昨年末12月26日に示された新介護報酬。今回は、単位が示された当日にキャッチアップで俯瞰した速報レポート(Vol.36)のなかから、現場の皆さんが関心の高いものについてお伝えします。
Vol.37 介護報酬改定 詳細レポート
サービス提供責任者への評価
サービス提供責任者は、現状では報酬の設定がなく、事業所運営が厳しいと指摘されていました。今回の改定で、特に労力のかかっている新規の利用者への訪問介護計画作成を含めた業務と、緊急時の対応に対して、それぞれ「初回加算」「緊急時訪問介護加算」が設けられることとなりました。その算定要件は以下のようになっています。
初回加算(新規)⇒200単位/月
※算定要件(介護予防訪問介護も同様)
新規に訪問介護計画を作成した利用者に対して、初回に実施した訪問介護と同月内に、サービス提供責任者が、自ら訪問介護を行う場合又は他の訪問介護員等が訪問介護を行う際に同行訪問した場合
新規に訪問介護計画を作成した利用者に対して、初回に実施した訪問介護と同月内に、サービス提供責任者が、自ら訪問介護を行う場合又は他の訪問介護員等が訪問介護を行う際に同行訪問した場合
緊急時訪問介護加算(新規)⇒100単位/回
※算定要件
利用者やその家族等からの要請を受けて、サービス提供責任者がケアマネジャーと連携を図り、ケアマネジャーが必要と認めたときに、サービス提供責任者又はその他の訪問介護員等が居宅サービス計画にない訪問介護(身体介護)を行った場合
利用者やその家族等からの要請を受けて、サービス提供責任者がケアマネジャーと連携を図り、ケアマネジャーが必要と認めたときに、サービス提供責任者又はその他の訪問介護員等が居宅サービス計画にない訪問介護(身体介護)を行った場合
サービス提供責任者が人材要件になっている訪問介護の特定事業所加算においても、研修や資格取得などキャリアアップを推進する観点で、算定要件が見直されています。
※算定要件
【特定事業所加算(1)】
体制要件、人材要件((1)及び(2))、重度要介護者等対応要件のいずれにも適合
【特定事業所加算(2)】
体制要件、人材要件((1)又は(2))のいずれにも適合
【特定事業所加算(3)】
体制要件、重度要介護者等対応要件のいずれにも適合
<体制要件>
(1)すべての訪問介護員等に対して個別の研修計画を作成し、研修を実施又は実施を予定していること。
(2)利用者に関する情報、サービス提供に当たっての留意事項の伝達又は訪問介護員等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること。
(3)サービス提供責任者が、訪問介護員等に利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達してから開始し、終了後、適宜報告を受けていること。
(4)すべての訪問介護員等に対し、健康診断等を定期的に実施していること。
(5)緊急時等における対応方法が利用者に明示されていること。
<人材要件>
(1)訪問介護員等の総数のうち介護福祉士が 30%以上、又は介護福祉士・介護職員基礎研修課程修了者・1級訪問介護員の合計が 50%以上であること。
(2)すべてのサービス提供責任者が3年以上の実務経験を有する介護福祉士又は5年以上の実務経験を有する介護職員基礎研修課程修了者・1級訪問介護員であること。ただし、居宅サービス基準上、1人を超えるサービス提供責任者を配置しなければならない事業所については、2人以上のサービス提供責任者が常勤であること。
<重度要介護者等対応要件>
前年度又は前3月の利用者のうち、要介護4〜5・認知症日常生活自立度 3以上の利用者の総数が 20%以上であること。
注)特定事業所加算(1)〜(3)は、いずれか一つのみを算定することができる。
【特定事業所加算(1)】
体制要件、人材要件((1)及び(2))、重度要介護者等対応要件のいずれにも適合
【特定事業所加算(2)】
体制要件、人材要件((1)又は(2))のいずれにも適合
【特定事業所加算(3)】
体制要件、重度要介護者等対応要件のいずれにも適合
<体制要件>
(1)すべての訪問介護員等に対して個別の研修計画を作成し、研修を実施又は実施を予定していること。
(2)利用者に関する情報、サービス提供に当たっての留意事項の伝達又は訪問介護員等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること。
(3)サービス提供責任者が、訪問介護員等に利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達してから開始し、終了後、適宜報告を受けていること。
(4)すべての訪問介護員等に対し、健康診断等を定期的に実施していること。
(5)緊急時等における対応方法が利用者に明示されていること。
<人材要件>
(1)訪問介護員等の総数のうち介護福祉士が 30%以上、又は介護福祉士・介護職員基礎研修課程修了者・1級訪問介護員の合計が 50%以上であること。
