第38回 本当に大丈夫か?首相の舌
もしかして…言ってきたことはピーマンだった?
愛称「宇宙人」の鳩山首相は普天間基地移設問題の泥沼にどっぷりと首まではまってしまったご様子。政策のかけひき、防衛、外交などが複雑にからまっている重要課題だから、こうすればパパッと解決!なんていう名案があるはずもないのだけど、ここまでこじれにこじれ、ねじれにねじれてきては「さて、これからどうする気だんべ」という野次馬根性で高みの見物を決め込んでいる人たちも多いことでしょう。
私も初めのうちこそ、あのマジメそうな顔つきと口ぶりに、これはきっと、他人に言えないような「秘密」や「事情」がドカーンとあって、でも最終的に「はい、これが本命のとっておきの案。根回しは済んでるし、もう閣議で決めちゃったもんネ」というのが出てくるんだろうナ、一応名の通った政治家なんだし…と思っていたわけよ。
ところがどうやら見込み違いで、「これはいかが?あれでもダメ?こちらもお呼びじゃない?」と小間物屋の店先でいろいろ並べて客の反応をうかがう番頭さんの風情になってるじゃないですか。
私も初めのうちこそ、あのマジメそうな顔つきと口ぶりに、これはきっと、他人に言えないような「秘密」や「事情」がドカーンとあって、でも最終的に「はい、これが本命のとっておきの案。根回しは済んでるし、もう閣議で決めちゃったもんネ」というのが出てくるんだろうナ、一応名の通った政治家なんだし…と思っていたわけよ。
ところがどうやら見込み違いで、「これはいかが?あれでもダメ?こちらもお呼びじゃない?」と小間物屋の店先でいろいろ並べて客の反応をうかがう番頭さんの風情になってるじゃないですか。
もっともよくいますね、首相のような「八方美人」タイプ。面と向かうと強く出られず、「相手が喜びそうなこと」だけをお追従して言ってしまうヒト。「本当のことを言って険悪になるより、嘘を言ってヌカ喜びさせるほうがマナーにあっている」と思い込んでいて、あとでツジツマがあわなくなると、パニくるか立ち往生します。こういうヒトに限って、根拠もなく「大丈夫。そのうち誰かが後始末をしてくれる」と期待しているから始末が悪い。ママもドンもアテにしないでちょうだいと、お二方は早いところ釘をさしておいたほうがよいかと思います。
高慢ちきなゲスト夫人の鼻をポキッとやったヒト
英文科の同期に語学習得がメチャ速い女性がいました。一度見た単語のスペルは「図形」として視覚で覚えるし、文法は「数学の公式」と同じ、発音は「音符」みたいなものだと、凡人には理解できないことをおっしゃる。このAさんは東大の大学院でフランス語をものにし、夫のニューヨーク駐在中に隣人たちからドイツ語やスペイン語をゲットします。
彼女が30代後半の頃、東京で大きな国際シンポジウムがあって、招待出席者に同伴した夫人たちの「レディス・プログラム」の鎌倉半日案内を頼まれました。全員欧州人で、インテリとのふれこみでしたが、露骨に東洋人への偏見がちらついています。最初から自分たちのおしゃべりに夢中でAさんがよく準備した丁寧な英語のガイドを誰も聞いていません。あげくは日本人の運転手やガイドにはわからないだろうとフランス語で「きわどい床話」や「猥談」に盛り上がり、バスの中は笑いと嬌声が飛び交っていました。
そのうち元国連事務総長夫人が鼻先でせせら笑うような「高慢さに満ちたフランス語で」でモリエールの小説の一節を引用してAさんに皮肉(嫌味?)を投げかけます。すると彼女は即座にモリエールの他の小説の一文を使ってにこやかに、でも痛烈に切り返したので、一同は一瞬にして静まりかえったそうです。
Aさんは涼しい顔で「英語が苦手の方が多いようなので、もう一度ご説明しましょう。鎌倉は…」と今度は流暢なフランス語で車内ガイドを再開し、夫人たちは借りてきた猫のようにおとなしくなったとか。
その夜のパーティで、元事務総長がシンポジウムの主催者に「すばらしく頭脳明晰な女性スタッフがおられると、妻が感嘆していましたよ」と伝えたのでこの話が表に出たわけです。
