第12回　新たなビジネスに挑戦したJさんのその後

　定年退職後、退職金をつぎ込んで新たに「カフェ」を開店したJさん。
　自分の店をもつのが長年の夢だったJさんにとって、エキサイティングな毎日がスタートしました。しかし、実際に始めてみると、客がつかなかったり、雇ったアルバイトが定着せずに辞めたり、Jさんの妻が病気になるなどの問題が次々発生し、大変なことになったのです。
　それに加え、資金繰りにも苦労する日々が続きました。そのうちJさんは、自分の友達に借金を頼み歩くようになっていました。そのためか、友人も次々と離れていく始末。最後は店をたたまなければならなくなり、自己破産する事態となってしまったのです。

　家財もすべて没収され、債権者に渡されてしまいました。妻や子どもたちとも否応なく別居せざるを得なくなり、Jさんは１人でアパート暮らしをしている状態です。
　Jさんは悔やんでいます。店は出したものの、営業活動や市場調査をしっかりやらなかったことで失敗したこと、また宣伝やメニューの工夫にも手を抜いたことなどを反省しているのです。そして何よりも、それまでやっていた自分のサラリーマン時代が嫌でたまらず、その反動で店を出してしまったという安易な動機についても語りました。

　定年退職を迎え、新たな人生に挑戦する人は少なくありません。
　しかしその際、退職後の人生を考えるとき、今までどんな生き方をしてきたかということも重要です。サラリーマン時代に仕事での評価が高く、人脈やネットワークも豊かな人は、定年退職した後もそれを活用し、商売も上手くやることができます。
　なかには、Jさんのように嫌なことから早く抜け出したいという気持ちが原動力になり第２の人生を踏み出す人もいます。そういうときに大事なことは、市場調査や営業、PR等はもちろん大切ですが、自分自身のキャリアについても振り返る必要があります。
　今まで自分がやりたかったこと、我慢してきたこと、自分を縛ってきたこと、会社や家族で担ってきた役割等について自己分析することです。場合によっては、キャリアカウンセリングを受けてみるのもおすすめです。
　そうするとそこには、今まで気づかなかった新たな自分を発見することがあり、第２の人生をスタートするのにとても役立つことがあります。

　次回は８月11日（火）、更新予定です。