昨年の夏、新宿区で「暮らしの保健室」がオープンしました。その名のとおり、“地域に開かれた保健室”という新たな試みのなかで、厚生労働省が実施する“在宅医療連携拠点事業”のモデル事業も23年度から行ってきました。
同事業は、療養者が住み慣れた地域で過ごすための施策の一つとして、平成23年度から始まりました。23年度に10カ所で行われていた事業は、24年度は全国で105カ所で実施されます。
5月29日に行われた「第10回暮らしの保健室勉強会」では、日本赤十字看護大学地域看護学の研究チームが公営住宅の住民に行ったアンケート調査結果から、「暮らしの保健室」が、住民にどのように映り、どのように活用されているのかについて、これまでの活動を振り返りつつ、地域での「健康相談」の意義と今後が展望されました。
同事業は、療養者が住み慣れた地域で過ごすための施策の一つとして、平成23年度から始まりました。23年度に10カ所で行われていた事業は、24年度は全国で105カ所で実施されます。
5月29日に行われた「第10回暮らしの保健室勉強会」では、日本赤十字看護大学地域看護学の研究チームが公営住宅の住民に行ったアンケート調査結果から、「暮らしの保健室」が、住民にどのように映り、どのように活用されているのかについて、これまでの活動を振り返りつつ、地域での「健康相談」の意義と今後が展望されました。
Vol.118 新宿区戸山ハイツに開設された「暮らしの保健室」〜その実践と効果〜
高齢化が進む地区で開かれた健康相談の場
秋山正子さんが代表取締役を務める株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーションでは、新宿区にある都営住宅の1階空き店舗を利用し、「暮らしの保健室」を開設しました。
ここは、23年度から厚生労働省のモデル事業にも採択されており、事業は24年度も継続されています。
「暮らしの保健室」がある新宿区戸山2丁目は、高齢化率45%超。そしてひとり暮らしが多い地区です。都心に位置し、周辺には急性期病院も複数ありますが、それゆえに病院と診療所の連携体制など、医療連携については課題も多いといいます。
ここは、23年度から厚生労働省のモデル事業にも採択されており、事業は24年度も継続されています。
「暮らしの保健室」がある新宿区戸山2丁目は、高齢化率45%超。そしてひとり暮らしが多い地区です。都心に位置し、周辺には急性期病院も複数ありますが、それゆえに病院と診療所の連携体制など、医療連携については課題も多いといいます。
秋山さんがイメージしたのは、イギリスのマギーズ・キャンサー・ケアリング・センター(マギーズ・センター)。マギーズ・センターは、がん患者とその家族、友人、介護者に向けたさまざまなプログラムを提供したり、専門スタッフが治療法の選択から心のつらさや不安、経済的な問題など、いろいろな相談に応じるものです。
「暮らしの保健室」でも、看護師やボランティアスタッフが話を聴いたり相談を受けます。訪問看護で培ったノウハウと地域のつながりが、ここで大きく活かされたようです。
「暮らしの保健室」でも、看護師やボランティアスタッフが話を聴いたり相談を受けます。訪問看護で培ったノウハウと地域のつながりが、ここで大きく活かされたようです。
アンケートの調査から見える住民の反応と効果
「暮らしの保健室」では、連携拠点の活動の一環として、寄せられた相談などを元に、地域の関係職種が生の声で月1回程度のペースで検討を重ねていく勉強会を開催しています。今回の勉強会では、日本赤十字看護大学地域看護学の研究チームの行った公営住宅住民へのアンケート結果をもとに、「暮らしの保健室」の役割や効果をエビデンスをもって分析していくことなども目的に、今後に向けての課題や展望などが話されました。
調査の方法は、公営住宅の2000世帯のうち、世帯で最も高齢の方を対象にしたポスティング・無記名調査で、534名の回答がありました。
その回答を分析した結果として、まず、「ADLが自立していない」「家族関係にストレスがある」「健康についての相談者が必ずしも医師でなくてもよい」などに当てはまる人ほど、「暮らしの保健室」の利用ニーズが高い傾向がみられることが、福井小紀子教授から報告されました。
