去る10月10日と11日、法政大学多摩キャンパスにおいて、「日本社会福祉学会・第57回全国大会」が開催されました。
今回は、1,600名を超える参加者を集めた同大会をレポートします。
今回は、1,600名を超える参加者を集めた同大会をレポートします。
Vol.63 日本社会福祉学会・第57回全国大会
社会福祉における「公共」性を問う
戦後の日本社会は、高度経済成長を政策の中心に据えつつ社会福祉や社会保障の整備と拡充を続けてきたはずですが、1980年代以降の世界的規模での構造改革による荒波が、国民生活の基盤的条件である雇用・所得・医療・福祉・教育・住宅などのセーフティネットを劣化させ、深刻な格差や貧困問題を招くこととなりました。
前回(昨年)大会では、このような状況を社会的排除という視点で捉えて、社会福祉のあり方を問う大会として実り多い議論が展開されましたが、今回は、改めて社会福祉における「公共」性とは何か、という視点で検討を加えることに主眼が置かれています。
社会福祉・社会保障が今日的な生活困難に有効に対応できていない、ないしは、そのような問題を社会福祉の外に置いてしまっているとしたら、それは何故なのか。社会福祉のあり方を、従来の連帯論や互酬性、相互扶助性などに立脚した「閉じられた公共性」に矮小化するのではなく、社会福祉が見過ごしてきた生活問題やニーズをすくい取り、そうした状態にある人々のウェル・ビーイングを実現する新たな公共圏の確立を目指したい……。
前回(昨年)大会では、このような状況を社会的排除という視点で捉えて、社会福祉のあり方を問う大会として実り多い議論が展開されましたが、今回は、改めて社会福祉における「公共」性とは何か、という視点で検討を加えることに主眼が置かれています。
社会福祉・社会保障が今日的な生活困難に有効に対応できていない、ないしは、そのような問題を社会福祉の外に置いてしまっているとしたら、それは何故なのか。社会福祉のあり方を、従来の連帯論や互酬性、相互扶助性などに立脚した「閉じられた公共性」に矮小化するのではなく、社会福祉が見過ごしてきた生活問題やニーズをすくい取り、そうした状態にある人々のウェル・ビーイングを実現する新たな公共圏の確立を目指したい……。
持続可能な生活保障をどう築き上げるのか?
1日目は開会式の後、特別講演が1題とシンポジウムが2題行われました。それぞれのテーマと登壇者は次の通りです。
・特別講演「生活保障の再構築―排除しない社会へ―」
宮本太郎氏(北海道大学大学院法学研究科)
・大会企画シンポジウム「『対抗的公共圏』の諸相から社会福祉を捉え直す」
山岡義典氏(法政大学現代福祉学部)
清水康之氏(NPO法人自殺対策支援センター・ライフリンク)
須田木綿子氏(東洋大学社会学部)
武田丈氏(関西学院大学人間福祉学部)
山野則子氏(大阪府立大学人間社会学部)
・学会企画シンポジウム「グローバル化の中の社会福祉―貧困・格差・排除を超えて―」
杉本貴代栄氏(金城学院大学現代文化学部)
小笠原浩一氏(東北福祉大学総合福祉学部)
大友信勝氏(龍谷大学社会学部)
朝倉美江氏(金城学院大学現代文化学部)
石河久美子氏(日本福祉大学社会福祉学部)
なかでも、宮本氏による講演では、「経済危機とこれまでの日本型生活保障の機能不全が相俟って、不安や貧困が拡がっている。にもかかわらず、制度と政策の刷新に向けたビジョンは現れていない。なぜ硬直した事態が続くのか」という問題提起のもと、「今、人々は安定した生活保障を求めつつも、行政や政治など、公共空間に信頼を寄せることができないという大きなジレンマの中にある」「生活保障の再構築はいかにして可能か」が理論的に語られました。
・特別講演「生活保障の再構築―排除しない社会へ―」
宮本太郎氏(北海道大学大学院法学研究科)
・大会企画シンポジウム「『対抗的公共圏』の諸相から社会福祉を捉え直す」
山岡義典氏(法政大学現代福祉学部)
清水康之氏(NPO法人自殺対策支援センター・ライフリンク)
須田木綿子氏(東洋大学社会学部)
