第35回 ペットっていいものですね
思い出の中に残る身近な動物たち
団塊の世代が子どもの頃、路地や屋根の上のいたるところに犬や猫がいたような気がします。私の一番古い記憶のペットは、網をはった木のリンゴ箱で飼われていた白いウサギです。私が摘んできたやわらかい雑草の葉をシャキシャキと美味しそうに食べていましたが、ある日突然姿を消し、私のオーバーコートの襟になっていました。そのトラウマからか、いまだに高級レストランのグリーンサラダが「ウサギの餌」に見えて食べられません。
祖父宅にいたメスの甲斐犬「リュウ」の思い出はおぼろげですが、周囲の話ではほぼ純血種で、猟犬出身で黒っぽく、お世辞にも美犬ではなかったけど、それはそれは賢かったそうです。夏に田舎に預けられた私が退屈して庭から出ようとすると、「リュウ、まきが出てくぞ、ついていけ」の命令で幼い私にピタッと寄り添い、田んぼや小川のふちで遊ぶのを落ちないように「見張って」いました。帰り道を間違えないよう、振り返り、振り返りして先導してくれたベビーシッター犬でもあります。このリュウの子か孫が、総理大臣賞をもらったと後で聞かされました。
次の記憶は猫の「マリ」で、2軒隣の飼い猫なのに、新来の猫とそりがあわずにプチ家出を繰り返し、そのうち我が家の食客になりました。昨今の「食って寝て、着るだけのペット」と違って、えらく義理堅いところがあり、3日に一度は天井裏を点検して、ときにネズミをくわえてきて「ねぇ、みてみて」と得意そう。炭火の堀コタツが大好きで、もぐりこんでうたた寝しては、酸欠になってフラフラして出てきました。ケガがもとで、初めてかかった獣医さんのところで死去。号泣。
そのあと何度、捨て犬、捨て猫を拾ってきたことでしょう。そのたびに親に叱られて捨ててあった箱に戻しにいったり、仲間たちと飼ってくれそうな家を探してまわり、そのうち日が暮れて猫を抱いたままベソをかいたり…。冷蔵庫がなかった時代、あのころは贅沢品だった牛乳を少額のおこづかいでは買えないまま、子猫を死なせてしまってみんなで号泣したこともありました。いま思いだしても鼻の奥が熱くなります。
祖父宅にいたメスの甲斐犬「リュウ」の思い出はおぼろげですが、周囲の話ではほぼ純血種で、猟犬出身で黒っぽく、お世辞にも美犬ではなかったけど、それはそれは賢かったそうです。夏に田舎に預けられた私が退屈して庭から出ようとすると、「リュウ、まきが出てくぞ、ついていけ」の命令で幼い私にピタッと寄り添い、田んぼや小川のふちで遊ぶのを落ちないように「見張って」いました。帰り道を間違えないよう、振り返り、振り返りして先導してくれたベビーシッター犬でもあります。このリュウの子か孫が、総理大臣賞をもらったと後で聞かされました。
次の記憶は猫の「マリ」で、2軒隣の飼い猫なのに、新来の猫とそりがあわずにプチ家出を繰り返し、そのうち我が家の食客になりました。昨今の「食って寝て、着るだけのペット」と違って、えらく義理堅いところがあり、3日に一度は天井裏を点検して、ときにネズミをくわえてきて「ねぇ、みてみて」と得意そう。炭火の堀コタツが大好きで、もぐりこんでうたた寝しては、酸欠になってフラフラして出てきました。ケガがもとで、初めてかかった獣医さんのところで死去。号泣。
そのあと何度、捨て犬、捨て猫を拾ってきたことでしょう。そのたびに親に叱られて捨ててあった箱に戻しにいったり、仲間たちと飼ってくれそうな家を探してまわり、そのうち日が暮れて猫を抱いたままベソをかいたり…。冷蔵庫がなかった時代、あのころは贅沢品だった牛乳を少額のおこづかいでは買えないまま、子猫を死なせてしまってみんなで号泣したこともありました。いま思いだしても鼻の奥が熱くなります。
有名になった「エレベーター出勤猫ちゃん」
そのことがまたまたトラウマになったのか、野良ネコに出会うと素通りできないんですネ。特に飢えていそうだとコンビニに飛び込んでペット缶を買って駆けもどり、「ほら、お食べ」。きっと同じようなトラウマの人がいるらしく、今の住まいの近くには餌付けをした「地域猫」が大勢おりました。なかでも秀逸だったのが「エレベーターで通勤するパートタイム・ペット」、週刊朝日に写真入りで載ったトラちゃんでしょう。