(2)すべてのサービス提供責任者が3年以上の実務経験を有する介護福祉士又は5年以上の実務経験を有する介護職員基礎研修課程修了者・1級訪問介護員であること。ただし、居宅サービス基準上、1人を超えるサービス提供責任者を配置しなければならない事業所については、2人以上のサービス提供責任者が常勤であること。
<重度要介護者等対応要件>
前年度又は前3月の利用者のうち、要介護4〜5・認知症日常生活自立度 3以上の利用者の総数が 20%以上であること。
注)特定事業所加算(1)〜(3)は、いずれか一つのみを算定することができる。
また、サービス提供責任者の人員配置については、一定の非常勤職員の登用が認められました。具体的には下の図のように、複数人数を配置する事業所は非常勤者の常勤換算した数が常勤者数を超えないようにするとされたほか、必要に応じて常勤と非常勤が業務分担・協力することとされています。
サービス提供責任者の人員配置基準の見直し
・現行のサービス提供時間(450時間)又は訪問介護員等の員数(10人)に応じた最低基準の考え方は維持。
・常勤職員を基本としつつ、非常勤職員の登用を一定程度可能とする方向で見直す。
・併せて職業能力開発機会の充実や業務の具体化・標準化を推進する。
・施行後の状況を検討し、必要な対応を行う。
注)訪問介護員等の員数に基づく基準についても同様の考え方で見直すこととする。・常勤職員を基本としつつ、非常勤職員の登用を一定程度可能とする方向で見直す。
・併せて職業能力開発機会の充実や業務の具体化・標準化を推進する。
・施行後の状況を検討し、必要な対応を行う。
・最低基準上、サービス提供責任者を複数配置する事業所において、原則として1人分のみの常勤換算を可能とする。
・併せて、5人を超えるサービス提供責任者の配置が必要な事業所についても、その3分の2以上を常勤者とするものとする。
・併せて、5人を超えるサービス提供責任者の配置が必要な事業所についても、その3分の2以上を常勤者とするものとする。
キャリアに応じた評価
今回の目玉の一つでもある「キャリアに応じた評価」ですが、現状では質の高いサービスに対する適切かつ客観的な評価指標が確立していないことから、今回は「介護福祉士の割合」「常勤職員の割合」「一定以上の勤続年数の職員割合」を暫定的な評価指標とすることになりました。具体的には下の表のように、サービスごとにキャリア要件を満たせば、それに応じて事業所が加算される仕組みです。
サービス | 要件 | 単位 |
訪問入浴介護 |
研修等を実施しており、かつ、次のいずれかに該当すること。 (1)介護福祉士が30%以上配置されていること。 (2)介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が50%以上配置されていること。 |
24単位/回 |
夜間対応型訪問介護 | 12単位/回 (包括型 84単位/人・月) | |
訪問看護 | 研修等を実施しており、かつ、3年以上の勤続年数のある者が30%以上配置されていること。 | 6単位/回 |
訪問リハビリテーション | 3年以上の勤続年数のある者が配置されていること。 | 6単位/回 |
通所介護 通所リハビリテーション 認知症対応型通所介護 |
次のいずれかに該当すること。 (1)介護福祉士が40%以上配置され ていること。 (2)3年以上の勤続年数のある者が30%以上配置されていること。 |
(1):12単位/回 (2):6単位/回 ※介護予防通所介護・介護予防通所リハビリ 要支援1は (1):48単位/人・月 (2):24単位/人・月 要支援2は (1):96単位/人・月 (2):48単位/人・月 |
療養通所介護 | 3年以上の勤続年数のある者が30%以上配置されていること。 | 6単位/回 |
小規模多機能型居宅介護 |
研修等を実施しており、かつ、次のいずれかに該当すること。 (1)介護福祉士が40%以上配置されていること。 (2)常勤職員が60%以上配置されていること。 (3)3年以上の勤続年数のある者 が 30%以上配置されていること。 |
(1):500単位/人・月 (2)・(3):350単位/人・月 |
認知症対応型共同生活介護 地域密着型介護老人福祉施設 介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護療養型医療施設 短期入所生活介護 短期入所療養介護 |
次のいずれかに該当すること。 (1)介護福祉士が50%以上配置されていること。 (2)常勤職員が 75%以上配置されていること。 (3)3年以上の勤続年数のある者が30%以上配置されていること。 |
(1):12単位/人・日 (2)・(3):6単位/人・日 |
※1 訪問介護及び居宅介護支援については、特定事業所加算の見直しを行う。
※2 表中(1)・(2)・(3)の単位設定がされているものについては、いずれか一つのみを算定することができる。
