第21回 熟年世代も快感が欲しい
温泉のくつろぎも仕事の高揚感も「カイカーン」
ときどき講演やシンポジウムに呼ばれます。まだ行ったことのない土地だと「寄り道観光」を連想し、近くに「原泉掛け流し」があれば謝金その他の諸条件をすっとばして即、OKしてしまう「温泉フリーク」でもあります。
前日の温泉で怠けてた血圧を上げ、目詰まりしていたリンパ腺を開通させたあとの講演やシンポでは血のめぐり方が違います。お葬式みたいにシーンとした会より、「鬼が出るか蛇が出るか」の出たとこ勝負、火花が飛び散るような場面が大好きで、会場が沸けば沸くほど燃えちゃう体質ですから、映画の崔洋一監督と「男の言い分、女の言い分」をやりあったときもハブとマングースの戦いでした(どっちがハブかですって?)。場内を二分しての大論戦で、このときも血たぎり、気分が高揚する「カイカーン」がありました。だからこの仕事はやめらんないのでーす。
あるとき「男女共同参画シンポ」のあとの親睦会で和服姿の40歳ぐらいの上品なご婦人がツツーッとすり寄ってきました。「センセェ、うちの夫はできるくせに私とセックスするのは嫌らしく、盆暮れだけします。若いのに体によくありませんし、夫の義務を果たしていません。どうやったら私と寝るようにさせられますか?」おそらく酔った勢いで口にしたのでしょう。生真面目そうな顔を見たら、まさか「あなた以外の女(あるいは男?)とは、やれてるだろうから心配無用」とも言えず、アタシもほろ酔いで緊張感を欠いてたのか、ふっと言っちゃったんですワ。
「寝たがらない男と無理やりやって楽しいですか?」
鳩が豆鉄砲を食ったどころか、ギリシャ彫刻のように全身が固まっちゃった彼女、「えっ? だって夫ですよ?」とうろたえて呆然です。
「うん、でも夫婦は百人百色だから。どうせなら寝たがる男とやったほうが快感だと思うけどナ」
さぁ大変。彼女の堅固な思考回路はフリーズしたあとバラバラバラと崩れていったらしく、言葉を飲み込んだまま酒も飲みません。やがてヤワな蚊の鳴くような声でいいました。「アタクシ、今のいままでそんなこと考えたこともなくて…」そう? 男と女の関係は扇子の裏表のようなもの、たまには裏から眺めてみるのもいいものですよ。
男は性教育を「性交教育」と勘違いしている
あるとき、小講演のあとに「質問!」と手を挙げた男性がいました。
「大学生より既婚女性にこそ性教育が必要なのでは? 小生の妻をはじめ、50代より上の女性たちは最悪だ。不感症の上、若い女性たちのように快感を与えるサービス精神に欠けていて、人形を抱くようで興ざめだ。しかも更年期だからと最近ではセックス拒否するのはけしからん。男女共同参画をうたうならもっと熟女たちを性教育すべきだ」
ほうほう、言ってくれるじゃないの。
「あの男性はいちゃもんをつけたがる常連です」と隣で主催者が耳打ちして「本人が長々と演説したいだけなんです。無視していいですよ」
いえいえ、講師が聴衆にお株を奪われて黙っていられますか。年齢を聞いたら団塊の世代だという。そこでしみじみと語っちゃいましたねぇ。
「いいですか、奥さんが私と同年代ということは、間違いなく結婚までバージンだったはず。バブル景気の80年代なら婚前交渉も複数の男性経験も珍しくなかったけど、70年代の結婚組は夫しか男を知らないのが普通です。その妻の性がずっと幼稚で下手だというなら、それは唯一のセックスパートナーがずっと下手だったということでしょう(会場大爆笑)。風俗でプロの性テクニックに感激したようですが、妻もプロも同列にして、性交教育でテクニックを教えろ、そうすれば無料ですむという発想はベター・ハーフである妻への最大の侮辱です。お金をかけてよその男が言いよるほどに妻を磨きたて、婚外セックスを上達させてもらうか、早晩、熟年離婚されるかのどちらかをお選びください」
講演ではなく満場の拍手を浴びた「質疑応答」はこれが初めてでした。
(To be continued 次号に続く)
次回は8月28日(金)、更新予定です。
「大学生より既婚女性にこそ性教育が必要なのでは? 小生の妻をはじめ、50代より上の女性たちは最悪だ。不感症の上、若い女性たちのように快感を与えるサービス精神に欠けていて、人形を抱くようで興ざめだ。しかも更年期だからと最近ではセックス拒否するのはけしからん。男女共同参画をうたうならもっと熟女たちを性教育すべきだ」
ほうほう、言ってくれるじゃないの。
「あの男性はいちゃもんをつけたがる常連です」と隣で主催者が耳打ちして「本人が長々と演説したいだけなんです。無視していいですよ」
いえいえ、講師が聴衆にお株を奪われて黙っていられますか。年齢を聞いたら団塊の世代だという。そこでしみじみと語っちゃいましたねぇ。
「いいですか、奥さんが私と同年代ということは、間違いなく結婚までバージンだったはず。バブル景気の80年代なら婚前交渉も複数の男性経験も珍しくなかったけど、70年代の結婚組は夫しか男を知らないのが普通です。その妻の性がずっと幼稚で下手だというなら、それは唯一のセックスパートナーがずっと下手だったということでしょう(会場大爆笑)。風俗でプロの性テクニックに感激したようですが、妻もプロも同列にして、性交教育でテクニックを教えろ、そうすれば無料ですむという発想はベター・ハーフである妻への最大の侮辱です。お金をかけてよその男が言いよるほどに妻を磨きたて、婚外セックスを上達させてもらうか、早晩、熟年離婚されるかのどちらかをお選びください」
講演ではなく満場の拍手を浴びた「質疑応答」はこれが初めてでした。
(To be continued 次号に続く)
次回は8月28日(金)、更新予定です。
(2009年8月14日)
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