第72回 (最終回) 「後世に負担を残さず」の心意気
3年間でこんなに変わるなんて…
連載が始まった2008年は天皇即位20周年や森光子さんが国民栄誉賞を受けたなどといったニュースが並ぶ「のどかな」時代であります。
2009年は民主党が選挙に圧勝し、鳩山政権が樹立しました。「あれもやります、これもやります」サービスてんこ盛りマニュフェスト公約に、一瞬、日本中がバラ色の幻想に酔いしれた「いじらしい」時代でしたね。
2010年はいきなりJALが破たんし、6月には鳩山政権が「軽すぎて」あっけなくぽしゃり、9月には大阪地検特捜検事が証拠品のフロッピーディスクを改ざんしていたことがバレバレ。信頼していた司法、行政の二大カナメがガタガタと音を立てて崩壊していくありさまに、しばし呆然としたものです。
「こんなことがあり得るはずがない!!!」と絶叫した極め付けが2011年の東日本大震災での津波と、東京を無人の町にする寸前だったという原発事故。たった3年で、のほほんと「それなりに優雅なリタイア生活」を夢見た団塊世代はしばし立ち止まり、思考回路を大改造をせざるを得なくなりました。
「私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」のプチ哲学的発想から、ヒトまかせ、運まかせ、お天道様まかせのいい加減さはなかったか?をつくづくと反省させられる日々であります。
意外としぶとくしなやかだった団塊世代男たち
この3年間でおおかたの予想を裏切ったのは、団塊の世代の男たちに定年退職後の大量粗大ごみ化現象がおきなかったことでしょう。意外とすんなりと家庭人に回帰し、ネットで何やら連絡しあったり、町内会やPTAの役員を買って出たり、スポーツセンターの常連になったり、ちょこっとパートタイムしたり、大学やカルチャーセンターの聴講生になったりと、元気に再デビューを果たしました。戦前世代とはほんの少しの年齢差なのに、さとい戦後世代は「粗大ごみ、ぬれ落ち葉予備軍への妻のダメだし」の空気を読み取って自己防衛に走ったのでしょう。
もともと団塊の世代は、家にこもって食卓に座ってご飯が出てくるのをじっとまっている「忠犬タイプ」より、ほっとかれたほうが気楽な「野良猫タイプ」が多いのと違うかしらン。物心ついたころにはチキンラーメン、自分で稼げる頃にはハンバーガーなどのファーストフード店があったらか、小腹がすけばさっさと町に出てしまう。退屈すればインターネットで検索し、無料のおもしろそうなイベントを見つけてはせっせと出かけて行く好奇心とフットワークの良さがあります。
公民館講座の「男の料理教室」にハマって調理師学校に転入、つんのめって中国に短期留学し、「手作り餃子名人」となって料理の先生になった人もいれば、夜中の帰宅にもひとり玄関に出迎えてくれた愛犬可愛いさでトリマーの勉強を始め、ついには獣医の手伝いをするようになった人もいました。「男の晴れ舞台を降りる」のに抵抗がないどころか、「フフフ…実はこんなこともできましてね」とちょっぴり誇らしげ。この変わり身の早さこそ、団塊の世代の真骨頂と言えるでしょう。
ひと山いくらだった団塊の女性たちが打たれ強いように、団塊の男性たちもしぶとくしなやかだったんですねぇ。このままリタイアさせるのはもったいない。再利用しない手はありません。
もともと団塊の世代は、家にこもって食卓に座ってご飯が出てくるのをじっとまっている「忠犬タイプ」より、ほっとかれたほうが気楽な「野良猫タイプ」が多いのと違うかしらン。物心ついたころにはチキンラーメン、自分で稼げる頃にはハンバーガーなどのファーストフード店があったらか、小腹がすけばさっさと町に出てしまう。退屈すればインターネットで検索し、無料のおもしろそうなイベントを見つけてはせっせと出かけて行く好奇心とフットワークの良さがあります。
公民館講座の「男の料理教室」にハマって調理師学校に転入、つんのめって中国に短期留学し、「手作り餃子名人」となって料理の先生になった人もいれば、夜中の帰宅にもひとり玄関に出迎えてくれた愛犬可愛いさでトリマーの勉強を始め、ついには獣医の手伝いをするようになった人もいました。「男の晴れ舞台を降りる」のに抵抗がないどころか、「フフフ…実はこんなこともできましてね」とちょっぴり誇らしげ。この変わり身の早さこそ、団塊の世代の真骨頂と言えるでしょう。
ひと山いくらだった団塊の女性たちが打たれ強いように、団塊の男性たちもしぶとくしなやかだったんですねぇ。このままリタイアさせるのはもったいない。再利用しない手はありません。
老後は後世の活性化のために自主自立して
その時代の空気が読める団塊の世代が「3・11」以降、あちこちで言い始めたのが「わが時代の始末はわが世代でやって、後世に負担を残さず」ということ。復興費や赤字国債等のツケを若い世代にまわさず、自分たちが背負えるだけ背負おうではないかという発案です。「エッ?!」と身構えずに、ここは冷静に向き合ってみませんか?
