去る1月30日、31日の2日間、東京・中野サンプラザにおいて、社団法人日本社会福祉士会主催による「2009年度リーガル・ソーシャルワーク現任研修」が行われました。3月6、7日には大阪での開催も予定されています。
同研修は、日本社会福祉士会が行っている生涯研修制度のうち、「共通研修」として位置づけられているものです。司法領域で社会福祉士が求められるようになっている今、注目される研修となっています。
今回のキャッチ・アップでは、同研修会の模様をお伝えします。
同研修は、日本社会福祉士会が行っている生涯研修制度のうち、「共通研修」として位置づけられているものです。司法領域で社会福祉士が求められるようになっている今、注目される研修となっています。
今回のキャッチ・アップでは、同研修会の模様をお伝えします。
Vol.72 リーガル・ソーシャルワーク現任研修
2009年度リーガル・ソーシャルワーク現任研修
この研修は、少年院や更生保護施設、地域生活定着支援センター等に社会福祉士が配置されるようになり、司法領域において社会福祉士が求められるようになってきた状況を踏まえて、今まで司法領域で働く経験がなかった社会福祉士、単独での職場配置になることが多い社会福祉士が、少しでも円滑にソーシャルワーク機能を発揮できるようにという目的のもと開催されました。
社会福祉士が必要とされる背景と現状
1日目は、まず行政報告が行われ、制度の体系や運用状況について報告がありました。
最初に登壇したのは、法務省矯正局成人矯正課の前澤幸喜さん。前澤さんは、受刑者の中に相当数の高齢者や障害者がいる現状を述べ、社会福祉士を刑務所等に配置した背景について、再犯防止、社会復帰の観点から述べました。
次に登壇したのは、厚生労働省社会・援護局総務課の宇井総一郎さん。宇井さんは、新設された「地域生活定着支援センター」で社会福祉士が行う業務内容、そして、出所者、特に満期出所者には円滑に福祉サービスへつなぐ仕組みがないために再犯リスクが高まること等を述べました。2010年1月現在、地域生活定着支援センター事業を行っている県が10か所(山口、静岡、滋賀、長崎、和歌山、佐賀、岩手、山形、栃木、岐阜)あるということでした。
3人目は、法務省保護局更生保護振興課の池田怜司さん。仮釈放となった人のうち、身寄りがない、生活環境が整っていないなどの理由により、すぐに自立することが難しい人の帰住先となるのが更生保護施設。その更生保護施設について、映像を流して現状や課題を述べるとともに、高齢または障害により特に自立が困難な矯正施設出所者等を保護する「指定更生保護施設」における職員の役割について述べました。
最初に登壇したのは、法務省矯正局成人矯正課の前澤幸喜さん。前澤さんは、受刑者の中に相当数の高齢者や障害者がいる現状を述べ、社会福祉士を刑務所等に配置した背景について、再犯防止、社会復帰の観点から述べました。
次に登壇したのは、厚生労働省社会・援護局総務課の宇井総一郎さん。宇井さんは、新設された「地域生活定着支援センター」で社会福祉士が行う業務内容、そして、出所者、特に満期出所者には円滑に福祉サービスへつなぐ仕組みがないために再犯リスクが高まること等を述べました。2010年1月現在、地域生活定着支援センター事業を行っている県が10か所(山口、静岡、滋賀、長崎、和歌山、佐賀、岩手、山形、栃木、岐阜)あるということでした。
3人目は、法務省保護局更生保護振興課の池田怜司さん。仮釈放となった人のうち、身寄りがない、生活環境が整っていないなどの理由により、すぐに自立することが難しい人の帰住先となるのが更生保護施設。その更生保護施設について、映像を流して現状や課題を述べるとともに、高齢または障害により特に自立が困難な矯正施設出所者等を保護する「指定更生保護施設」における職員の役割について述べました。
社会福祉士が働くための理解
1日目の午後は、3つの講義が行われました。小長井法律事務所の千木良正弁護士による「犯罪の理解」、大津保護観察所の統括保護観察官である三浦(正木)恵子さんによる「司法に関する知識」立命館大学教授の野田正人さんによる「ソーシャルワークの視点」という講義でした。
千木良さんは、国民が治安に抱いているイメージを「体感治安」という言葉を使って説明しました。厳罰化が進んでいる現状とあわせて、正確に犯罪を捉える必要性を述べ、犯罪の原因や高齢者・障害者等の犯罪の特徴に言及していました。
三浦(正木)さんは、数少ない、社会福祉士の資格を有する保護観察官です。「保護観察」を、「国の決定で始まり、期間の制限がある中でのソーシャルワーク」とおっしゃっており、「生活環境の調整」ということを非常に意識していることがうかがえました。更生保護の分野で社会福祉士が果たすべき役割を述べるとともに、会場と意見交換をしながら演習形式で講義を進めていました。様々な現場で働く受講生の課題も浮き上がる内容でした。
