今月の特集 急変・事故に対応しよう
第2回 急変や事故への対処法〜家庭介護者ができること
注意していても、気をつけていても、起こってしまう事故や急変。第2回目の今回は、いざというときに、慌てず素早く適切に対応するための基礎知識を伝授します。ここでは、家庭介護者ができることとして、医療機関等につなぐまでにすべきことを中心に紹介していきます。
急変や事故への心構え
目の前でお年寄りが転んでしまったり、急に血を吐いてしまったら、介護者はパニックになるでしょう。しかし、このようなときこそ、冷静に対応することが大切です。以下のような心構えが必要です。
慌てず、落ち着く!
慌てて騒いでもどうにもなりません。まず、お年寄りに楽な姿勢をとってもらうなど、落ち着いて行動します。
どこに異常があるのかチェックする
どこから出血しているのか、どこを打ったのか、どのように苦しんでいるのかなど、どこに異常があるのかを冷静に確認します。
協力を得る
近くに人がいたら、協力を仰ぎます。自分ひとりで判断せず、一緒に確認しあうなど、協力して対応します。
日頃から緊急時の連絡先をまとめておく
日頃からお年寄りの状態を把握しておく
病院でたずねられることを予め把握しておきます。具体的には、平熱、血圧、今までどのような病気をしたか、感染症の可能性(輸血をした経験)はあるか、どんな薬を飲んでいるか、アレルギーはあるかなどです。
急変や事故への対応法
次に、事故や急変時に、家庭介護者にできることを症状別に解説します。
転んだ(捻挫、骨折、頭を打つ)
お年寄りが転んでしまったら、まずいったん横になってもらい、痛むところ(どこを打ったか)を確認します。お年寄りが転倒した場合は、腿の付け根を骨折することが多くあります。
痛みの具合をみながら、打ったところを静かに動かしてみます。この時に、痛みがなく、スムーズに動かすことができたら受診する必要はありません。打ったところをシップなどで冷やし、その日のお風呂は見合わせます。
痛みが激しい、動かせない、腫れてくるなどの症状があれば、骨折などの可能性があるので受診しましょう。腿の付け根など痛みの部位によっては救急車で対応します。
お年寄りは痛みを感じにくく、転倒して骨折していてもすぐに腫れないこともありますので、その時には痛がってなくても、何日か様子を見るようにします。
頭を打った場合は、その時にはなんでもないように見えても、血腫ができている可能性があるので、48時間は吐き気や痛みがないか注意して観察します。
いずれにしても、転んだこと、その後の状況を介護専門職や訪問看護師等に伝え、アドバイスを得るとよいでしょう。
痛みの具合をみながら、打ったところを静かに動かしてみます。この時に、痛みがなく、スムーズに動かすことができたら受診する必要はありません。打ったところをシップなどで冷やし、その日のお風呂は見合わせます。
痛みが激しい、動かせない、腫れてくるなどの症状があれば、骨折などの可能性があるので受診しましょう。腿の付け根など痛みの部位によっては救急車で対応します。
お年寄りは痛みを感じにくく、転倒して骨折していてもすぐに腫れないこともありますので、その時には痛がってなくても、何日か様子を見るようにします。
頭を打った場合は、その時にはなんでもないように見えても、血腫ができている可能性があるので、48時間は吐き気や痛みがないか注意して観察します。
いずれにしても、転んだこと、その後の状況を介護専門職や訪問看護師等に伝え、アドバイスを得るとよいでしょう。
食べ物が喉につまった
顔色や唇の色が変わった場合は、呼吸ができていないということです。すぐに救急車を呼びます。呼吸ができないと必要な酸素が体に回らず、死亡する可能性もあります。一刻も早く対応することが必要です。また、救急車を呼んだときは、今の状態を知らせ、救急車到着までの指示をもらいましょう。
