第67回 きょうだい仲良くできない原因
出版本は玉石混交、暴走著者もいる
最近隔月で書評を書いています。たまに「何を言いたいんじゃ、こやつは!」と迷宮に入ったように何度も読み返してそれでもまだよくわからなかったり、題名がいかにも教育書なのに内容は波乱万丈女一代記の「羊頭狗肉」にぶつかったりすることも。
自分も物書きだからわかるのですが、こういう類の本はたいがいナビゲーターである編集者がついていないか、書き手も不慣れで、初心者マークがスポーツカーを運転するようなものなんですね。だから筆が暴走してあれもこれも書きたくなる。ついでに自分の人生の言い訳や正当化もしたくなり、あれよあれよという間に道路からそれて藪の中に突っ込むか、通行止めに気づかないで滝壺にまっさかさまに落ちちゃう。
振り回されてえらい目にあったと思うか、藪の中をかきわけていく冒険もけっこう楽しめたわンと思うか、本を読むまでわからないけど、とことん同伴するおもしろさが「書評」の醍醐味であります。
自分も物書きだからわかるのですが、こういう類の本はたいがいナビゲーターである編集者がついていないか、書き手も不慣れで、初心者マークがスポーツカーを運転するようなものなんですね。だから筆が暴走してあれもこれも書きたくなる。ついでに自分の人生の言い訳や正当化もしたくなり、あれよあれよという間に道路からそれて藪の中に突っ込むか、通行止めに気づかないで滝壺にまっさかさまに落ちちゃう。
振り回されてえらい目にあったと思うか、藪の中をかきわけていく冒険もけっこう楽しめたわンと思うか、本を読むまでわからないけど、とことん同伴するおもしろさが「書評」の醍醐味であります。
本は見かけじゃわからない、お薦めの一作
先回書評した本は『間違えだらけの子育て』(インターシフト社)という、実にありふれたネーミング(他につけようがなかったのかしら)の翻訳本で、文字は小さく、分厚い。しかし、やれやれと思ったのは最初の3ページまで。これがおもしろいのなんの、二百人以上の学者、専門家の研究やその成果をギューッと凝縮したおそろしくアカデミックな内容なのに、主に子どもからみた親を書いているので育児本というより万人向け読み物。「おお、なるほど」とか、「へぇー、知らなかったなぁ」と声をあげながら、スラスラと読み進めちゃうじゃありませんか。
著者は編集もよくする男性作家と、ジャーナリストでもある女性弁護士。沈着冷静にして実に多くの取材をこなし、客観的だけど読者の興味のツボをとらえた共同執筆で緻密に練り上げた作品だけに、筆に迷いがない。誰が読んでも極上の味がするでしょう。
原題は「NurtureShock」、「ニューヨークタイムス」等に掲載されて、数々の雑誌賞に輝いた赤ちゃんから十代までの脳科学や発達科学の話で、シニア世代にとってはtoo late! 「うちの子には手遅れじゃんか」とがっくりくるかもしれませんが、孫には間に合いそう。お薦めの一作であります。
原題は「NurtureShock」、「ニューヨークタイムス」等に掲載されて、数々の雑誌賞に輝いた赤ちゃんから十代までの脳科学や発達科学の話で、シニア世代にとってはtoo late! 「うちの子には手遅れじゃんか」とがっくりくるかもしれませんが、孫には間に合いそう。お薦めの一作であります。
正しかったのはシェイクスピアでフロイトは間違えた?
