第63回 「断捨離」を思いついたら…
「価値の遠近法」で本当に大事なものを仕分ける
「震災以降、断捨離を始めた」という熟年世代によく出会います。断捨離とはヨガの考え方である「断行」「捨行」「離行」つまり断捨離を見習って、不要な物を断ち、捨てることで、物に執着することをやめ、シンプルで快適な生活を手に入れようという一種の啓蒙活動らしい。10年ほど前から広まり、それも単なる整理術ではなく、物を整理することで心の混乱も整理し、ポジティブな自分に変わるのが目的だとか。
「ずっとある」と長年信じていたのが、ある日突然奪い去られる。今回の大震災で誰もが抱いた喪失感や虚無感から、「本当に大事なものは何かを真剣に考えるようになった」結果、断捨離がひそかな「心の再建」作業に使われている気がします。
「ずっとある」と長年信じていたのが、ある日突然奪い去られる。今回の大震災で誰もが抱いた喪失感や虚無感から、「本当に大事なものは何かを真剣に考えるようになった」結果、断捨離がひそかな「心の再建」作業に使われている気がします。
地震で大量に散乱し、これではいけないと…
かく言うアタクシ、震度5強でクローゼットの衣装箱が崩れ落ち、書斎の本棚がひっくりかえって「詰め込んでいた中身」が部屋一面に飛散。大量の本や書類の他にカードやクリップ、印鑑、アクセサリーなどのコマコマしたものを収めた小引出し20個分の中身、(そのほとんどが「あってもなくてもいいもの」)が散乱し、いまだに(「なくてはいけないもの」の)イヤリングの片われやカード等が、重い家具や絨毯の下やすきまにもぐりこんで行方知れず。夏服は冬服に埋もれて探しだせず「着たきりスズメ」状態であります。おかげで探しものにおそろしく時間がかかり、疲れ果てました。
これではいけない。次の地震がきたら虎の子の通帳の印鑑、かって離婚をちらつかせてゲットしたダイヤの指輪、おそろしく昔むかしの誰かさんがくれた学生服の金ボタンなど、「大事なもの」がまたもや消えてしまうかもしれない。今のうちに棚を整理して見つけやすくしておこうと、ヒマさえあれば「エイヤッ」と捨てまくっております。
アタクシの場合、崇高なるポリシーとライフスタイルを目指した「断捨離」というより、延ばしに延ばしていた「大掃除」を無理やりやらざるを得なくなったという感じ。ゴミ袋20個分は出したのですが、やってもやっても出てくる書類と衣服、生活雑貨の山に、絶望的な気分になりかけました。いったいどこから湧いてくるのかしらン?
これではいけない。次の地震がきたら虎の子の通帳の印鑑、かって離婚をちらつかせてゲットしたダイヤの指輪、おそろしく昔むかしの誰かさんがくれた学生服の金ボタンなど、「大事なもの」がまたもや消えてしまうかもしれない。今のうちに棚を整理して見つけやすくしておこうと、ヒマさえあれば「エイヤッ」と捨てまくっております。
アタクシの場合、崇高なるポリシーとライフスタイルを目指した「断捨離」というより、延ばしに延ばしていた「大掃除」を無理やりやらざるを得なくなったという感じ。ゴミ袋20個分は出したのですが、やってもやっても出てくる書類と衣服、生活雑貨の山に、絶望的な気分になりかけました。いったいどこから湧いてくるのかしらン?
