去る8月8日、9日の2日間、東京・大崎の立正大学にて、日本司法福祉学会第10回が開催されました。1日目はシンポジウムと大会記念講演、2日目は分科会と自由研究発表が行われ、司法分野と福祉分野の連携の必要性がより明確となる学会となりました。社会福祉士の養成教育カリキュラムに「更生保護制度」という科目が新設された今年、注目度の高い学会といえます。
Vol.59 日本司法福祉学会第10回開催
非行者の再統合と司法のあり方
当日は100人を超える参加者の下、「非行者の再統合と司法」というシンポジウムから始まりました。シンポジウムは第1部と第2部に分けられ、第1部では登壇者による発表、第2部では指定討論者による発言と会場も含めた質疑応答が行われました。
第1部は、司会の鈴鹿医療科学大学の藤原正範さんによる企画主旨の説明のあと、シンポジストに静岡県立大学の津富宏さん、前橋保護観察所の三宅仁士さん、カリヨン子どもセンターの坪井節子さんが、いずれも司法福祉の実践者という立場で登壇しました。
津富さんは非行者の再統合にあたり、統合する側、される側という考え方が本当によいのかという問題提起をしながら、受刑者が元に戻るのではなく、過去を抱えながら前進するのが社会復帰であると訴えました。
三宅さんは、保護観察官として20年間少年達と接してきた経験をもとに、再統合について話し、出所後に自分を受け入れてくれる場所や交友関係があるかどうかが社会復帰にあたって重要になると示しました。
坪井さんは、子どもの緊急避難場所となるシェルターを開設・運営するに至った動機や経緯を話しながら、弁護士という立場での福祉専門職との連携の難しさや、共通言語の必要性に言及しました。
第2部では、指定討論者である立教大学の小長井賀與さんから、国や自治体等からどういった支援がほしいか? 社会内にどんな仕組みがあるべきなのか?、大阪経済法科大学の前野育三さんから、厳罰化の流れの中で実践を阻むものがあるのではないか? といった質問があり、それを受けてシンポジストが発言し、会場との活発な意見交換が行われました。
第1部と第2部の間には、大会記念講演「『司法福祉論』はどのように構想されたか」で、日本福祉大学名誉教授の山口幸男さんが、「司法福祉」を発想したことや司法福祉論のこれまでの発展について話しました。
第1部は、司会の鈴鹿医療科学大学の藤原正範さんによる企画主旨の説明のあと、シンポジストに静岡県立大学の津富宏さん、前橋保護観察所の三宅仁士さん、カリヨン子どもセンターの坪井節子さんが、いずれも司法福祉の実践者という立場で登壇しました。
津富さんは非行者の再統合にあたり、統合する側、される側という考え方が本当によいのかという問題提起をしながら、受刑者が元に戻るのではなく、過去を抱えながら前進するのが社会復帰であると訴えました。
三宅さんは、保護観察官として20年間少年達と接してきた経験をもとに、再統合について話し、出所後に自分を受け入れてくれる場所や交友関係があるかどうかが社会復帰にあたって重要になると示しました。
坪井さんは、子どもの緊急避難場所となるシェルターを開設・運営するに至った動機や経緯を話しながら、弁護士という立場での福祉専門職との連携の難しさや、共通言語の必要性に言及しました。
第2部では、指定討論者である立教大学の小長井賀與さんから、国や自治体等からどういった支援がほしいか? 社会内にどんな仕組みがあるべきなのか?、大阪経済法科大学の前野育三さんから、厳罰化の流れの中で実践を阻むものがあるのではないか? といった質問があり、それを受けてシンポジストが発言し、会場との活発な意見交換が行われました。
第1部と第2部の間には、大会記念講演「『司法福祉論』はどのように構想されたか」で、日本福祉大学名誉教授の山口幸男さんが、「司法福祉」を発想したことや司法福祉論のこれまでの発展について話しました。
社会内処遇への試み
学会の2日目には8つの分科会が行われ、そのあと2会場に分かれて自由研究発表が行われました。
第2分科会「ジャスティス・クライエント(Justice Client)への福祉・臨床的アプローチ 司法福祉の方法と技術−その3−」では、水藤昌彦さん(高槻地域生活総合支援センターぷれいすBe)が、オーストラリア・ビクトリア州のDepartment of Human Services(日本では厚生労働省にあたる機関)でケースワーカーとして活動していた際の実践を話しました。
知的障害のある犯罪者を「ジャスティス・クライエント」としてとらえ、刑事施設内での処遇ではなく、ジャスティス・プランという社会内処遇を行っていくというビクトリア州の試み。そのことについて、水藤さんから興味深い実践内容が多く語られ、ジャスティス・プランの社会復帰への有効性や、再犯・累犯の防止効果、日本との比較など、さまざまな議論が展開していきました。
他の分科会でも活発な議論が行われ、予定時間を過ぎたあとも、発表者と参加者が意見交換をしている場面が多くみられました。
「実践」ということに主眼を置いた今回の学会は、司法福祉のこれからを考えるうえでも重要な意味をもちます。第10回を迎えた司法福祉学会では、初の選挙が行われ、日本福祉大学の加藤幸男さんが新たな学会長に就任しました。次回以降の新たな体制での学会運営にも期待がもたれます。
第2分科会「ジャスティス・クライエント(Justice Client)への福祉・臨床的アプローチ 司法福祉の方法と技術−その3−」では、水藤昌彦さん(高槻地域生活総合支援センターぷれいすBe)が、オーストラリア・ビクトリア州のDepartment of Human Services(日本では厚生労働省にあたる機関)でケースワーカーとして活動していた際の実践を話しました。
知的障害のある犯罪者を「ジャスティス・クライエント」としてとらえ、刑事施設内での処遇ではなく、ジャスティス・プランという社会内処遇を行っていくというビクトリア州の試み。そのことについて、水藤さんから興味深い実践内容が多く語られ、ジャスティス・プランの社会復帰への有効性や、再犯・累犯の防止効果、日本との比較など、さまざまな議論が展開していきました。
他の分科会でも活発な議論が行われ、予定時間を過ぎたあとも、発表者と参加者が意見交換をしている場面が多くみられました。
「実践」ということに主眼を置いた今回の学会は、司法福祉のこれからを考えるうえでも重要な意味をもちます。第10回を迎えた司法福祉学会では、初の選挙が行われ、日本福祉大学の加藤幸男さんが新たな学会長に就任しました。次回以降の新たな体制での学会運営にも期待がもたれます。