第66回 「妻は扇風機ではありません、念のため」
「町中避暑地」で涼みませんか?
それでも世間には知恵者がいるもので、「町中避暑地」なるものを設定する自治体がでてきたとか。つまり、一人暮らしや子連れママが1軒で何台も「これって涼しいのかしらん? 程度の室温」のエアコンをつけるより、図書館や自治会館あたりに集まって「昨年並みの温度設定」のエアコンで憩ってもらう。もちろん、古民家やお寺やお宮の境内の木陰に天然の涼を求めて集まれる場をもうけるのもいい。多少のメリットや生産性を考慮して、無料の飲み物サービスや趣味の教室なども準備して、夏のけだるい1日をみんなでワイワイやってやりすごそう。そんな「ミニミニ避暑」提案であります。
「あれ? どこかで聞いたような話だなぁ」と思うのは、間違いなく団塊の世代より上の人たちでしょう。
昔はワイワイと集まって夏を過ごした
昭和30年代の私が住んでいた小さな町の夏は、朝の6時には佃煮かジャムができそうなほどの数の小学生たちがカードをぶらさげて近所の公園に行き、ラジオ体操の第一と第二をします。帰りがけに押してもらうスタンプが30日分たまると皆勤賞でヒーローになれました。
「勉強は涼しい午前中に」が標語でしたから、午前8時には机に向かい、午後は昼寝をすませると、小学校高学年や中学生は「補習」で町内会館に集まりました。塾などなかった時代、住人の高校生や大学生がボランティアで勉強をみてくれたのです。私も大学に入ったら当たり前のように「最低10日間は来てね」と婦人会からの通達。差し入れのゴマ塩のおにぎりやスイカを食べ、ブリキの大バケツに氷の塊が浮かんだ麦茶や赤や緑のシロップ水を飲みながら、子どもたちの間をまわってわからないところや質問に答えておりました。
8月も下旬になると、工作や自由研究、さぼっていた絵日記の天気調べなどの宿題を手伝ってもらうための子どもたちで町内会館の大座敷は超満員。何台もの扇風機をフル稼働して、氷柱を何本も立てて(こっそりなめたりして)、それでも家にいるより涼しかったですね。対人関係が忙しすぎて暑さを忘れられたのでしょう。
大学受験が迫った昭和40年の夏は、毎日のように電車で1時間かけて県立図書館に行き、閉館まで粘りました。そこだけが唯一の全館冷房の図書館だったからです。
「勉強は涼しい午前中に」が標語でしたから、午前8時には机に向かい、午後は昼寝をすませると、小学校高学年や中学生は「補習」で町内会館に集まりました。塾などなかった時代、住人の高校生や大学生がボランティアで勉強をみてくれたのです。私も大学に入ったら当たり前のように「最低10日間は来てね」と婦人会からの通達。差し入れのゴマ塩のおにぎりやスイカを食べ、ブリキの大バケツに氷の塊が浮かんだ麦茶や赤や緑のシロップ水を飲みながら、子どもたちの間をまわってわからないところや質問に答えておりました。
8月も下旬になると、工作や自由研究、さぼっていた絵日記の天気調べなどの宿題を手伝ってもらうための子どもたちで町内会館の大座敷は超満員。何台もの扇風機をフル稼働して、氷柱を何本も立てて(こっそりなめたりして)、それでも家にいるより涼しかったですね。対人関係が忙しすぎて暑さを忘れられたのでしょう。
大学受験が迫った昭和40年の夏は、毎日のように電車で1時間かけて県立図書館に行き、閉館まで粘りました。そこだけが唯一の全館冷房の図書館だったからです。
現代人はタコツボから出ておいで
あのころの主婦たちの夏は大忙しでした。煩雑な家事に加えて、夏に乾きやすい布団の表布や毛布などの大物の洗濯を井戸端に集まって協力してやってしまいます。大家族一日分の麦茶を沸かしたり、子ども会の世話や炊き出しに加わったり、ドブさらいや殺虫剤をまいたり、行水の用意をしたり…夕方からは縁台を出して、夫や舅がステテコ姿で夕涼みをするための蚊取り線香と枝豆・ビールの用意。ヘボ将棋の決戦場でもあります。庶民の家にエアコン(当時はクーラーと呼んでいた)がなかった時代、いつも誰かと何かをワイワイやっているうちに過酷な夏が過ぎていったような気がします。