なかでもおもしろかったのは、「きょうだい仲に関しては正しかったのはシェークスピアで、フロイトは間違っていた」という部分。きょうだいは親の愛情を永遠に争う運命にあるというフロイトの学説は、百年もの間、親をハラハラさせてきました。
でも兄弟のライバル意識は、映画「エデンの東」のエディプス・コンプレックスの物語より、悲劇「リア王」に近いという研究結果が次々に出たというのです。データによれば75〜80%の子のきょうだい喧嘩の原因のトップは物の所有権の分配、つまり、「お宝の取り分」と答え、「親の愛情の取り合い」というのは最下位だったとか。
でも兄弟のライバル意識は、映画「エデンの東」のエディプス・コンプレックスの物語より、悲劇「リア王」に近いという研究結果が次々に出たというのです。データによれば75〜80%の子のきょうだい喧嘩の原因のトップは物の所有権の分配、つまり、「お宝の取り分」と答え、「親の愛情の取り合い」というのは最下位だったとか。
団塊の世代以上ならこのことは思い当りませんか? 老親の面倒をどちらがみるか、相続分が多いの少ないので、ひさびさに壮絶なきょうだい喧嘩をしたという経験者も多いでしょう。その結果、きょうだい関係が恐ろしく悪化したという話も聞きます。
きょうだい仲をよくするには友情スキルが必要
一人っ子に関する研究は全世界あちこちでおこなわれていますが、結論から言えば、「なんの副作用もない」ことが証明されています。きょうだいのあるなしにかかわらず、対人関係も処世術もちゃんと学んで身に付けていけるのです。「きょうだいがいないと人間関係づくりを学べない。他人とつきあえなくなる」という通説は科学的にも否定されたわけです。
クレーマー博士によるとそれは逆で、「上の子は友だちを練習台にして人間関係づくりを覚え、そのスキルを弟や妹に応用する」という。だから関係づくりを学ぶ前に下の子が生まれた場合、「相手によくすれば自分も得をする」というご褒美を知らないから、きょうだい仲をよくしようというモチベーションそのものがないのだとか。
クレーマー博士によるとそれは逆で、「上の子は友だちを練習台にして人間関係づくりを覚え、そのスキルを弟や妹に応用する」という。だから関係づくりを学ぶ前に下の子が生まれた場合、「相手によくすれば自分も得をする」というご褒美を知らないから、きょうだい仲をよくしようというモチベーションそのものがないのだとか。
観察研究によれば3歳から7歳までの年齢層のきょうだいは平均して一時間に3.5回ケンカをし、口論時間は合計10分。妥協、仲直りで決着がつくケンカは8回に1回で、上の子が支配しておわります。これが親友に対しては7分の1と激減します。つまり、「激怒やいらだちを抑え、礼儀正しさと寛容さを学ぶ人間関係」は「親友たち」によって作られるもので、きょうだいだけで遊ばせておけば覚えるというものではないようです。きょうだい仲は究極の友情というわけでしょう。
しかし、たいがいのきょうだいは対立しあっても「いっしょに過ごす長く楽しい時間」がそれを補って余りあります。その楽しい時間が後年のよいきょうだい仲を作ることが判明。互いに無視しあって(あるいは離されて)きたきょうだいの場合は、ケンカこそすくなかったものの、いつまでも冷えたよそよそしい関係が続いたとの報告もあります。
いま、きょうだい関係がフリーズして戸惑っておられるみなさま。原因の一端でも知りたければ、一度、来し方を振り返ってみられるのもよろしいかと…。解決の糸口がつかめるかもしれませんよ。
次回は、7月22日更新予定です。
しかし、たいがいのきょうだいは対立しあっても「いっしょに過ごす長く楽しい時間」がそれを補って余りあります。その楽しい時間が後年のよいきょうだい仲を作ることが判明。互いに無視しあって(あるいは離されて)きたきょうだいの場合は、ケンカこそすくなかったものの、いつまでも冷えたよそよそしい関係が続いたとの報告もあります。
いま、きょうだい関係がフリーズして戸惑っておられるみなさま。原因の一端でも知りたければ、一度、来し方を振り返ってみられるのもよろしいかと…。解決の糸口がつかめるかもしれませんよ。
次回は、7月22日更新予定です。
(2011年7月8日)
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