2000年の介護保険制度施行により、わが国に本格的に導入されたケアマネジメント。ケアマネジメントの理論化、体系化を目的に01年に設立された「日本ケアマネジメント学会」の研究大会をレポートします。
Vol.51 第8回 日本ケアマネジメント学会研究大会が開催
全国から800名を超える関係者が参加
「横浜から第2ステージへの船出〜ケアマネジメントの可能性を求めて〜」をテーマに、6月19日(金)20日(土)の両日、日本老年学会との同時開催で第8回日本ケアマネジメント学会研究大会が開かれました。開催地となった横浜には、全国から学識者やケアマネジャーなどケアマネジメントに携わる800名を越える参加者が集い、2日間にわたり熱心な議論が展開されました。
ケアマネジメントの歴史、終末期ケア、認知症
続く基調講演は「地域が支えるいのちとくらし」と題し、ホスピスを経て現在、在宅療養支援診療所を運営する小澤竹俊氏(めぐみ在宅クリニック)が、終末期の支援について語りました。「人は苦しみのなかでも“支え”がある時、穏やかさを取り戻すことができる」(小澤氏)と、支援者は相手の苦しみと支えを把握し、その支えを支えなければならないと終末期ケアにおける視点・力点を強調しました。現在は、末期がん患者が介護保険の対象となっており、経験を重ねてか氏の言葉にうなずく聴衆の姿も多く見られました。 初日の演目の最後は認知症をテーマに、認知症研究の第一人者である長谷川和夫氏(認知症介護研究・研修東京センター長・聖マリアンナ医科大学名誉教授)による講演「認知症になっても大丈夫なまちづくり」、シンポジウム「認知症の人と家族の安定した生活のために」が開かれました。
シンポジウム(座長:竹内孝仁氏(国際医療福祉大学大学院教授))では、小坂憲司氏(横浜ほうゆう病院)、井上かつ子氏(認知症の人と家族の会・神奈川支部)、臼倉嘉男氏(ユニベールボランティア東京代表)、大城敬子氏(桜寿園地域包括支援センター)の4名がシンポジストとして登壇し、医師、介護者、ボランティア、実践者それぞれの立場から認知症について述べました。会場からはそれぞれのシンポジストに多くの質問があがり、認知症に対する関心の大きさがうかがわれました。
さまざまな領域のケアマネジメントからの発言
分科会ではポスター発表もあわせ100を超える発表が行われ、各会場では熱心な議論が広げられました。
パネルディスカッション「ケアマネジメントの未来」(座長:白澤政和氏(大阪市立大学大学院教授)では、障害者ケアマネジメント、母子生活支援、高齢者ケアマネジメントとさまざまな領域から、ケアマネジメントの課題と今後の発展に向けての議論が展開されました。介護保険への導入から高齢者に対する手法と思われがちなケアマネジメントが、普遍的なものであることを再確認する場となりました。
大会の最後を飾ったのは、坂本森男氏(厚生労働省大臣官房審議官)による講演「「老い」の変化と「介護」」。社会、家族、個人にみられる老いの変化に対応した「高齢者介護学」の必要性、また、高齢社会の介護におけるケアマネジャーの重要性と期待を述べました。
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第9回大会は「地域での生活を支えるケアマネジメント」をテーマに、2010年8月28日(土)・29日(日)、立教大学新座キャンパス(埼玉県新座市)で開催される予定となっています。