第4回 がんになったYさんの胸のうち
うちの娘が不倫、妊娠だなんて……
Yさんが体調の異変に気づいたのは、定年退職してちょうど1年が過ぎた頃でした。退職前後の数年は慌ただしく、妻も2年半ほど前から高齢の父の介護で東京と静岡の実家を行き来する毎日で、家も留守がちだったのです。
同じ頃、幼い頃からいい子で通ってきた長女が妻子ある上司と不倫関係になり、妊娠騒動を起こしてしまいました。「どうしても産みたい」と家出までして抵抗する娘を、Yさん夫婦は必死で説得し、どうにか産むことを思いとどまらせたのでした。その後、長女は上司と別れ、会社も辞めてしまいました。その結果、ひきこもり状態になったのです。
同じ頃、幼い頃からいい子で通ってきた長女が妻子ある上司と不倫関係になり、妊娠騒動を起こしてしまいました。「どうしても産みたい」と家出までして抵抗する娘を、Yさん夫婦は必死で説得し、どうにか産むことを思いとどまらせたのでした。その後、長女は上司と別れ、会社も辞めてしまいました。その結果、ひきこもり状態になったのです。
体調の異変は食道がん
状況を考えると、とてもお祝いするような心境にはなれませんでした。その頃から、痰がからんだり、声が出にくくなったのです。最初は風邪でもひいたのかと思っていたのですが、症状が長引くので病院で検査をしたところ、食道がんが見つかったのでした。
「私がもっと早く気づいてあげればよかった」
Yさんの妻は自責の念に駆られました。父の介護で家を空けたり、娘のトラブルで、夫には注意がいかなかったというのです。しかし、嘆いてばかりもいられず、一刻も早く手術をということになり、バタバタと入院することになりました。
がんの再発、そして……
幸い、手術は成功し、Yさんの生活も落ち着きを取り戻しました。ところが、半年後の定期検査で再び胃や腸にがんが見つかってしまったのです。Yさんは、絶望のどん底に突き落とされました。
すぐに再入院の日取りと手術の段取りは整ったのですが、Yさんの気持ちは後ろ向きのままでした。
再入院日が2日後に迫ったある日、Yさんはマンションの7階から飛び降りて自殺を図ってしまったのです。残された遺書には、「申し訳ない。これ以上、迷惑をかけたくない」という言葉が書かれていました。
すぐに再入院の日取りと手術の段取りは整ったのですが、Yさんの気持ちは後ろ向きのままでした。
再入院日が2日後に迫ったある日、Yさんはマンションの7階から飛び降りて自殺を図ってしまったのです。残された遺書には、「申し訳ない。これ以上、迷惑をかけたくない」という言葉が書かれていました。
病気をどう受け止めるか
Yさんにとって、がんの再発は最大のストレスを与えたといえます。しかし、筆者の知人でがんの精神療法に携わっている大学教授は、「患者ががんをどのような病気と受け止めるかによって、その人の健康観や日常生活の有無が決まる」と言います。
例えば、がんという病気からさまざまなことを学び取ったり、がん細胞と一緒にゲラゲラ笑ったりすることができる人は、日常生活に幸福も見出し、結果的にも延命につながるというのです。
確かに、そのようにプラス思考になれる人にはがんもとりつかないような気がします。
そういう人は、いざとなれば、病気も死も受け止められる人かもしれません。
例えば、がんという病気からさまざまなことを学び取ったり、がん細胞と一緒にゲラゲラ笑ったりすることができる人は、日常生活に幸福も見出し、結果的にも延命につながるというのです。
確かに、そのようにプラス思考になれる人にはがんもとりつかないような気がします。
そういう人は、いざとなれば、病気も死も受け止められる人かもしれません。
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