武田丈氏(関西学院大学人間福祉学部)
山野則子氏(大阪府立大学人間社会学部)
・学会企画シンポジウム「グローバル化の中の社会福祉―貧困・格差・排除を超えて―」
杉本貴代栄氏(金城学院大学現代文化学部)
小笠原浩一氏(東北福祉大学総合福祉学部)
大友信勝氏(龍谷大学社会学部)
朝倉美江氏(金城学院大学現代文化学部)
石河久美子氏(日本福祉大学社会福祉学部)
なかでも、宮本氏による講演では、「経済危機とこれまでの日本型生活保障の機能不全が相俟って、不安や貧困が拡がっている。にもかかわらず、制度と政策の刷新に向けたビジョンは現れていない。なぜ硬直した事態が続くのか」という問題提起のもと、「今、人々は安定した生活保障を求めつつも、行政や政治など、公共空間に信頼を寄せることができないという大きなジレンマの中にある」「生活保障の再構築はいかにして可能か」が理論的に語られました。
多岐にわたる社会福祉の構成要素
2日間にわたって行われた自由研究発表では、発表数がおよそ320題。【理論】【歴史】【制度・政策】【方法・技術】【児童福祉】【家族福祉】【障害(児)者福祉】【高齢者福祉】【女性・ジェンダー】【地域福祉】【NPO・ボランティア】【国際社会福祉】【所得保障・公的扶助】【医療保健・医療福祉】【社会福祉教育・実習】【司法福祉・更生保護】【産業福祉・労働福祉】という17分野にテーマが設定されていることをみても、いかに社会福祉というものの幅が広いかが明らかです。
また、今大会から「特定課題セッション」という新たな試みも導入されました。これは、学会として議論すべき特定の課題を学会側が会員に示し、会員がその課題での報告を申し込むことで成立するもので、今年は3件の特定課題のうち、「ソーシャルワーク実践としての権利擁護」「地域・『当事者』が参加・参画する社会福祉専門教育」という2件が成立しました。特定課題セッションは、この形式により今後も継続して開催されることになるとのことです。
また、今大会から「特定課題セッション」という新たな試みも導入されました。これは、学会として議論すべき特定の課題を学会側が会員に示し、会員がその課題での報告を申し込むことで成立するもので、今年は3件の特定課題のうち、「ソーシャルワーク実践としての権利擁護」「地域・『当事者』が参加・参画する社会福祉専門教育」という2件が成立しました。特定課題セッションは、この形式により今後も継続して開催されることになるとのことです。
一般社団法人化に向けた取り組み
2日目に開催された「2009年度日本社会福祉学会総会」では、本学会の一般社団法人化が議案として提出され、満場一致で承認されました。これに伴い、来年からは全国大会の運営が変わります。
具体的には、5月期(=春季大会)と10月期(=秋季大会)の年2回、全国大会を開催します。春季大会は法人の定期総会を兼ね、東京で開催されます。開催期間は1日となり、自由研究発表は行わず、シンポジウムが中心の構成となります。
また、秋季大会は、従来通り開催校を中心として実行委員会が組織され、開催校企画と自由研究発表を中心とした内容になります。
なお、来年に限り、第58回春季大会は一般社団法人設立総会と併行し、3月27日(土)に東洋大学白山キャンパスで開催され、第58回秋季大会は、10月9日・10日の両日に日本福祉大学をメイン会場として開催されることになっています。
具体的には、5月期(=春季大会)と10月期(=秋季大会)の年2回、全国大会を開催します。春季大会は法人の定期総会を兼ね、東京で開催されます。開催期間は1日となり、自由研究発表は行わず、シンポジウムが中心の構成となります。
また、秋季大会は、従来通り開催校を中心として実行委員会が組織され、開催校企画と自由研究発表を中心とした内容になります。
なお、来年に限り、第58回春季大会は一般社団法人設立総会と併行し、3月27日(土)に東洋大学白山キャンパスで開催され、第58回秋季大会は、10月9日・10日の両日に日本福祉大学をメイン会場として開催されることになっています。