実際、気が遠くなるような費用の予想額や、これまでの国債や借入金が943兆8096円、国民一人当たり738万円の借金と聞けば「このあとの日本は大丈夫か?」と落ち込んでしまいそう。政治家や官僚にまかせておけば「何とかなる」と楽観視して、問題解決を先送りや放置してきた上の世代に文句を言おうにも、そちらはそちらで「自分たちは戦後の復興をして十分働いた。老後にのんびりしてどこが悪いか」と正論で来るから、ぐうのネもでない。しかも、老後の扶養と介護は「子の務め」と信じて疑わない最後の世代でもあります。おそらく団塊の世代は自分で親を看とろうとする最後の子どもたちでしょう。
先日の新聞の投書欄で、30代の若者が「(選挙の票目当てに)政府は何かと言えば老人と子どもの為にと言うが、日々汗水たらして働く若い世代の為の政策は後回しなのか?」と悲鳴をあげていました。非正規雇用や減収に苦しむ若者たちにすれば、団塊の世代こそ、恐怖の「イナゴ的高齢者」予備群なのであります。その空気も読めていますか?
「自分たちの世代からは、老後の扶養と介護の重責を子どもや壮年世代に頼ることをやめよう。アタマも心も体もしっかりしている今のうちから、自主自立の老後計画をしっかりたてる。自分たちの老後の負担が減るだけでも次に来る社会は活性化する」と団塊の世代が腹をくくればいいだけのことです。具体的な手立てをこのあと5年、10年かけていくつか考えだして実現し、後世にモデルケースとして残していく。それが団塊の世代がボケるまでの時間を最大限に活用してできる「社会への恩返し、次の世代への子孝行」のような気がします。
がんばろう、ニッポン!できる範囲でいいからがんばろう、団塊世代!
実際、気が遠くなるような費用の予想額や、これまでの国債や借入金が943兆8096円、国民一人当たり738万円の借金と聞けば「このあとの日本は大丈夫か?」と落ち込んでしまいそう。政治家や官僚にまかせておけば「何とかなる」と楽観視して、問題解決を先送りや放置してきた上の世代に文句を言おうにも、そちらはそちらで「自分たちは戦後の復興をして十分働いた。老後にのんびりしてどこが悪いか」と正論で来るから、ぐうのネもでない。しかも、老後の扶養と介護は「子の務め」と信じて疑わない最後の世代でもあります。おそらく団塊の世代は自分で親を看とろうとする最後の子どもたちでしょう。
先日の新聞の投書欄で、30代の若者が「(選挙の票目当てに)政府は何かと言えば老人と子どもの為にと言うが、日々汗水たらして働く若い世代の為の政策は後回しなのか?」と悲鳴をあげていました。非正規雇用や減収に苦しむ若者たちにすれば、団塊の世代こそ、恐怖の「イナゴ的高齢者」予備群なのであります。その空気も読めていますか?
