5月19日・20日、第13回日本認知症ケア学会が、静岡県浜松市のアクトシティ浜松で開催されました。これまで秋に開催されてきた同学会ですが、初めての春開催となった今回も、約3500名が参加する盛況な大会となりました。
Vol.117 第13回日本認知症ケア学会開催
「認知症ケアの理念を実践へ」
他分野にまたがる認知症ケアの実践・研究
認知症の人のケアには、医学、看護学、心理学、福祉学、介護福祉学、社会学、建築学など、あらゆる分野のケアの技術が必要とされます。その基本的な考えのもと、学際的に研究を進め、認知症の人とその介護者の生活の質を高め、豊かな高齢社会創造の助けとなることを目的とした同学会の会員は、医師、看護職、介護職、相談援助職と、実にさまざまな職種で構成されています。
今大会は「認知症ケアの理念を実践へ」というテーマのもと、診断や薬物療法に関するものから、家族のサポートや終末期ケア、地域包括ケアに関する課題など、多様な角度から認知症の人とケアを見つめる14の特別講演、8つのシンポジウムなど、多数のプログラムが行われました。参加者はそれぞれの立場で講演を聴き、学びを得ているようでした。
今大会は「認知症ケアの理念を実践へ」というテーマのもと、診断や薬物療法に関するものから、家族のサポートや終末期ケア、地域包括ケアに関する課題など、多様な角度から認知症の人とケアを見つめる14の特別講演、8つのシンポジウムなど、多数のプログラムが行われました。参加者はそれぞれの立場で講演を聴き、学びを得ているようでした。
また、2日間にわたって、300を超えるポスター発表、150を超える口頭発表も行われ、参加者と発表者の双方向のやりとりが多くみられました。講演を聞くだけでなく、さまざまな研究や取り組みの情報を得て、積極的にケアに取り込んでいこうという参加者の意気込みが感じられました。
「生産・効率」の価値基準から離れ、理念・実践・研究を連動させる
19日に行われた大会長・水野裕さんの講演は、大会テーマと通じる「理念を実践へ――何を目指しての研究や実践であるべきか」と題し、現在の価値観や社会そのものに対し問いかけるものでした。
効率性に重きをおく日本社会の弊害を指摘し、その価値観のままで認知症ケアを見たときに、「生産をしていない」というレッテルを貼られている現状を感じると、認知症ケアにかかわる医師として率直な言葉が語られました。
また、ケアの現場での「改善」や「まだ〜できる」という価値基準は、今までの「生産・効率」重視の価値から受け入れやすいものであるに過ぎないとし、「では、予防・改善から漏れた人は?」と、聴衆に疑問を投げかけました。
水野さんは、「役に立たないから死にたい」という、あるアルツハイマー患者の言葉を引用し、「私たち『ケアする人たち』は、こういう無力感・自責感に手を届かせようとしているのではないのか」と述べます。「その人らしさ」と言いながら、まだまだ現場では大規模客観データに基づいたケアが実践されていないかとの厳しい問いかけもありましたが、「歩くことに価値があるのではない、歩くことで笑顔になるから価値があるのだ」との水野さんの言葉には、多くの参加者が頷きながら聞き入っていました。認知症ケアの目指す理念と実践、研究をすべて一体化させようと、認知症ケアを牽引する学会員に対しての希望を述べ、講演は締めくくられました。
効率性に重きをおく日本社会の弊害を指摘し、その価値観のままで認知症ケアを見たときに、「生産をしていない」というレッテルを貼られている現状を感じると、認知症ケアにかかわる医師として率直な言葉が語られました。
また、ケアの現場での「改善」や「まだ〜できる」という価値基準は、今までの「生産・効率」重視の価値から受け入れやすいものであるに過ぎないとし、「では、予防・改善から漏れた人は?」と、聴衆に疑問を投げかけました。
水野さんは、「役に立たないから死にたい」という、あるアルツハイマー患者の言葉を引用し、「私たち『ケアする人たち』は、こういう無力感・自責感に手を届かせようとしているのではないのか」と述べます。「その人らしさ」と言いながら、まだまだ現場では大規模客観データに基づいたケアが実践されていないかとの厳しい問いかけもありましたが、「歩くことに価値があるのではない、歩くことで笑顔になるから価値があるのだ」との水野さんの言葉には、多くの参加者が頷きながら聞き入っていました。認知症ケアの目指す理念と実践、研究をすべて一体化させようと、認知症ケアを牽引する学会員に対しての希望を述べ、講演は締めくくられました。
パーソン・センタードな認知症ケア
19日の最後には、市民公開講座としてイギリスのウースター大学教授・Dawn Brooker氏の「パーソン・センタードな認知症ケア」の講演がありました。
通訳を介し、イギリスでパーソン・センタードケアの実践を支えるための要素としてBrooker氏が提唱した「VIPS」という枠組みが解説されました。実践を振り返るための指標となるチェックリストの紹介もあり、多数の写真とユーモアを交えて語られる耳新しい枠組みに、一般参加者も含め約2000人の聴衆が聴き入りました。
通訳を介し、イギリスでパーソン・センタードケアの実践を支えるための要素としてBrooker氏が提唱した「VIPS」という枠組みが解説されました。実践を振り返るための指標となるチェックリストの紹介もあり、多数の写真とユーモアを交えて語られる耳新しい枠組みに、一般参加者も含め約2000人の聴衆が聴き入りました。
認知症ケアの広がりと課題
学会設立から12年が経過し、認知症ケア学会の会員数は2万を超えました。その数字は、社会における認知症ケアの広がりと関心を示しているのでしょう。
一方で、12年の間にも醸成され、今も成長し続けている認知症ケアの「理念」が、認知症の人のケアで本当に「実践」されることの重要性と、そこでの課題が、あらためて指摘された大会となりました。
一方で、12年の間にも醸成され、今も成長し続けている認知症ケアの「理念」が、認知症の人のケアで本当に「実践」されることの重要性と、そこでの課題が、あらためて指摘された大会となりました。