Vol.21 介護サービスの半数が赤字経営
全体的に経営状態は悪化 二極化傾向も
厚生労働省はこのたび、15の介護サービスの経営状況に関する「2007年介護事業経営概況調査結果」(07年9月現在)を発表しました。
前回調査(04年9月現在)では、収支差(収入から支出を引いた、いわゆる利益)が赤字となったのは居宅介護支援だけでしたが、今回はこれに加えて、訪問入浴介護、訪問看護、短期入所生活介護、認知症対応型通所介護、特定施設入居者生活介護、小規模多機能居宅介護の7つが赤字経営という厳しい結果となっています。
前回と比べて収支差率(収入に対する利益の割合)が上がったのは、訪問介護と介護療養型医療施設のみで、ほかの10サービスは全て下降傾向となっています(注:前回調査の対象は12サービス、今回の対象は15サービスで、比較可能な12サービスについてのみの結果)。特に悪化が目立ったのは、訪問看護と通所リハビリテーション。訪問看護は10.4%から-3.4%へ、通所リハビリテーションは18.9%から1.6%へ急降下しました。また、今回初の調査となった小規模多機能型居宅介護の収支差率は-18.5%で全サービスのなかで最も低い結果となりました。
しかし、事業所によっては、収支差率25%以上という高い数値を示している事業所もあり、規模が大きい事業所ほど収益率が高い傾向にもあるようです。全体的に見て二極化が進んでいるという見方ができます。
前回調査(04年9月現在)では、収支差(収入から支出を引いた、いわゆる利益)が赤字となったのは居宅介護支援だけでしたが、今回はこれに加えて、訪問入浴介護、訪問看護、短期入所生活介護、認知症対応型通所介護、特定施設入居者生活介護、小規模多機能居宅介護の7つが赤字経営という厳しい結果となっています。
前回と比べて収支差率(収入に対する利益の割合)が上がったのは、訪問介護と介護療養型医療施設のみで、ほかの10サービスは全て下降傾向となっています(注:前回調査の対象は12サービス、今回の対象は15サービスで、比較可能な12サービスについてのみの結果)。特に悪化が目立ったのは、訪問看護と通所リハビリテーション。訪問看護は10.4%から-3.4%へ、通所リハビリテーションは18.9%から1.6%へ急降下しました。また、今回初の調査となった小規模多機能型居宅介護の収支差率は-18.5%で全サービスのなかで最も低い結果となりました。
しかし、事業所によっては、収支差率25%以上という高い数値を示している事業所もあり、規模が大きい事業所ほど収益率が高い傾向にもあるようです。全体的に見て二極化が進んでいるという見方ができます。
07年経営概況調査結果(在宅サービス)
収支差率(%) | 給与費割合(%) | |||
2004年 | 2007年 | 2004年 | 2007年 | |
介護老人福祉施設 | 10.2 | 4.4 | 58.0 | 60.7 |
介護老人保健施設 | 10.6 | 4.3 | 50.4 | 53.1 |
介護療養型医療施設 | 3.0 | 5.0 | 58.4 | 60.1 |
認知症対策型共同生活介護 | 8.7 | 7.7 | 57.3 | 59.4 |
訪問介護 | 1.5 | 3.3 | 84.1 | 82.8 |
訪問入浴介護 | 1.6 | -3.5 | 81.2 | 81.0 |
訪問看護 | 10.4 | -3.4 | 74.9 | 86.2 |
通所介護 | 8.8 | 5.7 | 62.2 | 64.1 |
認知症対応型通所介護 | − | -3.3 | − | 70.3 |
通所リハビリテーション | 18.9 | 1.6 | 49.9 | 62.0 |
短期入所生活介護 | 8.2 | -1.8 | 57.7 | 65.9 |
居宅介護支援 | -12.9 | -15.8 | 95.9 | 100.4 |
福祉用具貸与 | − | 3.1 | − | 38.7 |
特定施設入居者生活支援 | 9.1 | -0.3 | 36.8 | 46.8 |
小規模多機能居宅介護 | − | -18.5 | − | 72.3 |
課題は人件費
これらの結果の要因の1つに、介護業界全体の人手不足があります。人材確保のために職員の給与を増やさざるをえず、施設職員1人あたりの給与が2〜11%増えているという結果も出ているようです。特に訪問介護や訪問入浴介護の、給与費が収入に占める割合は80%を超えていて、経営的には人件費への対処が課題といえます。
ただ、訪問介護の常勤介護福祉士の給与については、前回の25万7581円から24万5329円とマイナスを示しました。また、(財)介護労働安定センターによる「2007年度介護労働実態調査」(07年10月現在)では、介護労働者(介護職員、訪問介護員など)の平均月給は約21万4900円、全体の47.6%が20万円未満となっており、離職率も21.6%と全産業の平均離職率16.2%より高水準となっています。
特に問題なのは、働く人の給料への満足度が下がっていることで、人手不足にさらに拍車がかかる恐れもあるでしょう。これらの背景には、今の介護報酬で十分な人材を確保することが難しいという厳しい現実もあり、総合的な問題打開策が必要と思われます。
ただ、訪問介護の常勤介護福祉士の給与については、前回の25万7581円から24万5329円とマイナスを示しました。また、(財)介護労働安定センターによる「2007年度介護労働実態調査」(07年10月現在)では、介護労働者(介護職員、訪問介護員など)の平均月給は約21万4900円、全体の47.6%が20万円未満となっており、離職率も21.6%と全産業の平均離職率16.2%より高水準となっています。
特に問題なのは、働く人の給料への満足度が下がっていることで、人手不足にさらに拍車がかかる恐れもあるでしょう。これらの背景には、今の介護報酬で十分な人材を確保することが難しいという厳しい現実もあり、総合的な問題打開策が必要と思われます。
介護報酬改定へ向けて
今回の厚生労働省の調査は、調査のサンプル数が少なく信憑性に欠けるとの指摘もあります。この秋にはサンプル数を約5倍に増やした詳細の調査結果をまとめられ、それを基礎資料として介護報酬の改定に向けた検討がなされる予定です。介護労働実態調査の結果も介護報酬改定に影響すると考えられ、注目されるところです。