※3 介護福祉士に係る要件は「介護職員の総数に占める介護福祉士の割合」、常勤職員に係る要件は「看護・介護職員の総数に占める常勤職員の割合」、勤続年数に係る要件は「利用者にサービスを直接提供する職員の総数に占める3年以上勤続職員の割合」である。
この評価によって現場の介護職の給料に変動があるかどうかは、事業所規模や雇用形態、事業所の裁量などでも異なり、一律に引き上げられるものではないといわれています。しかし、処遇改善のための報酬アップであることを踏まえれば、質の高いサービスとキャリアを持ち合わせている職員には相応に還元することが求められているといえます。
地域区分の見直しで変わる報酬
現在、介護報酬の単価は1単位10円が基本ですが、利用者が住んでいる地域により上乗せ率があり、さらにサービスごとに設定されている人件費率があり、それらを乗じた額で算定されます。そのため同じ1単位でも、地域やサービスにより単価が異なっています。
今回の改定では、地域区分そのものの変更はなかったものの、特別区と乙地の上乗せ率が向上し、サービスごとの人件費率も経営実態調査を踏まえて見直しがなされました(下表)。なお、この人件費を考える際の職員の範囲について、今までは「直接処遇職員(介護職員、看護職員など)」に限られていましたが、今回は実態に即して「人員配置基準で配置を規定されている職種の職員(ケアマネジャー、生活相談員、理学療法士、栄養士など)」と拡大されています。
今回の改定では、地域区分そのものの変更はなかったものの、特別区と乙地の上乗せ率が向上し、サービスごとの人件費率も経営実態調査を踏まえて見直しがなされました(下表)。なお、この人件費を考える際の職員の範囲について、今までは「直接処遇職員(介護職員、看護職員など)」に限られていましたが、今回は実態に即して「人員配置基準で配置を規定されている職種の職員(ケアマネジャー、生活相談員、理学療法士、栄養士など)」と拡大されています。
地域区分ごとの報酬単位
特別区 | 12% |
特甲地 | 10% |
甲地 | 6% |
乙地 | 3% |
その他 | 0% |
↓
特別区 | 15% |
特甲地 | 10% |
甲地 | 6% |
乙地 | 5% |
その他 | 0% |
人件費割合
60% | 訪問介護/訪問入浴介護/通所介護/特定施設入居者生活介護/夜間対応型訪問介護/認知症対応型通所介護/小規模多機能型居宅介護/認知症対応型共同生活介護/地域密着型特定施設入居者生活介護/居宅介護支援 |
40% | 訪問看護/訪問リハビリテーション/通所リハビリテーション/短期入所生活介護/短期入所療養介護/介護老人福祉施設/介護老人保健施設/介護療養型医療施設/地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 |
↓
70% | 訪問介護/訪問入浴介護/夜間対応型訪問介護/居宅介護支援 |
55% | 訪問看護/訪問リハビリテーション/通所リハビリテーション/認知症対応型通所介護/小規模多機能型居宅介護 |
45% | 通所介護/短期入所生活介護/短期入所療養介護/特定施設入居者生活介護/認知症対応型共同生活介護/介護老人福祉施設/介護老人保健施設/介護療養型医療施設/地域密着型特定施設入居者生活介護/地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 |
※介護予防サービスのある居宅サービス及び地域密着型サービスについては、いずれも介護予防サービスを含む。
これによって、介護報酬1単位の単価は以下のように整理されます。
これによって、介護報酬1単位の単価は以下のように整理されます。
介護報酬1単位当たりの単価の見直しの全体像と見直し後の単価
〈現行〉
↓ 〈見直し後〉
特別区 | 特甲地 | 甲地 | 乙地 | その他 | ||
上乗せ割合 | 12% | 10% | 6% | 3% | 0% | |
人件費 割合 |
60% | 10.72円 | 10.60円 | 10.36円 | 10.18円 | 10円 |
40% | 10.48円 | 10.40円 | 10.24円 | 10.12円 | 10円 |
↓ 〈見直し後〉
特別区 | 特甲地 | 甲地 | 乙地 | その他 | ||
上乗せ割合 | 15% | 10% | 6% | 5% | 0% | |
人件費 割合 |
70% | 11.05円 | 10.70円 | 10.42円 | 10.35円 | 10円 |
55% | 10.83円 | 10.55円 | 10.33円 | 10.28円 | 10円 | |
45% | 10.68円 | 10.45円 | 10.27円 | 10.23円 | 10円 |
国家公務員の調整手当の級地区分を基本として決められた地域区分そのものが実態に合わなくなり、これを見直すべきという指摘もありましたが、この見直しをするにあたっては相当の時間を要するということもあり、次回への検討課題として残しつつ、今回は現行区分を適用することになっています。