「自分たちの世代からは、老後の扶養と介護の重責を子どもや壮年世代に頼ることをやめよう。アタマも心も体もしっかりしている今のうちから、自主自立の老後計画をしっかりたてる。自分たちの老後の負担が減るだけでも次に来る社会は活性化する」と団塊の世代が腹をくくればいいだけのことです。具体的な手立てをこのあと5年、10年かけていくつか考えだして実現し、後世にモデルケースとして残していく。それが団塊の世代がボケるまでの時間を最大限に活用してできる「社会への恩返し、次の世代への子孝行」のような気がします。
がんばろう、ニッポン!できる範囲でいいからがんばろう、団塊世代!
おまけのお話
アタクシが20年前から考えていた自分の老後構想です。
我が家は大型分譲マンションの4LDK、800世帯が全部同じ間取り。だから、8棟のうちまず1棟を食事や監護つきの老人棟にリフォームして、いよいよ一人暮らしはヤバいという希望者は自宅と交換してそちらに移ってもらう。棟の1Fはデイサービスセンターにして、好きなときに自宅から車椅子で通い、好きなときに昼寝に戻ってOK。三食と入浴をスタッフに手伝ってもらえば、栄養と清潔を保ちながら在宅で暮らせるケースがほとんどだと専門家は言う。そのセンターには美しい緑や花のあふれる中庭に出入り自由の大きなウッドデッキを設置。子どもたちも勝手に入って来るオープンスペースにして、住民全体の交流の場にする。原則的に近くのショッピングセンターや駅にも外出可で、外部の刺激もある。調理や介助のスタッフはマンション内の住人に頼み、その費用はあの世まで持っていけない「生き銭」で払う。懐がさびしければ、住居の一軒を2〜3人でシェアして、各自、自宅を売却した金を出せばよろしい。スタッフもヘルパーも無料のメードではありません。敢えてボランティアに頼らず、相応の報酬を出して雇用を創出すれば、若者は就職でき、社会に金が流通するはず。
寝たきりになっても、大がかりな医療が必要でなければ、「介護棟」を作って個室を確保し、環境を変えずに生を全うするのが原則。金がある人は全部使い切り、無い人は自宅を売って払いきる。
見慣れた顔ぶれ、見慣れた風景に囲まれて、不平を言わず、「けっこうおもしろい人生だったわ」と微笑んで、子らに精神的、経済的な負担を負わせずに逝く。そんなりんとした生き様の婆さまに、私はなりたい。
今回が最終回です。3年間ご愛読いただきありがとうございました。
我が家は大型分譲マンションの4LDK、800世帯が全部同じ間取り。だから、8棟のうちまず1棟を食事や監護つきの老人棟にリフォームして、いよいよ一人暮らしはヤバいという希望者は自宅と交換してそちらに移ってもらう。棟の1Fはデイサービスセンターにして、好きなときに自宅から車椅子で通い、好きなときに昼寝に戻ってOK。三食と入浴をスタッフに手伝ってもらえば、栄養と清潔を保ちながら在宅で暮らせるケースがほとんどだと専門家は言う。そのセンターには美しい緑や花のあふれる中庭に出入り自由の大きなウッドデッキを設置。子どもたちも勝手に入って来るオープンスペースにして、住民全体の交流の場にする。原則的に近くのショッピングセンターや駅にも外出可で、外部の刺激もある。調理や介助のスタッフはマンション内の住人に頼み、その費用はあの世まで持っていけない「生き銭」で払う。懐がさびしければ、住居の一軒を2〜3人でシェアして、各自、自宅を売却した金を出せばよろしい。スタッフもヘルパーも無料のメードではありません。敢えてボランティアに頼らず、相応の報酬を出して雇用を創出すれば、若者は就職でき、社会に金が流通するはず。
寝たきりになっても、大がかりな医療が必要でなければ、「介護棟」を作って個室を確保し、環境を変えずに生を全うするのが原則。金がある人は全部使い切り、無い人は自宅を売って払いきる。
見慣れた顔ぶれ、見慣れた風景に囲まれて、不平を言わず、「けっこうおもしろい人生だったわ」と微笑んで、子らに精神的、経済的な負担を負わせずに逝く。そんなりんとした生き様の婆さまに、私はなりたい。
今回が最終回です。3年間ご愛読いただきありがとうございました。
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