第22回 裁縫に生きがいを見出したTさん
退職間際にふと頭をよぎった思い
Tさん(57歳・女性)は、長い間、公立学校の教師として働いてきました。仕事をしながら、二人の子どもも育て上げ、退職を目前に控えています。
教師の仕事はデスクワークとは異なり、子どもたち一人ひとりと向き合う必要があります。それが喜びでもあり、逆にストレスにもなります。さらに、家に帰っても自分の子どもたちの教育や日常の面倒を見なければならず、体力的にかなりきつい毎日だったと振り返ります。
しかし、Tさんは職場でも家庭でも必要とされ、認められてきたと思ってきたため、充実感があったといいます。
教師の仕事はデスクワークとは異なり、子どもたち一人ひとりと向き合う必要があります。それが喜びでもあり、逆にストレスにもなります。さらに、家に帰っても自分の子どもたちの教育や日常の面倒を見なければならず、体力的にかなりきつい毎日だったと振り返ります。
しかし、Tさんは職場でも家庭でも必要とされ、認められてきたと思ってきたため、充実感があったといいます。
不安感に苛まれたTさんを救ったのは…
ところが、「定年退職」の四文字が次第に大きくなってきたこの頃、Tさんは次第に落ち着かなくなりました。
「このまま退職を迎えたら、自分はからっぽになってしまう」
そんなことを考えはじめ、不安感に苛まれるようになりました。また、どうしてよいかわからなくなり、頭の中が混乱してしまうこともあるといいます。
そんなある日、たまたま旅行先の街を歩いていたTさんの目に飛び込んできたものがありました。それは、昔懐かしい絣(かすり)の布地を売っているお店でした。ふと、足を止め、何かに憑かれるように店に入っていくと、なんともいえないお香の香りと絣の不思議な世界に包み込まれていました。
Tさんは、一枚の小さな布地を何枚も縫い合わせていくことによって、なんでも作っていくことができる楽しさをそこで知りました。気がつくと、たくさんの絣の布地を買い込んでいました。
それからというもの、Tさんは絣を用いて様々なものを作り始めたのです。羽織、小物入れ、テーブルクロス、座布団カバ−等々。
「このまま退職を迎えたら、自分はからっぽになってしまう」
そんなことを考えはじめ、不安感に苛まれるようになりました。また、どうしてよいかわからなくなり、頭の中が混乱してしまうこともあるといいます。
そんなある日、たまたま旅行先の街を歩いていたTさんの目に飛び込んできたものがありました。それは、昔懐かしい絣(かすり)の布地を売っているお店でした。ふと、足を止め、何かに憑かれるように店に入っていくと、なんともいえないお香の香りと絣の不思議な世界に包み込まれていました。
Tさんは、一枚の小さな布地を何枚も縫い合わせていくことによって、なんでも作っていくことができる楽しさをそこで知りました。気がつくと、たくさんの絣の布地を買い込んでいました。
それからというもの、Tさんは絣を用いて様々なものを作り始めたのです。羽織、小物入れ、テーブルクロス、座布団カバ−等々。
退職が楽しみになったTさん
と、周りは心配し、“おせっかい”の一瞥を投げる人もいます。
でも、Tさんは、一人きりの世界に浸っていることができ、しかも物が出来上がっていく過程は他に代えがたい喜びだと思っています。そして、出来上がったものを親しい人や身近な人にプレゼントする嬉しさもあります。
今や、定年退職はTさんにとってなんの不安でも恐怖でもなくなってきました。帰りが遅い夫のことも全く気にならなくなりました。
むしろ、「好きな裁縫に没頭できる毎日が来る」そう思い、退職する日がとても楽しみと考えるようになりました。
次回は2010年2月16日(火)、更新予定です。
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