第51回 倒れてからでは遅すぎる?
元気なシングルがはまる老人ホームの宣伝
私には年上の「友人」が何人もいます。5〜10歳も違うのに「先輩」と書かないのは、誰ひとりとして「まき子さんより年長」と思っておられず、電車の席があけば「あなたが一番疲れているから」と私を座席に押しこむような人たちばかりだからです。温泉スパでせっせと磨き、イケメンとすれ違えばキャピキャピふりかえるこのオバン軍団、「ちょっと見た目年齢」を10歳は完全にサバ読んでいますから、「まき子さんと同級なの、ホホホ」で通用しちゃうらしい。
現役まっさかりのころは毎月ニューヨークまで飛びかえりの支社長会議に出かけ、「時差ボケが起こるヒマなし」と元気な人や、自社の存亡の危機の際は全財産投げ打って伸るか反るかの大勝負に出た人もいます。地道にコツコツと研鑚を重ね、知る人ぞ知るボランティア団体の屋台骨をこしらえたヒトもいました。
頭脳明晰、体力気力十分のこの「友人」たち、何を血迷ったか、にわかに「終の棲家」の有料老人ホームの広告に誘惑されっぱなしであります。
現役まっさかりのころは毎月ニューヨークまで飛びかえりの支社長会議に出かけ、「時差ボケが起こるヒマなし」と元気な人や、自社の存亡の危機の際は全財産投げ打って伸るか反るかの大勝負に出た人もいます。地道にコツコツと研鑚を重ね、知る人ぞ知るボランティア団体の屋台骨をこしらえたヒトもいました。
頭脳明晰、体力気力十分のこの「友人」たち、何を血迷ったか、にわかに「終の棲家」の有料老人ホームの広告に誘惑されっぱなしであります。
家に戻って見回せば、ホームの部屋は今の住まいの四分の一の極狭スペース。趣味のエレクトーンや毎日欠かすことのないマッサージチェア、学生時代から使い慣れた机や年代物の仏壇など、どこに置くんじゃ!?とおおいに当惑。そこにまき子さんが現れたわけ。「アタシより元気なヒトが何をとち狂うか。その部屋はね、倒れて寝たきりになってから入ればちょうどいい広さなんだと思う」という私の指摘に納得。T嬢は即日予約を取り消しました。
シニアハウスのセールスポイントは中途半端
「倒れてからでは遅すぎる」というCMには、「倒れる前からホームで良好な人間関係を作っておきましょう」という施設サイドの説明がもっともらしくついています。「遅い」と言われるとお尻に火がつくのが我が国の民族性ですからねぇ。その昔、「3歳からでは遅すぎる」の「生まれてからでは遅すぎる」のと、早期教育や胎教に走ったじゃありませんか。結果に大差はありました?やたらと老後の不安を煽るより、「倒れたらどうぞ」という老人ホームのほうが現実的で信頼できそうな気がします。
それならキリギリスのように人生の残りを遊び暮らそうという主旨のシニアハウスに注目。「友人」たちとできたてのホヤホヤを見学に行きましたが、あるわ、あるわの「遊びのスペース」、音楽室、陶芸室、お茶室、絵画室、フィットネスジム、カラオケ…。でもいないわ、いないわの「入所希望者」であります。どうしてぇ?
高額な入所費用と生活費がネックなのも事実なれど、どこか間に合わせ的で中途半端。「このくらいの小規模な設備なら近所の公民館に揃ってるわ」「コーラスとジャズの同好会ならうちの団地にもある」「新築のマンションならジムも料理教室も共用施設でもっといいのがあるもん」と友人たち。わざわざ引っ越さなければ手に入らない「遊び」というわけではありません。第一、シニアハウスは医療や介護抜きだからいずれ倒れたら退去するしかない。「老いてからまた引っ越すなんてカッタルイ」が共通意見で、同じ遊ぶなら自宅から通える範囲で、いろんな人たちと交流したい。そのほうが安上がりで気楽、という結論になりました。
こういう企画は団塊の世代以上の、オバンも含めたグループにまかせたほうが賢明ですよ。地域活動も公民館活動も知らない若いサラリーマンの「高齢者のライフスタイルなんてこの程度のものとナメてかかった発想」では、いつまでたっても進歩改善されないでしょう。
それならキリギリスのように人生の残りを遊び暮らそうという主旨のシニアハウスに注目。「友人」たちとできたてのホヤホヤを見学に行きましたが、あるわ、あるわの「遊びのスペース」、音楽室、陶芸室、お茶室、絵画室、フィットネスジム、カラオケ…。でもいないわ、いないわの「入所希望者」であります。どうしてぇ?
高額な入所費用と生活費がネックなのも事実なれど、どこか間に合わせ的で中途半端。「このくらいの小規模な設備なら近所の公民館に揃ってるわ」「コーラスとジャズの同好会ならうちの団地にもある」「新築のマンションならジムも料理教室も共用施設でもっといいのがあるもん」と友人たち。わざわざ引っ越さなければ手に入らない「遊び」というわけではありません。第一、シニアハウスは医療や介護抜きだからいずれ倒れたら退去するしかない。「老いてからまた引っ越すなんてカッタルイ」が共通意見で、同じ遊ぶなら自宅から通える範囲で、いろんな人たちと交流したい。そのほうが安上がりで気楽、という結論になりました。
こういう企画は団塊の世代以上の、オバンも含めたグループにまかせたほうが賢明ですよ。地域活動も公民館活動も知らない若いサラリーマンの「高齢者のライフスタイルなんてこの程度のものとナメてかかった発想」では、いつまでたっても進歩改善されないでしょう。
老後に本当にほしいものは「自由」かも
さて、前述の「友人」たちに老後の住まいの質問をしたら、(特に老人ホームを体験見学した人ほど)「ドクターストップがかかるまで自宅で」が圧倒的多数。何よりも自分の家には「自由があるから」が理由でした。自由が退屈なヒトもいるけど、多くのシニア世代はリタイアでやっと「時刻や規則に縛られない生活」を手に入れたのです。足腰も強く、アタマもボケていないのに、何を好きこのんで毎日同じ狭苦しい場所で、代わり映えのしないメンバーとだけ顔をつきあわせ、同じパターンで生活せないかんの。そんなの仕事場や配偶者と十分にやった、残りの人生は好きなようにやらせてほしい。このへんがホンネでしょうね。
「友人」たちより若い私の本音は、「同じ遊ぶなら年下の男」であります。だから、老人ホームとはしばらく無縁のままでしょう。
次回は、11月26日(金)掲載予定です。
「友人」たちより若い私の本音は、「同じ遊ぶなら年下の男」であります。だから、老人ホームとはしばらく無縁のままでしょう。
次回は、11月26日(金)掲載予定です。
(2010年11月12日)
- お知らせ
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宮本まき子先生の新刊本が、12月16日、PHP研究所より出版されました。
「自分も幸せになる「姑道」十カ条」
ご注文の際は、直接出版元にお問い合わせください。
※書店でのお取り扱いはありません
ご連絡先 : PHP研究所 通販普及課 マナビカ係 075-681-8818
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http://homepage3.nifty.com/makiko-miyamoto/