毎回旬な話題を提供する「キャッチ・アップ」。記念すべき第1回は、皆さんの関心も高い、資格制度のあり方をめぐる法改正について、わかりやすく解説します。
Vol.1 資格制度改正で、私たちの仕事はどう変わる?(1)介護福祉士
「社会福祉士及び介護福祉士等の一部を改正する法律案」のポイント
はじめに
平成19年の第166回通常国会で審議された「社会福祉士及び介護福祉士等の一部を改正する法律案」。社会保険庁関連の問題で時間切れとなり、継続審議になりました。
同法案のポイントとして、資格取得方法や准介護福祉士の規定の是非などがクローズアップされましたが、元々は社会福祉士および介護福祉士の資質向上を狙うことが目的です。
法案の中には上記以外にも、各資格についての定義や義務規定の見直しなど、資の向上にかかわるさまざまな事項が盛り込まれています。9月からの臨時国会で成立すれば、施行に向けてさまざまな準備が早急に必要となります。皆さんの仕事にもつながる重要な法案なだけに、今一度、改正法案の全体像について整理しておきましょう。
同法案のポイントとして、資格取得方法や准介護福祉士の規定の是非などがクローズアップされましたが、元々は社会福祉士および介護福祉士の資質向上を狙うことが目的です。
法案の中には上記以外にも、各資格についての定義や義務規定の見直しなど、資の向上にかかわるさまざまな事項が盛り込まれています。9月からの臨時国会で成立すれば、施行に向けてさまざまな準備が早急に必要となります。皆さんの仕事にもつながる重要な法案なだけに、今一度、改正法案の全体像について整理しておきましょう。
改正の背景
社会福祉士及び介護福祉士法は昭和63年から施行され、今年で19年目となります。これまでの資格取得者数は社会福祉士が約8.3万人、介護福祉士が約54.8万人となっています(いずれも累計)。
●介護福祉士:近年のニーズの多様化に対応、資質の確保
介護福祉士は現在、介護保険施設で働く介護職員の約4割、在宅サービス就労者の約2割を占め、介護を支えるマンパワーとして中心的な役割を担っています。
また、介護保険制度や障害者支援費制度の施行で、個別ケア、認知症ケアといった利用者のニーズに応じた新しい介護が必要になってきており、これらのニーズに対応できる介護福祉士の資質の確保と向上が求められています。
●社会福祉士:利用者本位の制度で業務拡大、のはずが…
一方、社会福祉士を取り巻く環境については、介護保険制度や障害者支援費制度により、利用者がサービスを選択できる制度へと転換したことで、必要なサービスの利用支援や成年後見、権利擁護など、新しい相談援助の業務の形が生まれ、その活躍が期待される分野は拡大しています。
しかしながら、社会福祉施設等や福祉事務所における社会福祉士の任用・活用は概して低調で、すすんでいません。ですから、高い実践力を有する社会福祉士を養成し、任用・活用を促進することが求められているといえます。
これらの背景を受け、今回提出された改正案のポイントは以下の通りです。
●介護福祉士:近年のニーズの多様化に対応、資質の確保
介護福祉士は現在、介護保険施設で働く介護職員の約4割、在宅サービス就労者の約2割を占め、介護を支えるマンパワーとして中心的な役割を担っています。
また、介護保険制度や障害者支援費制度の施行で、個別ケア、認知症ケアといった利用者のニーズに応じた新しい介護が必要になってきており、これらのニーズに対応できる介護福祉士の資質の確保と向上が求められています。
●社会福祉士:利用者本位の制度で業務拡大、のはずが…
一方、社会福祉士を取り巻く環境については、介護保険制度や障害者支援費制度により、利用者がサービスを選択できる制度へと転換したことで、必要なサービスの利用支援や成年後見、権利擁護など、新しい相談援助の業務の形が生まれ、その活躍が期待される分野は拡大しています。
しかしながら、社会福祉施設等や福祉事務所における社会福祉士の任用・活用は概して低調で、すすんでいません。ですから、高い実践力を有する社会福祉士を養成し、任用・活用を促進することが求められているといえます。
これらの背景を受け、今回提出された改正案のポイントは以下の通りです。
改正のポイント
改正のポイントは次の(1)から(4)となっています。(1)〜(3)までは社会福祉士と介護福祉士両方にかかわる改正規定です。
(1)定義規定の見直し
(2)義務規定の見直し
(3)資格取得方法の見直し
(4)社会福祉士の任用・活用の促進
これらを介護福祉士、社会福祉士に分けて解説します。
(1)定義規定の見直し
(2)義務規定の見直し
(3)資格取得方法の見直し
(4)社会福祉士の任用・活用の促進
これらを介護福祉士、社会福祉士に分けて解説します。
介護福祉士の改正規定は?