今回の「町内避暑地」の発想は、タコツボに閉じこもってしまったような現代人の「忘れ去られたDNA」を呼び起こす、絶好の機会になるかもしれません。
今回の「町内避暑地」の発想は、タコツボに閉じこもってしまったような現代人の「忘れ去られたDNA」を呼び起こす、絶好の機会になるかもしれません。
老妻を扇風機と間違えたDV亭主
ところで、何十年も物置にしまいこんでいた扇風機を再活用しようとすると、古すぎてショートし、火事のおそれがあるそうです。くれぐれも叩いてみたり、振ったり引っ張ったりしないでくださいね。
扇風機と言えば、一昨年、家庭内暴力(DV)のシンポジウムで聞いた切ない話があります。
ある八十代の老夫婦の夫が妻に暴力をふるって死に至らしめた事件。働き者だった妻は老化現象で、耳が遠くなる、目がよく見えない上に、足腰が弱って立ち動きが鈍くなりました。おそらくどちらにも老人特有の症状の兆候が出ていたのでしょう。意志の疎通がうまくとれません。「○○をしろ」という夫の命令に、返事もなければ動きもしない。これは故障か、接触不良かもしれないと夫は妻を「動かなくなった扇風機にするように叩いてみた」そうです。それでも動こうとしないので、「もっと強く蹴とばして」みたら、打ち所が悪くて死んでしまいました。
警察の調べに、「昔は大声でおどしたり怒鳴れば、すぐに命令通り動いたんだ。だんだん動きが鈍くなってきたので、叩いてみたら、飛び起きてやるようになった。でも今度は完全に止まってしまった」と首をかしげて繰り返していたとか。
若き日の怒鳴り声や恫喝がすでにDVだと、本人も妻も思わなかったのでしょう。DVはスパイラル状にレベルをあげていくもの。配偶者は一つの人格で、機械ではありません。叩けば操作できると思っているご仁は、すぐに地域の保健センターに相談してくださいね。DVはどんなに小さなことでも相手を傷つけるし、老人になって手かげんができなくなると、前述のような悲劇もおきます。それに、刑務所にはエアコンどころか、扇風機もありませんことよ。
次回は、7月8日更新予定です。
扇風機と言えば、一昨年、家庭内暴力(DV)のシンポジウムで聞いた切ない話があります。
ある八十代の老夫婦の夫が妻に暴力をふるって死に至らしめた事件。働き者だった妻は老化現象で、耳が遠くなる、目がよく見えない上に、足腰が弱って立ち動きが鈍くなりました。おそらくどちらにも老人特有の症状の兆候が出ていたのでしょう。意志の疎通がうまくとれません。「○○をしろ」という夫の命令に、返事もなければ動きもしない。これは故障か、接触不良かもしれないと夫は妻を「動かなくなった扇風機にするように叩いてみた」そうです。それでも動こうとしないので、「もっと強く蹴とばして」みたら、打ち所が悪くて死んでしまいました。
警察の調べに、「昔は大声でおどしたり怒鳴れば、すぐに命令通り動いたんだ。だんだん動きが鈍くなってきたので、叩いてみたら、飛び起きてやるようになった。でも今度は完全に止まってしまった」と首をかしげて繰り返していたとか。
若き日の怒鳴り声や恫喝がすでにDVだと、本人も妻も思わなかったのでしょう。DVはスパイラル状にレベルをあげていくもの。配偶者は一つの人格で、機械ではありません。叩けば操作できると思っているご仁は、すぐに地域の保健センターに相談してくださいね。DVはどんなに小さなことでも相手を傷つけるし、老人になって手かげんができなくなると、前述のような悲劇もおきます。それに、刑務所にはエアコンどころか、扇風機もありませんことよ。
次回は、7月8日更新予定です。
(2011年6月24日)
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