前身はあきらかに良家の飼いネコだったと思われる行儀良さで、部屋に入れても間違っても椅子をガリガリ、食卓の上の魚をヒョイと失敬するなんて「はしたない真似」はしません。出されたペット缶や残り物だけを食べ、1時間ほど無防備に眠ってさっと「帰って」いきます。あまたいる野良ネコの中で、住民といっしょに悠々とエレベーターに乗り込み、階段で移動をしないのは、太り気味のトラちゃんだけでした。
ただし猫手ではエレベーターのボタンまで押せませんから、じっと階数板を眺め,止まった階の「行きつけ」の家にまっしぐら。14階もあるのによく間違わないものだと感心しますが、めざす家の前でお座りして待つことしばし。通りがかりの誰かがドアチャイムを押してくれ、「はーい」の声に「にゃあん!」と返事をして入れてもらっておりました。
この猫ちゃん、何軒もの家を目的別に使い分けていたらしく、「うちでは最高級のペット缶しか食べなかった」「いつも夜に来て眠るだけ。朝ご飯は食べずに出て行った」「ときどき主人がお風呂に入れてやったのよ」「フラリと来た時は犬用のビーフジャージーを欲しがった」そうで、我が家では「安物のいわし缶が大好物」でしたから、トラちゃんにしてみれば美食が続いた後のダイエットレストランだったのかもしれません。
一度などは白い雌猫を連れてきて、「どう?この家の味も素朴でいいだろ?」ってな雰囲気で会食していましたネ。近くの大規模工事が終了し、飯場が引き払われたときにトラちゃんもいっしょに引っ越したという噂。ひそかな楽しさが減って、懐かしいような、損をしたような気分でした。
前身はあきらかに良家の飼いネコだったと思われる行儀良さで、部屋に入れても間違っても椅子をガリガリ、食卓の上の魚をヒョイと失敬するなんて「はしたない真似」はしません。出されたペット缶や残り物だけを食べ、1時間ほど無防備に眠ってさっと「帰って」いきます。あまたいる野良ネコの中で、住民といっしょに悠々とエレベーターに乗り込み、階段で移動をしないのは、太り気味のトラちゃんだけでした。
ただし猫手ではエレベーターのボタンまで押せませんから、じっと階数板を眺め,止まった階の「行きつけ」の家にまっしぐら。14階もあるのによく間違わないものだと感心しますが、めざす家の前でお座りして待つことしばし。通りがかりの誰かがドアチャイムを押してくれ、「はーい」の声に「にゃあん!」と返事をして入れてもらっておりました。
この猫ちゃん、何軒もの家を目的別に使い分けていたらしく、「うちでは最高級のペット缶しか食べなかった」「いつも夜に来て眠るだけ。朝ご飯は食べずに出て行った」「ときどき主人がお風呂に入れてやったのよ」「フラリと来た時は犬用のビーフジャージーを欲しがった」そうで、我が家では「安物のいわし缶が大好物」でしたから、トラちゃんにしてみれば美食が続いた後のダイエットレストランだったのかもしれません。
一度などは白い雌猫を連れてきて、「どう?この家の味も素朴でいいだろ?」ってな雰囲気で会食していましたネ。近くの大規模工事が終了し、飯場が引き払われたときにトラちゃんもいっしょに引っ越したという噂。ひそかな楽しさが減って、懐かしいような、損をしたような気分でした。
愛犬への説得で社説が書けちゃう効用
次回は、3月26日(金)掲載予定です。
(2010年3月12日)
- お知らせ
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宮本まき子先生の新刊本が、12月16日、PHP研究所より出版されました。
「自分も幸せになる「姑道」十カ条」
ご注文の際は、直接出版元にお問い合わせください。
※書店でのお取り扱いはありません
ご連絡先 : PHP研究所 通販普及課 マナビカ係 075-681-8818
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