介護福祉士の改正規定は以下のとおりになります。
心のケアに対応〜定義規定
介護福祉士の定義規定は、従来の身体介護を記述した表現から、認知症など心のケアも含めた心身の介護へ、より実態に即したものへと見直しがなされています。
現行
「専門的知識・技術をもって、入浴、排せつ、食事その他の介護等を行うことを業とする者」
↓
改正案
「専門的知識・技術をもって、心身の状況に応じた介護等を行うことを業とする者」
誠実さ、自己研鑽…レベルアップを目指す〜義務規定
介護福祉士の義務規定は、現行「信用失墜行為の禁止」「秘密保持義務」「連携」「名称の使用制限」という4つの規定からなっていますが、今回新しく「誠実義務」「資質向上の責務」という規定が加えられています。
「誠実義務」はその名のとおり、個人の尊厳を保持しつつ、常にその人の立場に立って誠実に業務を行うという規定で、「資質向上の責務」は、資格を取った後も自己研鑽に努めるという意味で加えられたものです。
また「連携」についても、医師だけでなく「福祉サービスの提供者との連携」を明示した記述に改められています。
「誠実義務」はその名のとおり、個人の尊厳を保持しつつ、常にその人の立場に立って誠実に業務を行うという規定で、「資質向上の責務」は、資格を取った後も自己研鑽に努めるという意味で加えられたものです。
また「連携」についても、医師だけでなく「福祉サービスの提供者との連携」を明示した記述に改められています。
全ルートに国試、カリキュラムも見直し〜資格取得規定
話題となっている資格取得法は、どのルートを選択しても国家試験合格が必要となること、カリキュラムの見直しや時間数の引き上げが行われ、全体としてレベルアップを図る改正になっていることが大きな特徴です。各ルートを簡単にまとめると以下のとおりになります。
「養成施設ルート」
1650時間(国家試験なし)
⇒1800時間程度+国家試験
「福祉系高校ルート」
1190時間+国家試験
⇒1800時間程度(1190時間+実務9か月の時限措置あり)+国家試験
「実務経験ルート」
実務経験3年以上+国家試験
⇒実務経験3年以上+養成施設6か月以上(600時間程度)+国家試験
1650時間(国家試験なし)
⇒1800時間程度+国家試験
「福祉系高校ルート」
1190時間+国家試験
⇒1800時間程度(1190時間+実務9か月の時限措置あり)+国家試験
「実務経験ルート」
実務経験3年以上+国家試験
⇒実務経験3年以上+養成施設6か月以上(600時間程度)+国家試験
実際にはどのルートも準備期間があり、養成施設ルートの場合、国家試験は平成24年度(平成25年1月に実施)から始まるので、2年制ならば平成23年度、4年制であれば平成21年度の入学者から受験対象となります。
福祉系高校ルートは、平成21年度から25年度までの入学者に限り、1190時間の課程を修了した後、9か月の実務経験を積むことでも代替可能という時限措置が設けられています。新カリキュラムは平成21年度の入学者から適用ですが、このときに、1800時間に移行する高校と、1190時間+9か月の実務経験をする高校とが存在することになります(ただし、後者の選択は平成25年度入学まで)。
実務経験ルートの「+養成施設6か月」の要件は平成24年度(平成25年1月)の試験からの適用になりますので、実質的には平成22年度くらいから通信講座などを受けながら国試対策をする、というのが現実的でしょう。なお、これらは働きながら学ぶ人の負担軽減として、教育訓練給付の対象になる予定です。
福祉系高校ルートは、平成21年度から25年度までの入学者に限り、1190時間の課程を修了した後、9か月の実務経験を積むことでも代替可能という時限措置が設けられています。新カリキュラムは平成21年度の入学者から適用ですが、このときに、1800時間に移行する高校と、1190時間+9か月の実務経験をする高校とが存在することになります(ただし、後者の選択は平成25年度入学まで)。
実務経験ルートの「+養成施設6か月」の要件は平成24年度(平成25年1月)の試験からの適用になりますので、実質的には平成22年度くらいから通信講座などを受けながら国試対策をする、というのが現実的でしょう。なお、これらは働きながら学ぶ人の負担軽減として、教育訓練給付の対象になる予定です。
准介護福祉士はあくまで暫定資格
養成施設ルート卒業者(国試受験をしなかった者、不合格の者)だけに与えられるとされるのが「准介護福祉士」資格です。
国はフィリピンとの協定(EPA/経済連携協定)は試験不要の現行制度のもとでの署名であることなどに配慮したものとして、あくまで暫定的な資格と位置づけています。しかし、国会前の審議会にまったく出ていなかった「准」資格の突然の登場に現場は混乱し、職場での待遇低下の懸念・資質向上の目的と矛盾するのでは、という批判も多く出されてきました。
このような流れの中で、前国会の参議院本会議では「5年を目途に検討を加える」という修正案が盛り込まれて可決されました。このことで、場合によっては、養成施設ルートに国家試験が課される平成25年までに「准」自体がなくなる可能性もある、との見方もあるようです。
次回は社会福祉士の改正についてお伝えします。
国はフィリピンとの協定(EPA/経済連携協定)は試験不要の現行制度のもとでの署名であることなどに配慮したものとして、あくまで暫定的な資格と位置づけています。しかし、国会前の審議会にまったく出ていなかった「准」資格の突然の登場に現場は混乱し、職場での待遇低下の懸念・資質向上の目的と矛盾するのでは、という批判も多く出されてきました。
このような流れの中で、前国会の参議院本会議では「5年を目途に検討を加える」という修正案が盛り込まれて可決されました。このことで、場合によっては、養成施設ルートに国家試験が課される平成25年までに「准」自体がなくなる可能性もある、との見方もあるようです。
次回は社会福祉士の改正についてお伝えします。