第6回 糖尿病教室で出会った仲間との交流
退職後の夢を砕いた言葉
「血糖値に問題がありますね。ヘモグロビンA1cの値がとても高いですね。糖尿病の疑いがあります。すぐに再検査しましょう」
退職を目前にした健康診断で言われた医師の言葉に、Sさん(59歳男性)はショックを受けました。
Sさんには退職後の夢があったからです。それは世界一周旅行。そのためにコツコツと貯金もしてきました。
「これから楽しもうというときに、なんで……」Sさんは悔しくてたまりませんでした。若い頃はスポーツマンでならしたSさんだったのですが、ここ数年は長時間労働につき、そうでない日は接待や飲み会といった毎日が続いていたのでした。ついつい食べ過ぎたり飲み過ぎたりすることが多かったのです。
「あなたが退職したら旅行できるのね」何も知らない妻は、Sさんの退職を心待ちにしているようで、Sさんの口からは糖尿病のことは言い出せませんでした。
退職を目前にした健康診断で言われた医師の言葉に、Sさん(59歳男性)はショックを受けました。
Sさんには退職後の夢があったからです。それは世界一周旅行。そのためにコツコツと貯金もしてきました。
「これから楽しもうというときに、なんで……」Sさんは悔しくてたまりませんでした。若い頃はスポーツマンでならしたSさんだったのですが、ここ数年は長時間労働につき、そうでない日は接待や飲み会といった毎日が続いていたのでした。ついつい食べ過ぎたり飲み過ぎたりすることが多かったのです。
「あなたが退職したら旅行できるのね」何も知らない妻は、Sさんの退職を心待ちにしているようで、Sさんの口からは糖尿病のことは言い出せませんでした。
厳しい食餌制限が気分を暗くする
再検査の結果もやはり糖尿病。選択肢は「入院」か「通院しながらの食事・運動療法」かの2つに1つ。いずれにしても妻の協力は不可欠と判断し、本当のことを言わざるを得なくなりました。意外にも妻はショックを受けた様子はなく、すぐに食餌の研究を始めました。
Sさんは、病院の「糖尿病教室」に通いながら食事・運動療法を行い、病気と向き合う態度を固めました。しかし現実には、厳しい食餌制限に堪えました。今まで大好物だったステーキやとんかつのから揚げなどは制限され、ビールなどのアルコール類もほとんどあきらめなければならなかったのです。野菜中心の軽めの食事が続き、空腹感との戦いの毎日です。それが、Sさんの心を暗くしました。
Sさんは、病院の「糖尿病教室」に通いながら食事・運動療法を行い、病気と向き合う態度を固めました。しかし現実には、厳しい食餌制限に堪えました。今まで大好物だったステーキやとんかつのから揚げなどは制限され、ビールなどのアルコール類もほとんどあきらめなければならなかったのです。野菜中心の軽めの食事が続き、空腹感との戦いの毎日です。それが、Sさんの心を暗くしました。
なぜ楽しみのない暮らしに……
仲間に、「退職祝いをやろう」「同期会があるけど行く?」と誘われて出かけても、Sさんはそれを楽しむことができません。Sさんはいつも「飲めない身体なのですまん」と言って断るのです。
楽しみの少ない暮らしにイライラすることも多々ありました。しかしそのイライラを運動に転化して、情緒の安定をはかる努力もしました。きちんと治療しないと、網膜症や腎症、神経障害といった合併症を引き起こし、さらには動脈硬化も起こしかねなくなります。治療やケアをおろそかにすることはできませんでした。
楽しみの少ない暮らしにイライラすることも多々ありました。しかしそのイライラを運動に転化して、情緒の安定をはかる努力もしました。きちんと治療しないと、網膜症や腎症、神経障害といった合併症を引き起こし、さらには動脈硬化も起こしかねなくなります。治療やケアをおろそかにすることはできませんでした。
仲間との出会いが活きる活力に
はじめはメールのやりとりなどをしていたのですが、次第に直接会う機会も多くなり、糖尿病への思いや家族との会話、食事や運動療法の状況などについて、情報を共有するようになりました。
Sさんは「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」と思えるようになり、元気をもらうのです。食事や運動をなんとかコントロールしつつ、いかに楽しく生きるか、それがSさんのメインテーマになっています。
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