福祉の世界を志す学生は、今何を考え、自らの将来像をどのように描いているのでしょうか。今年で5回目を数える「日本の福祉現場力を高める研究大会」が2月17日、東京・千代田の日比谷公会堂で開催され、学生・一般合わせて1200名を超える来場者で盛況のうちに幕を閉じました。
Vol.112 福祉の社会に一石を投じよう
――第5回日本の福祉現場力を高める研究大会
つらいときにやさしくできるのが本当の強さ
東京福祉専門学校、埼玉福祉専門学校を始め、福祉士養成施設校が中心となって開催される研究大会は、今年で5回目。冒頭、大会会長の浮舟邦彦さんは、経済成長に伴い、福祉に対する要求も多様化・高度化してきた現状を踏まえ、アジアにおける福祉先進国としての地位を確立した日本において、現在は人材のキャリアアップが課題とし、現場力の必要性を説きました。
そこで、福祉現場の専門職、福祉を目指す学生らが主体となる今大会についても、彼らのための研究発表になることを願い、「福祉の社会に一石を投じられたらすばらしい」と思いを伝えました。
そこで、福祉現場の専門職、福祉を目指す学生らが主体となる今大会についても、彼らのための研究発表になることを願い、「福祉の社会に一石を投じられたらすばらしい」と思いを伝えました。
挨拶の後は、東日本大震災の被災地のおけるボランティア活動の報告です。2名の学生が、自身のボランティア経験を語り、「つらいときにやさしくできるのが本当の強さだと気づいた」「利用者のみではなく、全体を支えることが必要」など、今後に向けて力強い感想を聞くことができました。
学生による利用者目線の研究発表
ボランティア活動に続いては、学生による研究発表です。高齢者だけでなく、障害児、子育てなど幅広いテーマについて、4つの発表がありました。
まず、東京福祉専門学校児童科は「恥ずかしがり行動を示す知的障害児にどう関わるか?」と題し、学校内の「障がい児広場」に来るS君の恥ずかしい気持ちについて、積極的にかかわるだけでなく、待ちの姿勢でのかかわりについて実践し、その可能性に言及しました。
次に、埼玉福祉専門学校介護福祉科は「靴の上に装着できる滑り止め」として、車いす利用者の靴底を滑りにくくすることで、自走走行が楽に行えるのではないかという仮説から、実験・実証を行い、その仮説を指示する結論を得ることができました。
3番目は、大阪保健福祉専門学校社会福祉科の「地域『子育て支援カード』の取り組みと課題」です。大阪市で配布されている子育て支援連絡先カードについて、市民に意識調査を行い、現状の課題と将来性について分析しました。
最後は群馬医療福祉大学短期大学部による「余暇時間の充足とその人らしさについて」です。意欲が低下している施設入居者に、余暇時間の充実を働きかけることについて、1か月という限られた実習期間のなかで得た気づきを報告しました。
4つの発表に共通しているのは、学生という新鮮な視点で利用者の立場に立った研究ということです。この気持ちを忘れずに、現場に出ても改善の視点をもち続けてほしいものです。
まず、東京福祉専門学校児童科は「恥ずかしがり行動を示す知的障害児にどう関わるか?」と題し、学校内の「障がい児広場」に来るS君の恥ずかしい気持ちについて、積極的にかかわるだけでなく、待ちの姿勢でのかかわりについて実践し、その可能性に言及しました。
次に、埼玉福祉専門学校介護福祉科は「靴の上に装着できる滑り止め」として、車いす利用者の靴底を滑りにくくすることで、自走走行が楽に行えるのではないかという仮説から、実験・実証を行い、その仮説を指示する結論を得ることができました。
3番目は、大阪保健福祉専門学校社会福祉科の「地域『子育て支援カード』の取り組みと課題」です。大阪市で配布されている子育て支援連絡先カードについて、市民に意識調査を行い、現状の課題と将来性について分析しました。
最後は群馬医療福祉大学短期大学部による「余暇時間の充足とその人らしさについて」です。意欲が低下している施設入居者に、余暇時間の充実を働きかけることについて、1か月という限られた実習期間のなかで得た気づきを報告しました。
4つの発表に共通しているのは、学生という新鮮な視点で利用者の立場に立った研究ということです。この気持ちを忘れずに、現場に出ても改善の視点をもち続けてほしいものです。
幅広い領域を、総合的に支援する
現場職員による実践報告も学生と同じく4事例報告されました。特別養護老人ホームによる、職員の研修参加意識を高める「ドリカムプロジェクト」、埼玉県地域生活定着支援センターによる、矯正施設の出所予定者の生活調整(コーディネート)の取り組み、東京都同胞援護会保育グループによる、子どもの運動能力向上を目指す「健康体操」の実施、東京都福祉保健局による、社会福祉施設における人材育成マネジメントガイドラインの作成です。
学生たちにとっては、就労支援から保育までテーマが多岐にわたり、耳慣れない部分が多かったかもしれません。しかし逆に、福祉の現場の領域はそれだけ幅広いものであり、総合的な支援が必要だと再認識する機会になったことでしょう。
現場発表の後は、生活とリハビリ研究所の三好春樹さんの講演です。「“自立支援”のほんとうの意味〜介護の専門性とは何か〜」と題し、三好さんが介護業界に身を転じた38年前から今日まで、介護の専門性がどのように変化してきたのか、変化していないのかについて、参加者にも考えさせる簡単なグループワーク形式で伝えました。
学生たちにとっては、就労支援から保育までテーマが多岐にわたり、耳慣れない部分が多かったかもしれません。しかし逆に、福祉の現場の領域はそれだけ幅広いものであり、総合的な支援が必要だと再認識する機会になったことでしょう。
現場発表の後は、生活とリハビリ研究所の三好春樹さんの講演です。「“自立支援”のほんとうの意味〜介護の専門性とは何か〜」と題し、三好さんが介護業界に身を転じた38年前から今日まで、介護の専門性がどのように変化してきたのか、変化していないのかについて、参加者にも考えさせる簡単なグループワーク形式で伝えました。
☆
大会の最後は、高校生による作文コンテストの発表です。若い人たちに福祉・保育への関心を高め、さらに現場職員の振り返りを促す目的をもつコンテストですが、今回も身近な話題から考えを展開させた応募が全国から2191作品も寄せられました。
1200名を超える参加者のうち、およそ760名が学生という今大会。今春から現場で働く学生も多いことでしょう。彼らが何を感じ、何を得たのか。今後の活躍に期待しましょう。