一方で、利用ニーズがあっても、「初めての場所は行きにくい」「1対1で相談できるなら利用したい」「土日夜間に開いていれば利用したい」と考える人も多く、それらのハードルを取り除いて、ニーズをもった人をいかに「暮らしの保健室」へとつないでいくかといった課題も浮かびました。
また、「暮らしの保健室」の存在を知っている人は、利用ニーズが高い人で45%、低い人で36%と、存在を知る人のほうが利用ニーズが高いこともわかりました。
その後は、研究チームの乙黒千鶴さんより、高齢化が進んだ団地住民の健康感とその要因の関連を考える発表がありました。「自分は元気だ」と思う、健康感(主観的健康感)は、その後の健康寿命に大きく影響しているそうです。
分析の結果からは、収入200万円以上で仕事をもつ人が健康感が高いこと、自立していて現在の生活に満足している人の健康感が高いことなどが示されました。また、かかりつけ医をもたない人が健康感が高かったり、医師に遠慮せずに質問ができる人などの健康感が高いことなど、今後の研究や分析につながる興味深い結果も示されました。
最後の石川孝子さんからの報告では、実際に「暮らしの保健室」を訪れた人に対する調査結果も入りました。実際に健康相談の場を利用している人のほうが相談ニーズが高いため、住民のニーズを的確にとらえることで利用者の拡大が見込めること、相談の結果、飲む薬の種類が減少している人がいることなどが示されました。また、1回でも健康相談を利用することが、利用効果を感じるために重要との結論がありました。
その回答を分析した結果として、まず、「ADLが自立していない」「家族関係にストレスがある」「健康についての相談者が必ずしも医師でなくてもよい」などに当てはまる人ほど、「暮らしの保健室」の利用ニーズが高い傾向がみられることが、福井小紀子教授から報告されました。
一方で、利用ニーズがあっても、「初めての場所は行きにくい」「1対1で相談できるなら利用したい」「土日夜間に開いていれば利用したい」と考える人も多く、それらのハードルを取り除いて、ニーズをもった人をいかに「暮らしの保健室」へとつないでいくかといった課題も浮かびました。
また、「暮らしの保健室」の存在を知っている人は、利用ニーズが高い人で45%、低い人で36%と、存在を知る人のほうが利用ニーズが高いこともわかりました。
その後は、研究チームの乙黒千鶴さんより、高齢化が進んだ団地住民の健康感とその要因の関連を考える発表がありました。「自分は元気だ」と思う、健康感(主観的健康感)は、その後の健康寿命に大きく影響しているそうです。
分析の結果からは、収入200万円以上で仕事をもつ人が健康感が高いこと、自立していて現在の生活に満足している人の健康感が高いことなどが示されました。また、かかりつけ医をもたない人が健康感が高かったり、医師に遠慮せずに質問ができる人などの健康感が高いことなど、今後の研究や分析につながる興味深い結果も示されました。
最後の石川孝子さんからの報告では、実際に「暮らしの保健室」を訪れた人に対する調査結果も入りました。実際に健康相談の場を利用している人のほうが相談ニーズが高いため、住民のニーズを的確にとらえることで利用者の拡大が見込めること、相談の結果、飲む薬の種類が減少している人がいることなどが示されました。また、1回でも健康相談を利用することが、利用効果を感じるために重要との結論がありました。
身近な相談場所が「地域で暮らす」を支える
発表後は会場の参加者との意見交流が行われ、さまざまな職種から、これまでの「暮らしの保健室」の活動の振り返りや分析結果への意見などが活発にかわされました。
そのなかでも、ワンストップの窓口となることを期待された地域包括支援センターにもなかなか住民がたどりつけない現状と、複雑な都心の環境のなかで、身近な相談場所がたくさんできることが、「地域で暮らす」ことを後押しするのではないかという期待は、共有されたようでした。
「暮らしの保健室」では、今年の4月からは新宿区の委託を受け、毎月第4土曜日にはがん相談も受け付けているそうです。地域での新たな健康相談の場がこれからどのように発展していくのか、期待が膨らみます。
「暮らしの保健室」では、今年の4月からは新宿区の委託を受け、毎月第4土曜日にはがん相談も受け付けているそうです。地域での新たな健康相談の場がこれからどのように発展していくのか、期待が膨らみます。