第62回 計画停電が教えてくれたこと
報道はおそろしい、誤報はもっとおそろしい
悲惨な大津波の傷を癒すヒマもなく、「福島第一原発事故」が喉に太い魚の骨がつきささったようにチクチクと神経を痛めます。先日ワイドショーを見ていたら、日本在住の数人の外国人が自国での「3・11報道」について話していました。新聞の第一面に広島の原爆きのこ雲の写真がドーンと載って「日本は三度も被爆国になった」とか、「シブヤはビルの半分が吹っ飛んだ」とか、コンビニのカラッポの陳列棚ばかりが強調されて「東京には食べるものがない」とか、液状化現象で地盤が数十メートルも沈下して「日本沈没」が始まったとか…まぁ凄い記事ばかり。これを見たら親たちがマッツアオになって「すぐに帰ってらっしゃい!」と電話してくるのも無理ないでしょう。
1999年の東海村JOC臨界事故のさい、「レベル4」の危険度で半径20キロ圏内に一時退避がなされたとき、私はたまたまロンドン大学の寮に短期滞在していました。現地の報道は「明日にも死の灰が日本をおおいつくす」みたいにおどろおどろしいものばかりで、内心肝を冷やしたものです。知り合ったばかりの英国人たちが口を揃えて「あんなおそろしいところに戻ってはいけない。家も仕事もみつけてやるから、このままロンドンにいなさい」と真剣に引き留めてくれましたっけ。
ジャーナリズムの原点は「部数アップのためのセンセーショナルな見出し」ではなく、いかに「冷静で正確な情報と、その見通し」を出せるかというところにあります。東電はこう言い、保安院はああ言い、官房長官はそう言ったと丸投げ報道しては混乱するばかり。「ほうれんそうやコウナゴを1年食べ続けても、CTスキャン一回分の放射線量にもならない」と解説されても、それなら魚の脂は?牛乳は?と疑念を増やすし、風評被害も出るでしょう。私たちが知りたいのは、「いま、ここで普通に暮らせるのかどうか」の一点だけ。これからは海外の専門家も入れて、大本営発表ではない「統一見解」を出して欲しいと思います。
突然の「計画停電」実施は脅しだったのでは?
しかし、あの未計画に近い「計画停電の実施」には参りました。それも地震直後の13日の夜8時に突然「明日やる」でしょ。電気が止まれば命にかかわる医療機器だらけの職場にいる家人はあわてて泊まりこみ、鉄道会社勤務の婿は夜中まで運転調整の連絡で駆け回ります。
アタクシは液状化の被害で名をはせた浦安市の自宅がガス、下水道のライフラインが途絶したため、一時、娘と赤ちゃんを連れて熱海の宿に避難していたのですが、当日朝になって「夕方からの計画停電で、食事の支度も温泉の汲み上げも暖房もできないから今日は温泉街が一律に休業」とポイと追い出されました。前日に仕入れた料理材料がオジャンの上、収入ゼロで大損だわンと嘆く女将に文句も言えず。JRが全線休止の中、唯一動いていた新幹線で帰ろうという宿泊客の大群を押し分け、かき分けしてやっと帰京。震災直後よりくたびれ果てました。
アタクシは液状化の被害で名をはせた浦安市の自宅がガス、下水道のライフラインが途絶したため、一時、娘と赤ちゃんを連れて熱海の宿に避難していたのですが、当日朝になって「夕方からの計画停電で、食事の支度も温泉の汲み上げも暖房もできないから今日は温泉街が一律に休業」とポイと追い出されました。前日に仕入れた料理材料がオジャンの上、収入ゼロで大損だわンと嘆く女将に文句も言えず。JRが全線休止の中、唯一動いていた新幹線で帰ろうという宿泊客の大群を押し分け、かき分けしてやっと帰京。震災直後よりくたびれ果てました。
いま思うにこの計画停電、「電力を使い過ぎると、突然ブラックアウトしてこうなるんだぜ」という脅しだったような気がしてなりません。でも、団塊世代以上なら「昔慣れたる生活」なのと違いますか。
節電の中で育った団塊世代以上は驚かない
古い兵舎や焼け残った建物を再利用した小学校や中学校の教室にはクーラーどころか蛍光灯もなかったけど、授業はちゃんとできました。
薄暗い照明の駅を降りると街灯の少ない暗い道なので、若い娘の通勤・通学帰りには父親か男の兄弟がよく迎えに来ていました。
商店街は夜7時には戸を閉め、デパートは定休日があるのが当たり前だから、買い物は「計画的に」すませていました。それでも「普通の人が普通に暮らすぶんには」どうということもなかったのですよ。
石原都知事の言葉でわかったのですが、日本中の自動販売機を止めれば原発1〜2基分の電力が不要になるとか。(大損する関係各会社にはお気の毒だけど)「無ければ無いでも大丈夫」と本気で言えるのが、水道の水を飲んで育った団塊の世代以上の強みであります(自宅で入れたお茶のポットを持参して、100円を募金箱に入れているという友人もいるのよン)。
このさい、「コンビニとケータイがないと一日も暮らせない若者世代」を鍛えなおすべし。いま彼らを励まし、おだててサバイバル力をつけてやらないと、先行き不透明な時代を元気に生き抜く気合や根性が生まれないでしょう。
不便さを納得するに値するものは「人との温かいつながり」であります。そのことを、いまほど痛切に感じたことはありません。
次回は、5月13日更新予定です。
このさい、「コンビニとケータイがないと一日も暮らせない若者世代」を鍛えなおすべし。いま彼らを励まし、おだててサバイバル力をつけてやらないと、先行き不透明な時代を元気に生き抜く気合や根性が生まれないでしょう。
不便さを納得するに値するものは「人との温かいつながり」であります。そのことを、いまほど痛切に感じたことはありません。
次回は、5月13日更新予定です。
(2011年4月22日)
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