2012(平成24)年12月17日(月)、若年認知症家族会彩星(ほし)の会主催によるフォーラム「若年性認知症を受け入れる地域社会づくり」が、東京都新宿区の戸山サンライズで開催されました。家族会関係者を中心に、専門職や一般市民など約150名が参加しました。
Vol.121 フォーラム「若年性認知症を受け入れる地域社会づくり」開催(2012/12/27)
65歳未満で発症する「若年性認知症」は、失業などの経済的問題や就学期の子どもへの影響、職場や地域の人間関係、日常生活における困難など、高齢期に発症する認知症と異なる深刻な問題が浮かび上がります。
彩星の会では、他の病気と比べても、若年性認知症が社会的な制度の不足や一般市民への浸透度の薄い現状等を踏まえ、“人と人との絆を大切にする地域社会づくり”をテーマとする今回のフォーラムを企画したということです。
彩星の会では、他の病気と比べても、若年性認知症が社会的な制度の不足や一般市民への浸透度の薄い現状等を踏まえ、“人と人との絆を大切にする地域社会づくり”をテーマとする今回のフォーラムを企画したということです。
ぬくもりの絆を創る
フォーラムの【第一部】は、「若年性認知症御本人への支援―ぬくもりの絆を創る―」と題して、認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長・長谷川和夫先生が講演を行いました。
長谷川先生は、認知症ケアの環境として、(1)ゆっくりとした時の流れ、(2)小規模の環境となじみの人、(3)安心できる居場所と役割が大切であると言い、そのための技法として、(1)寄り添う心と絆、(2)聴くことを第一に。待つこと、(3)目を見て話すこと、(4)明るく楽しい気分が重要であると、支援にあたっての心構えを述べました。認知症の方ご本人とご家族の立場に寄り添った内容に、参加者は皆、真剣な表情で耳を傾けていました。
講演の最後、長谷川先生が「100%のパーソンセンタードケアは難しいかもしれない。しかし、お互いがお互いを支え合う地域を創るパワーになっていきましょう」と呼びかけると、会場からは大きな拍手がわき起こりました。
長谷川先生は、認知症ケアの環境として、(1)ゆっくりとした時の流れ、(2)小規模の環境となじみの人、(3)安心できる居場所と役割が大切であると言い、そのための技法として、(1)寄り添う心と絆、(2)聴くことを第一に。待つこと、(3)目を見て話すこと、(4)明るく楽しい気分が重要であると、支援にあたっての心構えを述べました。認知症の方ご本人とご家族の立場に寄り添った内容に、参加者は皆、真剣な表情で耳を傾けていました。
講演の最後、長谷川先生が「100%のパーソンセンタードケアは難しいかもしれない。しかし、お互いがお互いを支え合う地域を創るパワーになっていきましょう」と呼びかけると、会場からは大きな拍手がわき起こりました。
本人・家族の思いを知るということ
【第二部】のシンポジウム「本人と家族の思い 専門家の知恵」では、彩星の会会員のご本人2名・ご家族3名が、コメンテーターの服部安子さん、コーディネーターの田中悠美子さんとともに登壇され、各々が経験した出来事や知ってほしい思い、介護経験や認知症とどう向き合ってきたのかをご自身の言葉で述べられました。
――シンポジウムに先駆けて、彩星の会が実施した「介護者が困ったこと及び地域市民への要望」のアンケート調査結果が、副代表・今岡善次郎さんから報告されました。
介護者が困ったこととして病気別・男女別・時期別の統計などが示され、特に男性介護者と女性介護者で困難に感じる内容が全く異なるなど、介護者の属性によっても介護状況が異なる実情が映し出されていました。
また地域社会への要望としては、若年専門の介護施設、若年性認知症への行政施策、コミュニティカフェといった、当事者にフィットしたケアの場・憩いの場を求める声が多く挙がっており、裏を返せば、それらがまだまだ不足している現状にあるということでした。
シンポジウムでは、昨年、『ぼくが前を向いて歩く理由(わけ)―事件、ピック病を超えて、いまを生きる―』を上梓されたピック病を抱える中村成信さんも登壇。「“上から目線の支援”や“過剰なサポート”は、かえってありがた迷惑です。自尊心を傷つけないようにサポートしてもらいたい」と訴えました。
また、アルツハイマー病の夫を介護する妻の立場として、山本由希子さん(仮名)は娘との関係を吐露されました。違和感を感じてから確定診断を受けるまでに約10年を要し、些細なことで感情的になる夫との喧嘩が絶えず、当時、幼かった娘には迷惑ばかり掛けてきたと述べました。また弱い姿を見せないよう努めてきたが、あるとき、娘さんからもらった手紙を見て、“娘はすべてわかっていたのだ”と愕然としたといいます。
――シンポジウムに先駆けて、彩星の会が実施した「介護者が困ったこと及び地域市民への要望」のアンケート調査結果が、副代表・今岡善次郎さんから報告されました。
介護者が困ったこととして病気別・男女別・時期別の統計などが示され、特に男性介護者と女性介護者で困難に感じる内容が全く異なるなど、介護者の属性によっても介護状況が異なる実情が映し出されていました。
また地域社会への要望としては、若年専門の介護施設、若年性認知症への行政施策、コミュニティカフェといった、当事者にフィットしたケアの場・憩いの場を求める声が多く挙がっており、裏を返せば、それらがまだまだ不足している現状にあるということでした。
シンポジウムでは、昨年、『ぼくが前を向いて歩く理由(わけ)―事件、ピック病を超えて、いまを生きる―』を上梓されたピック病を抱える中村成信さんも登壇。「“上から目線の支援”や“過剰なサポート”は、かえってありがた迷惑です。自尊心を傷つけないようにサポートしてもらいたい」と訴えました。
また、アルツハイマー病の夫を介護する妻の立場として、山本由希子さん(仮名)は娘との関係を吐露されました。違和感を感じてから確定診断を受けるまでに約10年を要し、些細なことで感情的になる夫との喧嘩が絶えず、当時、幼かった娘には迷惑ばかり掛けてきたと述べました。また弱い姿を見せないよう努めてきたが、あるとき、娘さんからもらった手紙を見て、“娘はすべてわかっていたのだ”と愕然としたといいます。
☆
【山本さんが娘さんから渡された手紙(部分抜粋)】「my mother ●●(娘の名前)はいつもそばにいるよ。一人で抱え込まないで。こころのなかで一人で泣かないで。」
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山本さんは、現在も近隣に夫の病気のことを伝えられないまま生活を送っているそうです。高校生になった娘が、同級生たちに“あの娘のお父さん、認知症なんだって”と後ろ指を指されることが怖いからだといいます。
「堂々と病気のことを伝えられるような社会になってほしい」切々と訴える山本さんの言葉に、すすり泣きも聞こえる会場は重い現実を受け止めているかのように深い静寂に包まれました。
シンポジウムの最後には、長谷川和夫先生がご本人・ご家族に対して、「自分が無知であったことを恥ずかしく思っております」と述べ、「かかりつけ医に、『パーソンセンタードケアに基づいた医療をやってください』と伝えていきたい」と今後の展望を述べると、会場からは惜しみない拍手が送られました。
そして、彩星の会が奇数月に開催する定例会でも恒例となっている『上を向いて歩こう』の大合唱で、同フォーラムは締めくくられました。