去る3月13、14日、兵庫・神戸の神戸学院大学にて、「第9回気づきを築くユニットケア全国実践者セミナー」が開催されました。
現場の実践者による140におよぶ実践報告は、ユニットケアの明日を感じさせるものでした。今回は本セミナーの様子をお伝えします。
現場の実践者による140におよぶ実践報告は、ユニットケアの明日を感じさせるものでした。今回は本セミナーの様子をお伝えします。
Vol.75 第9回気づきを築くユニットケア全国実践者セミナーが開催
重度化への対応の報告が増加
報告を眺めてみると、利用者の重度化に伴い、ターミナルケアに関する発表や内容が増えた感があります。参加者からも「ターミナルケアの発表を聞いていると涙が出てくる」といった感想が聞かれ、職員の思いの深さもうかがえます。
暮らしの延長線に「死」(ターミナル)はありますが、その流れを面で支援することは困難を極めます。これは、ターミナルになると医療が色濃く出てしまうことに起因しますが、医療が必要となっても暮らしを継続するためにはどうすればよいのか? そこに訴えかけるかかわりが必要とされています。
暮らしの延長線に「死」(ターミナル)はありますが、その流れを面で支援することは困難を極めます。これは、ターミナルになると医療が色濃く出てしまうことに起因しますが、医療が必要となっても暮らしを継続するためにはどうすればよいのか? そこに訴えかけるかかわりが必要とされています。
ターミナルでも暮らしを継続するために
ここでは、2日目の現場実践支援講座「利用者の重度化を支える、介護と医療の連携」の様子をお伝えします。西香川病院(香川県)といずみの園(大分県)、はなのいえ(兵庫県)の実践から、重度化する利用者に向けた連携を考えました。西香川病院の実践では、「看護士と介護職の合同研修」から両職種の壁が取り除かれ、情報の伝達がスムーズになり、利用者のニーズが見えてくるという好循環のサイクルが紹介されました。
いずみの園の実践では、ある利用者に対するかかわりを例に、逆デイへの参加、学習療法、クリニックの受診を通して、多職種の連携の必要性が説かれました。
はなのいえは兵庫県初の共生ホームとして、在宅で高齢者、障害者をいかに最期まで支えるのか、フォーマル・インフォーマルのサービスを使いながら連携を考えました。
ターミナルは選択肢の一つであり、その前提となる重度化においては、マンパワーや暮らしの継続、連携を整えなければなりません。連携を問うのであれば、マンパワーと暮らしの継続についても同様に大切となります。
2日目にはまた、「Q&Aセッション 施設に暮らしを〜その人らしく暮らすことを支えるために〜」が開催されました。主催者の武田和則さん、西ノ京苑(奈良県)の松尾智志さん、CLCの二瓶貴子さん、虹ヶ丘(京都府)の上野千鶴さんが登壇しました。
実践者セミナーは、全国セミナーに続いて開始されました。全国セミナーは社会への問いかけの意味を含んでいますが、実践者セミナーは現場の職員を応援するセミナーです。ですから「優劣はない」(武田さん)のです。「現場の実践の後押しだからこそ、「こんな話をしてもいいのかな」と感じている職員がいれば、そういった話こそしてほしいです」。
Q&Aセッションということで、参加者から寄せられた質問に登壇者が答えるかたちですすめられました。「職員は利用者と一緒に食事をしたほうがいいのか?」という問いには「一緒に食べることで、その人にあった食事形態がわかります。栄養士や調理員も一緒に食べることで、自分たちの食事をどのように食べているのかもわかります。それが次の献立につながります」(二瓶さん)。
「一緒に食べる理由があれば食べたほうがいいでしょうね。しかし、一緒に食べて何を感じるかが大切です」(松尾さん)。「一緒に食べなければならないという固定観念があり、またスタート当時はバタバタしていて休憩時間もとれないなか、職員から苦情が出ました。ですから現在は別にしています」(上野さん)。
ちなみに、会場内で食事を一緒にしている参加者は半数程度。「人は絶望から入所している。その絶望を希望に変えていくなかで、食事を一緒に楽しむことは大切です。大切なのは、楽しいことを一緒にすること。食事が難しいのであれば、お茶を一緒に飲むことから始めてみましょう」(武田さん)。
さらに「意思表示できない利用者のその人らしさとは?」という問いについては、「重度化したから考えるのではなく、それまでどのように暮らしてきたかが大切です。加えて、まったく意思疎通できないということはないのではないでしょうか」(松尾さん)。「いつもそばにいることで、小さな変化に気づくことができます。だからこそ小さな集団で職員を固定するユニットケアが活きるのです」(武田さん)。
