比べて9.0%減少。区市町村が2057件、国保連で475件。
≪ 苦情受付件数の年度別推移 ≫
(2)苦情の内容
サービス提供や保険給付に関する苦情が1545件で、全体の8割弱。要介護認定に関するものが251件、保険料に関するものが244件。
≪ 分類項目別苦情件数の推移 ≫
(3)苦情の発生状況
サービス種類別の苦情発生状況を、苦情件数と苦情発生率とで比較すると、苦情件数は「居宅介護支援」が351件(22.7%)、「訪問介護」が305件(19.7%)と多いが、苦情発生率では「居宅介護支援」が1.65件と13番目、「訪問介護」が2.36件で11番目(苦情発生率=苦情件数÷[利用件数÷10,000件])。
苦情内容別では、「サービスの質」345件、「従事者の態度」344件、「管理者等の対応」287件。
苦情内容別では、「サービスの質」345件、「従事者の態度」344件、「管理者等の対応」287件。
≪ サービス種類別の苦情件数(居宅サービス・施設サービス)≫
(4)そのほかの掲載事項
・介護サービス種別の苦情事例、対応ポイント、根拠法令を掲載。「居宅介護支援」「訪問介護」「短期入所サービス」「介護保険施設」等
・「介護サービス内容に不満」等、具体的な苦情事例240件掲載
・21年度に指導助言を行い22年度に改善状況を確認した事例を13事例掲載
・国保連の苦情事例として苦情発生の背景や対応経過をわかりやすく掲載
「居宅介護支援」「訪問介護」「通所介護」「介護保険施設」等14事例
・「介護サービス内容に不満」等、具体的な苦情事例240件掲載
・21年度に指導助言を行い22年度に改善状況を確認した事例を13事例掲載
・国保連の苦情事例として苦情発生の背景や対応経過をわかりやすく掲載
「居宅介護支援」「訪問介護」「通所介護」「介護保険施設」等14事例
苦情相談からみえてくるもの
「苦情白書」では、相談・苦情からみえるサービス提供上の留意点として、次の5つを挙げています。
(1)利用者・家族への説明の不足
サービスが適切に提供されていたとしても、説明が不十分だったために苦情となる例が多く見受けられます。事故や状態が悪化するまで、経過などに関する説明が不足していたために不信感を招き、苦情となる例もあります。
また、事業者としては十分説明を行ったつもりでも、利用者や家族は十分な理解のないままにサービスが提供されたために苦情となる場合もあり、口頭だけでなく、文書による説明を併せて行うなどにより、利用者等の理解と同意について適切に確認していく工夫が必要です。
また、事業者としては十分説明を行ったつもりでも、利用者や家族は十分な理解のないままにサービスが提供されたために苦情となる場合もあり、口頭だけでなく、文書による説明を併せて行うなどにより、利用者等の理解と同意について適切に確認していく工夫が必要です。
(2)利用者の状態把握の不足
利用者の状態を十分に把握していなかったことが原因で、利用者の状態の変化に適切に対応できないケースが見受けられます。利用者の転倒を防止し、状態の悪化などに適切に対応するためには、利用者の状態を日頃から正確に把握し、必要に応じてケアプランを見直していくことが重要です。
(3)情報共有及び連携の不足
職員間で必要な情報の共有化ができていないなど、連携不足を原因とする苦情や事故などが見受けられます。
利用者に安全で適切なサービスを提供するためには、事業所内において職員間の役割や責任を明確にして情報の共有化を図り、日頃から関係機関と密接に連携し、円滑にサービス提供が行えるよう、連携体制を確立しておくことが重要です。
利用者に安全で適切なサービスを提供するためには、事業所内において職員間の役割や責任を明確にして情報の共有化を図り、日頃から関係機関と密接に連携し、円滑にサービス提供が行えるよう、連携体制を確立しておくことが重要です。
(4)記録の不備
記録は、事業者が提供したサービスの具体的な内容や苦情、事故、状態の悪化などへの対応を実証するものであると同時に、利用者の状態を適切に把握するために重要なものです。
また、利用者等からサービス提供状況等の説明を求められたときの説明資料となります。事業者は、必要な情報が的確に記録できるよう整備するとともに、保管を徹底する必要があります。
また、利用者等からサービス提供状況等の説明を求められたときの説明資料となります。事業者は、必要な情報が的確に記録できるよう整備するとともに、保管を徹底する必要があります。
(5)事業者からの契約解除
利用者へのサービス提供の継続が困難になったため、契約を解除した結果、苦情となるケースが見受けられます。
サービス提供の継続が難しい場合は、サービス担当者会議の開催や地域の社会資源を活用するなど、事業者はサービスの継続に向けて最大限の働きかけを行う必要があります。
しかし、正当な理由により、やむを得ず事業者が契約を解除しなければならない場合には、契約書に記載している内容に則って対応することが大切です。その際には、一定の予告期間をもって通知を行うなど適切な手続きをとる必要があるとともに、利用者へのサービス提供が滞らないよう、居宅介護支援事業者等への連絡や適切な他の事業者の紹介など、必要な措置をとることも必要です。
このほか「苦情白書」では、サービス別に留意点を紹介しています。また、東京都国民健康保険団体連合会に寄せられた苦情の具体的内容と、東京と国保連が行った指導・助言によってどのように改善が図られたのかがまとめられています。ぜひ参考にして、提供するサービスの質の向上に取り組んでもらいたいと思います。
利用者や家族から不満や苦情を受けることは、事業者側にとっても気の重いものでしょう。しかし、苦情はサービス改善の契機ととらえ、積極的に活用することが大切だといえます。苦情の内容などを分析し、その発生要因を明らかにして、再発防止策の検討とその着実な実施につなげることが重要です。苦情を通じて事業者が抱える問題点を汲み取り、それに真摯に対応することが、結果としてサービスの質の向上につながります。
また、事業所の管理者は、対応窓口の整備や職員間で情報共有ができる仕組みづくりなど、苦情に対して適切に対応できるよう備えておくことが必要です。
サービス提供の継続が難しい場合は、サービス担当者会議の開催や地域の社会資源を活用するなど、事業者はサービスの継続に向けて最大限の働きかけを行う必要があります。
しかし、正当な理由により、やむを得ず事業者が契約を解除しなければならない場合には、契約書に記載している内容に則って対応することが大切です。その際には、一定の予告期間をもって通知を行うなど適切な手続きをとる必要があるとともに、利用者へのサービス提供が滞らないよう、居宅介護支援事業者等への連絡や適切な他の事業者の紹介など、必要な措置をとることも必要です。
このほか「苦情白書」では、サービス別に留意点を紹介しています。また、東京都国民健康保険団体連合会に寄せられた苦情の具体的内容と、東京と国保連が行った指導・助言によってどのように改善が図られたのかがまとめられています。ぜひ参考にして、提供するサービスの質の向上に取り組んでもらいたいと思います。
利用者や家族から不満や苦情を受けることは、事業者側にとっても気の重いものでしょう。しかし、苦情はサービス改善の契機ととらえ、積極的に活用することが大切だといえます。苦情の内容などを分析し、その発生要因を明らかにして、再発防止策の検討とその着実な実施につなげることが重要です。苦情を通じて事業者が抱える問題点を汲み取り、それに真摯に対応することが、結果としてサービスの質の向上につながります。
また、事業所の管理者は、対応窓口の整備や職員間で情報共有ができる仕組みづくりなど、苦情に対して適切に対応できるよう備えておくことが必要です。