「わたし空けるヒト、あなた埋めるヒト」
思うに、断捨離の成功率は圧倒的にシングル、独居の方が高いんじゃないでしょうか。
昨日整理して空にしたはずの戸棚に今日は何やら雑誌がびっしりと入っています。「資料に使うかもしれないから全冊とっておく」と家人。先週あけたはずのクローゼットに娘と孫の着替えが入っていて「お泊り用に置かせてね」。ガラガラにしたはずの食器棚に息子からの母の日プレゼントの「ブランドものマグセット」が並びました。「わたし空けるヒト、あなた埋めるヒト」で、家族がいれば自分用を捨ててスペースをあけても、他から浸食してくるんですねぇ。
特に「数があるのが豊さだ」と感じる(らしい)家人は、いつ視聴するかわからない市販のCD1000枚、映画のDVD600枚を積み上げ、2ダースずつのワイシャツや下着、靴下をタンスに詰め込まないと満足しないタイプ。それでいて「大邸宅」はいらないと鷹揚(?)なので、「小邸宅」の空間は狭くなる一方でした。彼に「断捨離」の協力要請をしたのですが、自民党よろしく「やだもん」とすげなく拒絶されました。
チラシ一枚でも「もしや大事なものになるかも」と巣の中に貯めこむネズミ男と、「先のことはケ・セラ・セラ、今がすべて」の線香花火女がいっしょに暮してぶつからないわけはありません。特に「整理整頓能力がゼロ」のネズミであればなおのことで、「捨てる、捨てるな」の押し問答で日が暮れる始末。決意はしても「断捨離」の継続は難しいのです。
昨日整理して空にしたはずの戸棚に今日は何やら雑誌がびっしりと入っています。「資料に使うかもしれないから全冊とっておく」と家人。先週あけたはずのクローゼットに娘と孫の着替えが入っていて「お泊り用に置かせてね」。ガラガラにしたはずの食器棚に息子からの母の日プレゼントの「ブランドものマグセット」が並びました。「わたし空けるヒト、あなた埋めるヒト」で、家族がいれば自分用を捨ててスペースをあけても、他から浸食してくるんですねぇ。
特に「数があるのが豊さだ」と感じる(らしい)家人は、いつ視聴するかわからない市販のCD1000枚、映画のDVD600枚を積み上げ、2ダースずつのワイシャツや下着、靴下をタンスに詰め込まないと満足しないタイプ。それでいて「大邸宅」はいらないと鷹揚(?)なので、「小邸宅」の空間は狭くなる一方でした。彼に「断捨離」の協力要請をしたのですが、自民党よろしく「やだもん」とすげなく拒絶されました。
チラシ一枚でも「もしや大事なものになるかも」と巣の中に貯めこむネズミ男と、「先のことはケ・セラ・セラ、今がすべて」の線香花火女がいっしょに暮してぶつからないわけはありません。特に「整理整頓能力がゼロ」のネズミであればなおのことで、「捨てる、捨てるな」の押し問答で日が暮れる始末。決意はしても「断捨離」の継続は難しいのです。
最後はスーツケース一つがあればいい
いま、東北の被災地では一万枚近い被災者の写真を修復して、持ち主に戻すボランティアたちがいます。とても素晴らしい。記憶は鈍化しても、過去の一瞬をとらえた写真は、そのときの感覚や感情まで呼び起こして再現してくれる最適なソフトだからです。
だから私が「絶対になくしてはいけないもの」を仕分けるなら、通帳より指輪より大事なもの、「思い出」を最優先にします。それも、いよいよ寝たきりか病気の末期で病室や施設に入るときは、小さなスーツケースにぎっしりのアルバムと友人からの心温まる手紙、子どもらの結婚式や家族の記念日に撮影したビデオDVDを持っていくでしょう。
それらを眺めるたびに、お金持ちにはなれなかったけど、豊かな「思い出持ち」になれた喜びをかみしめて残り少ない余生を送りたい。そんなことをしみじみと考えた震災2か月目でありました。
次回は、5月27日更新予定です。
だから私が「絶対になくしてはいけないもの」を仕分けるなら、通帳より指輪より大事なもの、「思い出」を最優先にします。それも、いよいよ寝たきりか病気の末期で病室や施設に入るときは、小さなスーツケースにぎっしりのアルバムと友人からの心温まる手紙、子どもらの結婚式や家族の記念日に撮影したビデオDVDを持っていくでしょう。
それらを眺めるたびに、お金持ちにはなれなかったけど、豊かな「思い出持ち」になれた喜びをかみしめて残り少ない余生を送りたい。そんなことをしみじみと考えた震災2か月目でありました。
次回は、5月27日更新予定です。
(2011年5月13日)
- お知らせ
-
宮本まき子先生の書籍
「自分も幸せになる「姑道」十カ条」
ご注文の際は、直接出版元にお問い合わせください。
※書店でのお取り扱いはありません
ご連絡先 : PHP研究所 通販普及課 マナビカ係 075-681-8818
「PHP子育てNet」
ホームページからもご購入できます。 -
宮本まき子先生へのお問い合わせはホームページから
http://homepage3.nifty.com/makiko-miyamoto/