加えて登壇者が、施設でよく出る質問を各自挙げました。上野さんからは「毎日しなければならないことが多く、かかわる時間がとれない」という質問です。「べったりかかわるのではなく、そのときどきの介助時にしっかりかかわればよいのではないでしょうか」。「時間をどのように作り出すかが大切です」(二瓶さん)。武田さんは雑誌への寄稿原稿を紹介しながら「今までの業務といわれるものを、生活支援にしているかどうかです。業務に利用者を合わせるのではありません」と投げかけました。
実践者セミナーは毎回多くの参加者が入れ替わるので、こういった基礎的な確認は大切です。土台となる理念が揺らいでいては、実践もあらぬ方向に行ってしまうのです。
なお次回は、2011年3月12日、13日、同じく神戸学院大学にて行われる予定です。第10回記念大会として、発表のみならず、自由に意見交換ができるサロン的な場を設けるとのことです。
はなのいえは兵庫県初の共生ホームとして、在宅で高齢者、障害者をいかに最期まで支えるのか、フォーマル・インフォーマルのサービスを使いながら連携を考えました。
ターミナルは選択肢の一つであり、その前提となる重度化においては、マンパワーや暮らしの継続、連携を整えなければなりません。連携を問うのであれば、マンパワーと暮らしの継続についても同様に大切となります。
2日目にはまた、「Q&Aセッション 施設に暮らしを〜その人らしく暮らすことを支えるために〜」が開催されました。主催者の武田和則さん、西ノ京苑(奈良県)の松尾智志さん、CLCの二瓶貴子さん、虹ヶ丘(京都府)の上野千鶴さんが登壇しました。
実践者セミナーは、全国セミナーに続いて開始されました。全国セミナーは社会への問いかけの意味を含んでいますが、実践者セミナーは現場の職員を応援するセミナーです。ですから「優劣はない」(武田さん)のです。「現場の実践の後押しだからこそ、「こんな話をしてもいいのかな」と感じている職員がいれば、そういった話こそしてほしいです」。
Q&Aセッションということで、参加者から寄せられた質問に登壇者が答えるかたちですすめられました。「職員は利用者と一緒に食事をしたほうがいいのか?」という問いには「一緒に食べることで、その人にあった食事形態がわかります。栄養士や調理員も一緒に食べることで、自分たちの食事をどのように食べているのかもわかります。それが次の献立につながります」(二瓶さん)。
「一緒に食べる理由があれば食べたほうがいいでしょうね。しかし、一緒に食べて何を感じるかが大切です」(松尾さん)。「一緒に食べなければならないという固定観念があり、またスタート当時はバタバタしていて休憩時間もとれないなか、職員から苦情が出ました。ですから現在は別にしています」(上野さん)。
ちなみに、会場内で食事を一緒にしている参加者は半数程度。「人は絶望から入所している。その絶望を希望に変えていくなかで、食事を一緒に楽しむことは大切です。大切なのは、楽しいことを一緒にすること。食事が難しいのであれば、お茶を一緒に飲むことから始めてみましょう」(武田さん)。
さらに「意思表示できない利用者のその人らしさとは?」という問いについては、「重度化したから考えるのではなく、それまでどのように暮らしてきたかが大切です。加えて、まったく意思疎通できないということはないのではないでしょうか」(松尾さん)。「いつもそばにいることで、小さな変化に気づくことができます。だからこそ小さな集団で職員を固定するユニットケアが活きるのです」(武田さん)。
加えて登壇者が、施設でよく出る質問を各自挙げました。上野さんからは「毎日しなければならないことが多く、かかわる時間がとれない」という質問です。「べったりかかわるのではなく、そのときどきの介助時にしっかりかかわればよいのではないでしょうか」。「時間をどのように作り出すかが大切です」(二瓶さん)。武田さんは雑誌への寄稿原稿を紹介しながら「今までの業務といわれるものを、生活支援にしているかどうかです。業務に利用者を合わせるのではありません」と投げかけました。
実践者セミナーは毎回多くの参加者が入れ替わるので、こういった基礎的な確認は大切です。土台となる理念が揺らいでいては、実践もあらぬ方向に行ってしまうのです。
なお次回は、2011年3月12日、13日、同じく神戸学院大学にて行われる予定です。第10回記念大会として、発表のみならず、自由に意見交換ができるサロン的な場を設けるとのことです。