第21回 定年後に「メンター」になって生きがいを見出したFさん
メンター制度の活用で相互に成長を
「メンター」とはギリシャ語で「良き指導者」の意味。メンター制度は、アメリカで始まったとされ、メンターが若年者や未熟な訓練者と継続的に交流し、信頼関係をつくり、仕事や勉強などの活動の支援を行い、お互いに精神的な成長ができるように伴走者になることです。最近、日本でもメンター制度が導入され、企業や自治体などでも少しずつ広まっています。
不登校の中学生に対する支援
広島市在住のFさん(61歳・男性)は、退職後、メンターとしてボランティア活動をしています。Fさんは退職後、新たに仕事を探すつもりはありませんでした。でも、何かやりたいという気持ちはあったのです。
そんなとき、市役所でメンター募集のチラシを見たのでした。興味をもったFさんはさっそく応募し、研修を受け、メンターとして市に登録されました。
しばらく何の連絡もなかったのですが、最初に依頼された活動は、中学2年生の少年の母親からのものでした。少年は中学に入った頃からいじめられ、傷つけられることへの恐怖から不登校状態になっているとのことでした。今では自室にこもりっぱなしで、家族とも口を聞かず、昼夜逆転の生活をしているといいます。
そんなとき、市役所でメンター募集のチラシを見たのでした。興味をもったFさんはさっそく応募し、研修を受け、メンターとして市に登録されました。
しばらく何の連絡もなかったのですが、最初に依頼された活動は、中学2年生の少年の母親からのものでした。少年は中学に入った頃からいじめられ、傷つけられることへの恐怖から不登校状態になっているとのことでした。今では自室にこもりっぱなしで、家族とも口を聞かず、昼夜逆転の生活をしているといいます。
繰り返しの訪問で少年の心が動いた
Fさんは、早速、少年の自宅を訪問したのですが、少年は部屋から出てくる様子はありませんでした。1回目はドア越しに声をかけてみたものの反応はありません。Fさんは部屋の外でご両親と3時間ほど話をした後、帰るしかありませんでした。
2回目に訪問したときに、少年は一度は返事はしてくれたのですが、やはり出てくる気配はありませんでした。そのときFさんは思いました。
「こんなことをやってどんな意味があるのだろうか」
でも、市役所の担当者に励まされながら、訪問を繰り返しているうちに、ついに6回目で、少年はFさんを部屋に入れてくれたのでした。そのとき、Fさんは感激したと言います。
2回目に訪問したときに、少年は一度は返事はしてくれたのですが、やはり出てくる気配はありませんでした。そのときFさんは思いました。
「こんなことをやってどんな意味があるのだろうか」
でも、市役所の担当者に励まされながら、訪問を繰り返しているうちに、ついに6回目で、少年はFさんを部屋に入れてくれたのでした。そのとき、Fさんは感激したと言います。
メンターで得られる充実した気持ち
「メンターのおじさん、僕、本当は学校に行きたいんだ。でも、きっかけがつかめなくって……」
Fさんには少年が葛藤してしまう気持ちがよく理解できたといいます。
「おじさん、僕、ちょっと疲れた」
「そうか。今日はこのくらいにしよう。また来るから。おじさんは君に会えてよかった」
そう言って、Fさんは家路についたのですが、その日はいつになく爽快感でいっぱいだったといいます。
次回は2010年1月12日(火)、更新予定です。
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武藤清栄先生が所長を務める東京メンタルヘルスアカデミーのホームページは、こちらからご覧になれます。
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