第8回 よくある熟年夫婦の離婚話
突如切り出された“離婚”
Nさん(61歳男性)は、妻としばらく口を聞いていません。むしろ、口を聞かないことがNさんの生活の原動力になっていました。
Nさんは、区役所を定年退職してから、突如、妻に「別れてほしい」と切り出されたからでした。それも20年も前から考えていたというのです。妻が言うには、Nさんは外面ばかり良く、内面が悪いというのです。例えば、家族で楽しみにしていた旅行や子どもたちの行事があっても、仕事で追い詰められたり、親戚の泣き寄りがあると、決まって家族を犠牲にし、そちらを優先するというのです。
「仕方ないだろう」それがNさんの口癖でした。
そして自分の気持ちを語ることもなければ、妻や家族の思いを聞くこともなかったというのです。妻にしてみれば、その積み重ねが大きな不満となってうっ積していたということになります。
Nさんは、区役所を定年退職してから、突如、妻に「別れてほしい」と切り出されたからでした。それも20年も前から考えていたというのです。妻が言うには、Nさんは外面ばかり良く、内面が悪いというのです。例えば、家族で楽しみにしていた旅行や子どもたちの行事があっても、仕事で追い詰められたり、親戚の泣き寄りがあると、決まって家族を犠牲にし、そちらを優先するというのです。
「仕方ないだろう」それがNさんの口癖でした。
そして自分の気持ちを語ることもなければ、妻や家族の思いを聞くこともなかったというのです。妻にしてみれば、その積み重ねが大きな不満となってうっ積していたということになります。
爆発した妻の本音
親戚がみんな帰った後、なぜかNさんは思いもよらぬ言葉を口に出してしまったというのです。
「お前は俺の気持ちを何一つ察してくれなかった。叔父や叔母たちも同じことを言っていた」
Nさんの妻は最初何を言われているのか理解に苦しんだと言います。でも、食事の後片づけをしているうちに、夫に責められていたことに気づいた途端、ムラムラと怒りの感情が湧いてきて、限界に達したと言います。
「気に入らない女房と、これ以上顔を突き合わせているのも大変でしょ。私も20年前から一人で暮らしたいと思っていたの。別れましょう」
妻は、いとも簡単に言ってのけたのですが、Nさんには、それが本音であると読み取れたそうです。2日後には、離婚届の用紙も用意されていたそうです。
Nさんに訪れた気持ちの変化
当惑したNさんは、たまたま新聞記事で知った「夫婦の和解力講座」に参加しました。
そこには10数名の男女がいて、男女1名ずつ、「ファシリテーター」(話し合いを促進する援助者)と呼ばれる人がいました。
そしてそのメンバーのなかに、Nさんとよく似た体験を持つ男性がいたのです。その男性に対してある50代の女性が次のように訴えたのです。「気持ちは飲み込んじゃダメ。言葉に染みらせることなの。どんなに立派な人でも飲み込んでは伝わらないわ。むしろケンカのほうが大事なのよ。これからが始まりよ。私もそれで失敗したんだから」。
振り返ってみると、確かにその女性が言ったことは、腑に落ちるものでした。「どちらに転んでも構わない。まず妻に自分の気持ちを伝えてみよう。それに今なら妻の批判や攻撃も受け止めてやれそうだ」Nさんはそう決心して、家路に着いたのでした。
そこには10数名の男女がいて、男女1名ずつ、「ファシリテーター」(話し合いを促進する援助者)と呼ばれる人がいました。
そしてそのメンバーのなかに、Nさんとよく似た体験を持つ男性がいたのです。その男性に対してある50代の女性が次のように訴えたのです。「気持ちは飲み込んじゃダメ。言葉に染みらせることなの。どんなに立派な人でも飲み込んでは伝わらないわ。むしろケンカのほうが大事なのよ。これからが始まりよ。私もそれで失敗したんだから」。
振り返ってみると、確かにその女性が言ったことは、腑に落ちるものでした。「どちらに転んでも構わない。まず妻に自分の気持ちを伝えてみよう。それに今なら妻の批判や攻撃も受け止めてやれそうだ」Nさんはそう決心して、家路に着いたのでした。
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