去る10月16日(木)・17日(金)、第9回介護保険推進全国サミット(主催・茨城県東海村)が開催されました。「出会い・ふれあい・支えあいを目指した新しいサービスの創造」をメインテーマとした多岐にわたる各種プログラムに、介護保険制度にかかわる行政職員・研究者・福祉従事者など多くの関係者が集いました。
Vol.29 第9回介護保険推進全国サミットinとうかいむら レポート
利用者の尊厳を基本に新しいサービスの創造を
初日の基調講演では、財団法人さわやか福祉財団の堀田力さんが「新しいサービスの創造」と題し、人間の尊厳保持の基礎となるものとして「自立」を位置づけ、その実現のために新しい介護サービスが求められていると講演されました。
堀田さんは「身体」だけでない「こころ」のサポートの重要性を強調。とかく専門的な技術論に陥りがちな介護の場には「豊かな人間性」が必要であることを改めて指摘しました。現段階では、ボランティアがその役を担うことができると堀田さんは考えているといいます。「学問」として学ぶことが難しい領域だけに、今後どのような形で「こころ」のケアを可能とする専門職養成が行われるのかが将来の課題であると指摘しました。
続いて行われたパネルディスカッションでは「サービスのメニューの検証と新しいサービスの創造」をテーマに、山口県でデイサービスセンター等を運営する株式会社夢のみずうみ村代表の藤原茂さんによる事例発表の後、各パネリストによる活発な議論が交わされました。
今回の大会のキーワードである「自立」「自己選択」という理念を実現したサービスとして、夢のみずうみ村の実践についてパネラーからは賞賛の声が挙がり、同時に、現在全国で行われているデイサービスの問題点が指摘されました。
「バリアありー(自宅にあるバリアは、デイサービスの施設にもあるべきだ)」「バイキング方式の食事(食事の自己選択)」「カジノ(施設内通貨による経済活動)」「スター制度(職員による交代制の責任者担当制度)」等々、従来のデイサービスのイメージとはかけ離れたアイデアが矢継ぎ早に紹介され、夢のみずうみ村を訪問したパネリストの1人は、その施設形態の非整然性を「アジアの市場」と称していました。
家族やサービス提供者側の視点にかたよって形成されたサービスが、いかに利用者の自立や自己選択から遠く離れたものとなってしまうのかを知るのに十分な事例紹介でした。
堀田さんは「身体」だけでない「こころ」のサポートの重要性を強調。とかく専門的な技術論に陥りがちな介護の場には「豊かな人間性」が必要であることを改めて指摘しました。現段階では、ボランティアがその役を担うことができると堀田さんは考えているといいます。「学問」として学ぶことが難しい領域だけに、今後どのような形で「こころ」のケアを可能とする専門職養成が行われるのかが将来の課題であると指摘しました。
続いて行われたパネルディスカッションでは「サービスのメニューの検証と新しいサービスの創造」をテーマに、山口県でデイサービスセンター等を運営する株式会社夢のみずうみ村代表の藤原茂さんによる事例発表の後、各パネリストによる活発な議論が交わされました。
今回の大会のキーワードである「自立」「自己選択」という理念を実現したサービスとして、夢のみずうみ村の実践についてパネラーからは賞賛の声が挙がり、同時に、現在全国で行われているデイサービスの問題点が指摘されました。
「バリアありー(自宅にあるバリアは、デイサービスの施設にもあるべきだ)」「バイキング方式の食事(食事の自己選択)」「カジノ(施設内通貨による経済活動)」「スター制度(職員による交代制の責任者担当制度)」等々、従来のデイサービスのイメージとはかけ離れたアイデアが矢継ぎ早に紹介され、夢のみずうみ村を訪問したパネリストの1人は、その施設形態の非整然性を「アジアの市場」と称していました。
家族やサービス提供者側の視点にかたよって形成されたサービスが、いかに利用者の自立や自己選択から遠く離れたものとなってしまうのかを知るのに十分な事例紹介でした。
地域福祉は地域づくり
二日目はまず、三つの分科会に分かれたパネルディスカッションと特別講演が行われました。
三つの分科会のテーマは「認知症のケアはこれでいいのか?―早期発見・早期対応に向けて」(第一分科会/コーディネーター・高橋紘一氏)、「豊かな経験を生かしたあたらしい地域づくり―住民主体の地域サービスとは?」(第二分科会/コーディネーター・和田敏明氏)、「保険・医療・福祉の連携におけるサービスの一体化」(第三分科会/コーディネーター田中滋氏)。共通点としては、いずれも「地域」に視点が置かれた議論が交わされました。
「地域」と一言でいっても、顔の見える範囲から市区町村レベルに至るまで様々ですが、NPOと町内会、行政と住民等、異質をつなぐ存在として専門職を位置づける指摘がなされるなど、超少子高齢社会等を踏まえ、これまでの福祉・社会保障制度による利用者への支援の枠組みを超えた「地域による福祉」がクローズアップされました。これらは、過去にも議論されていた「地域」による福祉の実現が、いよいよ現実のものとして迫ってきている現在の状況を示すものといえるでしょう。
三つの分科会のテーマは「認知症のケアはこれでいいのか?―早期発見・早期対応に向けて」(第一分科会/コーディネーター・高橋紘一氏)、「豊かな経験を生かしたあたらしい地域づくり―住民主体の地域サービスとは?」(第二分科会/コーディネーター・和田敏明氏)、「保険・医療・福祉の連携におけるサービスの一体化」(第三分科会/コーディネーター田中滋氏)。共通点としては、いずれも「地域」に視点が置かれた議論が交わされました。
「地域」と一言でいっても、顔の見える範囲から市区町村レベルに至るまで様々ですが、NPOと町内会、行政と住民等、異質をつなぐ存在として専門職を位置づける指摘がなされるなど、超少子高齢社会等を踏まえ、これまでの福祉・社会保障制度による利用者への支援の枠組みを超えた「地域による福祉」がクローズアップされました。これらは、過去にも議論されていた「地域」による福祉の実現が、いよいよ現実のものとして迫ってきている現在の状況を示すものといえるでしょう。
国民会議報告書に注目!
大会の締めくくりは、「医療・介護・福祉サービスの改革−社会保障のゆくえ」と題して、東京大学名誉教授の大森禰さんによる講演です。大森さんが社会保障国民会議委員を務めていることもあり、介護保険制度にとどまらない将来の社会保障全般を見据えた重厚な話でした。
現在とりまとめ中の国民会議の報告書は、今月末をめどに公表されるとのことです。曰く「日本の歴史に残る」とのこと。日本の将来と福祉を真剣に考えていることが伝わり、会場の参加者は熱心に聴き入っていました。
来年度の介護報酬改定を控え、報酬アップの大合唱となりがちなこの時期に、介護サービスを考える場が設けられたことは意義があるでしょう。今後どのように制度改正されるのか、現時点では検討段階ですが、来年開催されるこの介護保険推進サミットではどのような議論が交わされるのでしょうか。
現在とりまとめ中の国民会議の報告書は、今月末をめどに公表されるとのことです。曰く「日本の歴史に残る」とのこと。日本の将来と福祉を真剣に考えていることが伝わり、会場の参加者は熱心に聴き入っていました。
来年度の介護報酬改定を控え、報酬アップの大合唱となりがちなこの時期に、介護サービスを考える場が設けられたことは意義があるでしょう。今後どのように制度改正されるのか、現時点では検討段階ですが、来年開催されるこの介護保険推進サミットではどのような議論が交わされるのでしょうか。