第2回 虎よ、猫に豹変するでない!
ヒトは歳をとるほど温厚になるのを期待されるけど、それは熱血漢や正義漢が迫力をレベルダウンすることではないと思います。政権のトップでも、深夜の街を巡回する少年育成指導員でも、「お願いですから」と猫なで声でたしなめたところで素直に従う若者たちは少ないでしょう。歳の功で「ベテラン、プロ、鬼、」と呼ばれる人たちなら、ひとにらみで「はい」と言わせるくらいの威厳が備わっていなければおかしいのです。
「俺を信じろ、結果をだせ!」と後進をひきつれてブルドーザーのように突進してきたヒトに、「定年」や「閑職」になったとたん「もう私の出る幕ではない」なんて精神的隠居を決めこまれちゃ困るわけ。あなたが言ってきたこと、やってきたことで人生を変えた人たちもいるんだから、責任を持って「言動一致」を貫いてちょうだい。
「俺を信じろ、結果をだせ!」と後進をひきつれてブルドーザーのように突進してきたヒトに、「定年」や「閑職」になったとたん「もう私の出る幕ではない」なんて精神的隠居を決めこまれちゃ困るわけ。あなたが言ってきたこと、やってきたことで人生を変えた人たちもいるんだから、責任を持って「言動一致」を貫いてちょうだい。
人生のプロは後進に毅然たれ
最近訪れたサンディエゴはメキシコ国境に近く、人種も言葉もバラエティ豊かな町でした。日本と違ってサービス業が必ずしも愛想がいいとは限りません。バスに乗ると巨漢の運転手は笑顔もなく、あごでしゃくって後ろに詰めろと指示します。出発地点から大混雑で、最後に乗りこんだ二人の老婦人はシッカと吊革につかまりました。すると初老の運転手が凄みのある声で、
「おい、そこのカップル、席を立ちな。彼女らを座らせないと出発しないぜ」
と(「プリーズ」抜きで)「命令」したのです。大学生らしい男女があわてて立ちました。思いなしか乗客一同ホッとした空気。
途中のバス停では車体を揺らしながら運転手が降りると、外から「車椅子の人を乗せる、誰か手を貸せ」とこれまた「命令」、屈強な数人が降りて担ぎあげました。座っていた刺青だらけの若者たちを「シッシッ」という仕草で立たせて座席をしまい、あけた空間に車椅子を固定しました。通路が混雑しようが運行時間が遅れようが「ソーリー」の一言もナシ。でも「乗客の安全確保は俺の責任、有無を言わせぬ」という気迫に圧倒され、みんな納得したのだと思います。
ほんの4、50年ほど前、日本中にも気骨あるおっかないジイ様やバア様(そのころの60代はこう呼ばれた)がいて、「出世前の体に傷をこしらえんじゃねぇ」と青年たちのケンカを止めたり、婚礼などの祝儀、葬儀などの不祝儀があれば隣組の若嫁たちをかき集めて裏方を差配していました。「人の倫(みち)とはこういうもの」という毅然としたスタンスの「猫化しない老虎」が組織にも市井にもいたのです。
「虎ってキティちゃんの阪神タイガースバージョンですか?」なんぞと寝ぼけたことを、若い世代に言わせないよう、がんばって吠えましょうね。
「おい、そこのカップル、席を立ちな。彼女らを座らせないと出発しないぜ」
と(「プリーズ」抜きで)「命令」したのです。大学生らしい男女があわてて立ちました。思いなしか乗客一同ホッとした空気。
途中のバス停では車体を揺らしながら運転手が降りると、外から「車椅子の人を乗せる、誰か手を貸せ」とこれまた「命令」、屈強な数人が降りて担ぎあげました。座っていた刺青だらけの若者たちを「シッシッ」という仕草で立たせて座席をしまい、あけた空間に車椅子を固定しました。通路が混雑しようが運行時間が遅れようが「ソーリー」の一言もナシ。でも「乗客の安全確保は俺の責任、有無を言わせぬ」という気迫に圧倒され、みんな納得したのだと思います。
ほんの4、50年ほど前、日本中にも気骨あるおっかないジイ様やバア様(そのころの60代はこう呼ばれた)がいて、「出世前の体に傷をこしらえんじゃねぇ」と青年たちのケンカを止めたり、婚礼などの祝儀、葬儀などの不祝儀があれば隣組の若嫁たちをかき集めて裏方を差配していました。「人の倫(みち)とはこういうもの」という毅然としたスタンスの「猫化しない老虎」が組織にも市井にもいたのです。
「虎ってキティちゃんの阪神タイガースバージョンですか?」なんぞと寝ぼけたことを、若い世代に言わせないよう、がんばって吠えましょうね。
(2008年10月24日)
- 宮本まき子先生へのお問い合わせはホームページから
- http://homepage3.nifty.com/makiko-miyamoto/