野田さんは、IFSWのソーシャルワークの定義を用いながら、更生保護分野におけるソーシャルワーク視点について確認をしました。自身の活動のことも織り交ぜながらの講義となりました。
1日目は内容も充実しており、講義終了時には18時を回っていました。その後、受講生は情報交換会へと移っていきましたが、情報交換会では時間が足りず、ナイトミーティングでも、多くの方が実践や課題について意見を交わしていたようです。
千木良さんは、国民が治安に抱いているイメージを「体感治安」という言葉を使って説明しました。厳罰化が進んでいる現状とあわせて、正確に犯罪を捉える必要性を述べ、犯罪の原因や高齢者・障害者等の犯罪の特徴に言及していました。
三浦(正木)さんは、数少ない、社会福祉士の資格を有する保護観察官です。「保護観察」を、「国の決定で始まり、期間の制限がある中でのソーシャルワーク」とおっしゃっており、「生活環境の調整」ということを非常に意識していることがうかがえました。更生保護の分野で社会福祉士が果たすべき役割を述べるとともに、会場と意見交換をしながら演習形式で講義を進めていました。様々な現場で働く受講生の課題も浮き上がる内容でした。
野田さんは、IFSWのソーシャルワークの定義を用いながら、更生保護分野におけるソーシャルワーク視点について確認をしました。自身の活動のことも織り交ぜながらの講義となりました。
1日目は内容も充実しており、講義終了時には18時を回っていました。その後、受講生は情報交換会へと移っていきましたが、情報交換会では時間が足りず、ナイトミーティングでも、多くの方が実践や課題について意見を交わしていたようです。
社会福祉士の実践とは?
2日目は、午前、午後ともに、一羊会相談支援センター「であい」の所長である原田和明さんによる「支援の実際」という講義・演習が行われました。
午前は、まず講義から始まりました。原田さんは、犯罪の入り口から社会復帰の部分までの支援を行ってきた経験から、更生保護分野で働く社会福祉士がどのような法制度の知識を持っておく必要があるのかを具体的に示し、地域生活定着支援センターの支援の対象とならない出所者の場合でも、社会福祉士としてどう支援していくことができるのかということにまで触れて講義していました。
昼前からは、用意された演習課題をもとに、6名ずつのグループに分かれ討議が行われました。どのように連携するかということが主題となっており、異なる視点から様々な意見が飛び交いました。
同じ司法領域に関わる社会福祉士とはいえ、働く場の違う者同士が議論する機会もこれまで少なく、この演習は実践につながるよい機会となりました。
今回の研修には、遠方からの参加者も多数みられ、期待が高かったことがうかがえます。研修全体として、参加した受講生にとっては、制度体系を再確認し、実践の課題を整理する場、意見交換をする場となったとともに、実践における横のつながりをつくる場となったようです。
専門職としての資質向上のために、職能団体による研修の利用も考えてみてはいかがでしょうか?
午前は、まず講義から始まりました。原田さんは、犯罪の入り口から社会復帰の部分までの支援を行ってきた経験から、更生保護分野で働く社会福祉士がどのような法制度の知識を持っておく必要があるのかを具体的に示し、地域生活定着支援センターの支援の対象とならない出所者の場合でも、社会福祉士としてどう支援していくことができるのかということにまで触れて講義していました。
昼前からは、用意された演習課題をもとに、6名ずつのグループに分かれ討議が行われました。どのように連携するかということが主題となっており、異なる視点から様々な意見が飛び交いました。
同じ司法領域に関わる社会福祉士とはいえ、働く場の違う者同士が議論する機会もこれまで少なく、この演習は実践につながるよい機会となりました。
今回の研修には、遠方からの参加者も多数みられ、期待が高かったことがうかがえます。研修全体として、参加した受講生にとっては、制度体系を再確認し、実践の課題を整理する場、意見交換をする場となったとともに、実践における横のつながりをつくる場となったようです。
専門職としての資質向上のために、職能団体による研修の利用も考えてみてはいかがでしょうか?
- 追伸
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地域において刑余者を継続的に支援していくにはどのようなネットワークが必要なのか、どのように構築していけばよいのかを考えるシンポジウムが、日本社会福祉士会主催で3月13日に行われます。興味のある方は、下記要項をご確認ください。
講演&シンポジウム「要支援刑余者への支援とソーシャルワーク