第24回　再就職に向けてのキャリアカウンセリング

　Ｆさんは、今年の３月で定年退職を迎えます。40年間警察官として働いてきました。Fさんは、退職後も仕事をしたいと思っていたのですが、まだ次の仕事が見つかっていません。
　例年なら、１月くらいになると、ほとんどの先輩警察官は警備保障会社とか自動車学校などから職員募集の情報が入ってくるのですが、今年は１件もないのです。同期の仲間たちも不安を隠せない情況です。警察官は地方公務員共済組合から年金が給付されますが、Ｆさんたちの世代は65歳にならないと満額はもらえません。

　再就職の仕事が来ない理由の１つは不況のせいです。企業が人件費を削減しているからです。もう１つは、２年前に団塊の世代が大量に定年退職し、さまざまな仕事に就いてしまったために、その余波が来ているのです。
　そんなことから、Ｆさんは最近では、自分で仕事を見つける覚悟を決めました。
　「今までのキャリアを生かしたい」
　それにはどうすればいいか。Ｆさんはキャリアカウンセリングを受けることにしました。

　カウンセラーは、Ｆさんとしっかり向き合い、Fさんの要望や思いに耳を傾けました。Fさんは、交通指導課で長く仕事をしてきた経験があります。また生活安全課でも、地域住民に対してアドバイスや相談に乗ってきました。
　Ｆさんは、今までのキャリア、性格、仕事の興味などから、“人間関係にかかわる仕事をしたい”という結論を出しました。
　カウンセラーは、指導や教育、相談を主とする仕事や職場に関するリストを作成しました。交通の便などを考慮し、30ほどの会社がリストアップされ、そのなかで仕事のイメージや自分が大切にしたいこと、職種や仕事の仕方についてこれだけは譲れないと思うこと、給料や労働条件そして将来性、能力開発などの可能性について分析し、Ｆさんの希望と合致させました。
　その結果、５つの会社が絞り込まれ、採用面接に出かけることになりました。そして、ついに安全教育を実施している会社の講師の仕事をゲットすることができました。
　Ｆさんは、４月から始まる新しい仕事の中身について、今は猛勉強している最中です。不安な気持ちはもちろんありますが、それ以上にやりがいのありそうな仕事だと感じています。このような信頼感の形成もキャリアカウンセリングの裏打ちがあったからだと思っています。


　けあサポの連載は、今回を持ちまして終了です。１年間本当にありがとうございました。定年退職を迎えてからの長い時間をどう過ごすか、その時間の使い方や生き方が問われる時代になってきました。ご自身の納得の行く過ごし方が実現できるように、切三に願っております。