天性の語学の才能に豊富な人生経験が加わり、英語でもフランス語でも「話す内容」に厚み、深み、ユーモア、アイロニーなどを自在に添加できる「言葉の魔術師」なのに、男社会で価値が認められないまま、Aさんは専業主婦でその後の人生をすごしました。
彼女が30代後半の頃、東京で大きな国際シンポジウムがあって、招待出席者に同伴した夫人たちの「レディス・プログラム」の鎌倉半日案内を頼まれました。全員欧州人で、インテリとのふれこみでしたが、露骨に東洋人への偏見がちらついています。最初から自分たちのおしゃべりに夢中でAさんがよく準備した丁寧な英語のガイドを誰も聞いていません。あげくは日本人の運転手やガイドにはわからないだろうとフランス語で「きわどい床話」や「猥談」に盛り上がり、バスの中は笑いと嬌声が飛び交っていました。
そのうち元国連事務総長夫人が鼻先でせせら笑うような「高慢さに満ちたフランス語で」でモリエールの小説の一節を引用してAさんに皮肉(嫌味?)を投げかけます。すると彼女は即座にモリエールの他の小説の一文を使ってにこやかに、でも痛烈に切り返したので、一同は一瞬にして静まりかえったそうです。
Aさんは涼しい顔で「英語が苦手の方が多いようなので、もう一度ご説明しましょう。鎌倉は…」と今度は流暢なフランス語で車内ガイドを再開し、夫人たちは借りてきた猫のようにおとなしくなったとか。
その夜のパーティで、元事務総長がシンポジウムの主催者に「すばらしく頭脳明晰な女性スタッフがおられると、妻が感嘆していましたよ」と伝えたのでこの話が表に出たわけです。
天性の語学の才能に豊富な人生経験が加わり、英語でもフランス語でも「話す内容」に厚み、深み、ユーモア、アイロニーなどを自在に添加できる「言葉の魔術師」なのに、男社会で価値が認められないまま、Aさんは専業主婦でその後の人生をすごしました。
草の根わけても探し出すべし、首相専属の天才的通訳
私思うに、「スタンフォード大博士課程卒」なんて肩書を過信せずに、首相にもっと「変幻自在な通訳」をしてくれる人を張り付けたほうがよろしいのではないでしょうか。
「トラスト・ミー」なんて言っちゃったときは即座に「日本には奥ゆかしさという文化があります。思うことを率直な言葉で口にするのをはばかるので、今の発言はアメリカ人が日常的につかう『俺にまかせとけ、大丈夫だ』という意味あいとは違い、『努力するのでそこを認めてくれ』という遠回しなお願いのことです」とフォローできなくちゃいけません。勘がよくて空気が読めて、相手をうならせる語学力があるヒトを草の根をわけても探し出すことです。
あっ、それから「八方美人的思考癖」を治すための心理療法のカウンセラーも必要かも…。
次回は、5月14日(金)掲載予定です。
「トラスト・ミー」なんて言っちゃったときは即座に「日本には奥ゆかしさという文化があります。思うことを率直な言葉で口にするのをはばかるので、今の発言はアメリカ人が日常的につかう『俺にまかせとけ、大丈夫だ』という意味あいとは違い、『努力するのでそこを認めてくれ』という遠回しなお願いのことです」とフォローできなくちゃいけません。勘がよくて空気が読めて、相手をうならせる語学力があるヒトを草の根をわけても探し出すことです。
あっ、それから「八方美人的思考癖」を治すための心理療法のカウンセラーも必要かも…。
次回は、5月14日(金)掲載予定です。
(2010年4月23日)
- お知らせ
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宮本まき子先生の新刊本が、12月16日、PHP研究所より出版されました。
「自分も幸せになる「姑道」十カ条」
ご注文の際は、直接出版元にお問い合わせください。
※書店でのお取り扱いはありません
ご連絡先 : PHP研究所 通販普及課 マナビカ係 075-681-8818
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