9月24・25日、第12回日本認知症ケア学会が神奈川・横浜のパシフィコ横浜で開催されました。
大会のメインテーマは「認知症の人の生活の質を高める」。演題では地域包括ケアシステムや認知症の新薬の解説など、生活の質を高めるための新しい制度や治療を扱う物が多く取り上げられていました。
大会のメインテーマは「認知症の人の生活の質を高める」。演題では地域包括ケアシステムや認知症の新薬の解説など、生活の質を高めるための新しい制度や治療を扱う物が多く取り上げられていました。
Vol.104 新制度や新薬に期待
第12回日本認知症ケア学会開催
日本認知症ケア学会とは
日本認知症ケア学会は介護保険実施と同年の2000年に誕生した学会で、現在の会員数は約2万人という国内最大の認知症関連の学会です。また、認知症ケア専門士の認定機関であり、認知症ケアの学術研究と人材育成に取り組んでいます。
認知症に人の生活の質を高めるために
12回を迎えた今大会は、2日間にわたり、「認知症の人の生活の質を高める」を大会テーマに数多くの演題が話し合われました。今年は特に、新たなアルツハイマー型認知症の治療薬と、地域包括ケアシステムに関する講演が取り上げられていました。
大会長の時田純氏(社会福祉法人小田原福祉会)の講演では、今年は認知症の医療・介護サービスに画期的な前進が期待できる年になったとし、その大きな柱として、第1に介護保険法の一部改正により、認知症対策が国および地方公共団体の責務として法律に明文化されたこと、第2に同法律の改正により来年4月から実施される「24時間定期巡回訪問介護看護」をはじめとした地域包括ケアの構築が政策目標になったこと、そして第3に新薬の開発により認知症治療が充実されることをあげました。
こうした動きは在宅介護の限界点を引き上げることになり、結果として介護家族の負担の大幅軽減により、認知症の人とご家族の生活の質が高まると期待をよせました。
大会長の時田純氏(社会福祉法人小田原福祉会)の講演では、今年は認知症の医療・介護サービスに画期的な前進が期待できる年になったとし、その大きな柱として、第1に介護保険法の一部改正により、認知症対策が国および地方公共団体の責務として法律に明文化されたこと、第2に同法律の改正により来年4月から実施される「24時間定期巡回訪問介護看護」をはじめとした地域包括ケアの構築が政策目標になったこと、そして第3に新薬の開発により認知症治療が充実されることをあげました。
こうした動きは在宅介護の限界点を引き上げることになり、結果として介護家族の負担の大幅軽減により、認知症の人とご家族の生活の質が高まると期待をよせました。
新薬への期待
特別記念講演II及びIIIでは、新しい3つのアルツハイマー型認知症治療薬について、繁田雅弘氏(首都大学東京)と中村祐氏(香川大学)が解説しました。
この10年間、日本ではアルツハイマー型認知症の治療薬はドネペジル塩酸塩(商品名アリセプト)の1種類だけでしたが、今年になって、メマンチン(同メマリー)、ガランタミン(同レミニール)、リバスチグミン(同イクセロン・パッチ、リバスタッチ・パッチ)が発売されました。
ガランタミンとリバスチグミンはアリセプトとほぼ同じメカニズムの薬ですが、同成分の薬でも種類を変えて使うことは有効であり、とくにリバスチグミンは張り薬のため、服薬管理がしやすいことや嚥下障害などで薬を飲むことが困難な患者さんに有効であると注目されています。一方、メマンチンは脳内のNMDA受容体の異常な活性化を抑える薬で、他の薬と併用することで高い効果が期待できるという特徴があります。
薬を飲むことで進行が遅くなることは、認知症の辛い期間を長くするだけではないかという意見もありますが、繁田氏は「今日一日をおだやかに、家族も安心して暮らせることことにつながる」と述べ、それが家族や本人の生活の質の向上につながっているとしました。
この10年間、日本ではアルツハイマー型認知症の治療薬はドネペジル塩酸塩(商品名アリセプト)の1種類だけでしたが、今年になって、メマンチン(同メマリー)、ガランタミン(同レミニール)、リバスチグミン(同イクセロン・パッチ、リバスタッチ・パッチ)が発売されました。
ガランタミンとリバスチグミンはアリセプトとほぼ同じメカニズムの薬ですが、同成分の薬でも種類を変えて使うことは有効であり、とくにリバスチグミンは張り薬のため、服薬管理がしやすいことや嚥下障害などで薬を飲むことが困難な患者さんに有効であると注目されています。一方、メマンチンは脳内のNMDA受容体の異常な活性化を抑える薬で、他の薬と併用することで高い効果が期待できるという特徴があります。
薬を飲むことで進行が遅くなることは、認知症の辛い期間を長くするだけではないかという意見もありますが、繁田氏は「今日一日をおだやかに、家族も安心して暮らせることことにつながる」と述べ、それが家族や本人の生活の質の向上につながっているとしました。
東日本大震災被災状況等特別講演
大会2日目のシンポジウムHでは、東日本大震災で被災したグループホームや特別養護老人ホーム等の職員が、被災当日から1週間後頃までの壮絶な状況を報告しました。
迫りくる津波を目前に車を走らせてお年寄りとともに避難した方、福島第一原発から30キロ圏内で物資も届かなくなったなか最後までお年寄りに付き添った方。「さっきまで生きていた利用者さんが、泥まみれになっているのをどうしようもできなかった……」「こういう状況で逃げ出す職員を誰が責めることができるでしょうか……」。こうした新聞等では伝えられない生の声、緊迫した報告の数々に、会場は息をのむとともに涙で包まれました。
このシンポジウムは悲惨な状況を伝えることが目的ではなく、真実を知ることで、そこから学ぶことを目的にしています。最後までお年寄りを守った職員たちに温かい拍手がおくられるとともに、被災された方々のご冥福を心からお祈りいたしました。
次回の第13回大会は、2012年5月19日(土)、20日(日)、静岡県浜松市(アクトシティ浜松)にて開催される予定です。地域包括ケアシステムの円滑な施行とともに、認知症の人の生活の質が高められている報告に期待します。
迫りくる津波を目前に車を走らせてお年寄りとともに避難した方、福島第一原発から30キロ圏内で物資も届かなくなったなか最後までお年寄りに付き添った方。「さっきまで生きていた利用者さんが、泥まみれになっているのをどうしようもできなかった……」「こういう状況で逃げ出す職員を誰が責めることができるでしょうか……」。こうした新聞等では伝えられない生の声、緊迫した報告の数々に、会場は息をのむとともに涙で包まれました。
このシンポジウムは悲惨な状況を伝えることが目的ではなく、真実を知ることで、そこから学ぶことを目的にしています。最後までお年寄りを守った職員たちに温かい拍手がおくられるとともに、被災された方々のご冥福を心からお祈りいたしました。
次回の第13回大会は、2012年5月19日(土)、20日(日)、静岡県浜松市(アクトシティ浜松)にて開催される予定です。地域包括ケアシステムの円滑な施行とともに、認知症の人の生活の質が高められている報告に期待します。