呼吸はできているけれども何か詰まっている場合には、まず、詰まったものを出すことを優先します。本人を前かがみにさせ、家族が後ろから手を回してお腹(へそのあたり)を押します。「せーの、ごほん!」などと声をかけ、呼吸を合わせて手伝います。数回試みても苦しさが改善しない場合は救急車を要請し、安全かつ効率的に異物を出すようにします。
喉の奥に異物が見える場合は、口の中に手を入れて取りたくなりますが、かえって奥に入れてしまったり、歯で怪我をする危険性がありますので、あまり有効ではありません。
また、食べ物以外の物(入れ歯や差し歯)がひっかかったり、異物を口に入れた場合も救急車での対応が望ましいといえます。
呼吸はできているけれども何か詰まっている場合には、まず、詰まったものを出すことを優先します。本人を前かがみにさせ、家族が後ろから手を回してお腹(へそのあたり)を押します。「せーの、ごほん!」などと声をかけ、呼吸を合わせて手伝います。数回試みても苦しさが改善しない場合は救急車を要請し、安全かつ効率的に異物を出すようにします。
喉の奥に異物が見える場合は、口の中に手を入れて取りたくなりますが、かえって奥に入れてしまったり、歯で怪我をする危険性がありますので、あまり有効ではありません。
また、食べ物以外の物(入れ歯や差し歯)がひっかかったり、異物を口に入れた場合も救急車での対応が望ましいといえます。
吐き気、嘔吐
◆食べていた物を吐いた
寝たままで吐いてしまったり、意識がない場合などは、気管に吐いたものが入らないよう、横向きにして吐物が口に残らないようにします。繰り返し吐いてしまう場合には、原因が何かを調べて対処する必要があります。消化管の異常や中枢性(脳圧亢進などによる)の場合、内耳性、心因性など様々な要因が考えられます。また、嘔吐だけでなく、他の症状(痛み、不快感、お腹のはり、便秘など)にも注意します。
医師に伝える場合は症状の他に、吐いたものが食材の形を残しているか、胃液かを伝えます。
吐いた量によって、その分の水分を補う必要があります。アルカリ飲料もよいですが、市販されているものではOS1(オーエスワン)という経口補水液が有効です。十分な水分量を飲めない場合には、医師の指示を受けたほうがよいでしょう。
また、感染症予防のため、吐物を直接さわらないようにし、手洗いを十分にすることも大切です。O157やノロウィルスなどの可能性を考えると、汚れた寝具や衣類、タオルなどは他の物と分けて洗うことをおすすめします。なお、あきらかに感染が予測される場合には、マスクや手袋をして汚染した物を片づけます。
◆血を吐いた
一言で吐血と言っても、吐いたものに血が混じる程度から、赤黒い塊のまじったものを吐くという場合もあります。いずれにしても、出血している原因を調べ、対応する必要があります。
また、吐血量が多いために血液が足りなくなり、血圧が下がる、意識が朦朧とするなどの症状が出る場合もあります。横になって安静にし、吐き気があれば横向きに寝て楽に吐けるようにします。
症状が良くならなければすぐに、また症状がおさまっても受診をして、なぜそうなったのか、今後の健康管理や症状への対応についてアドバイスを得ておくとよいでしょう。
寝たままで吐いてしまったり、意識がない場合などは、気管に吐いたものが入らないよう、横向きにして吐物が口に残らないようにします。繰り返し吐いてしまう場合には、原因が何かを調べて対処する必要があります。消化管の異常や中枢性(脳圧亢進などによる)の場合、内耳性、心因性など様々な要因が考えられます。また、嘔吐だけでなく、他の症状(痛み、不快感、お腹のはり、便秘など)にも注意します。
医師に伝える場合は症状の他に、吐いたものが食材の形を残しているか、胃液かを伝えます。
吐いた量によって、その分の水分を補う必要があります。アルカリ飲料もよいですが、市販されているものではOS1(オーエスワン)という経口補水液が有効です。十分な水分量を飲めない場合には、医師の指示を受けたほうがよいでしょう。
また、感染症予防のため、吐物を直接さわらないようにし、手洗いを十分にすることも大切です。O157やノロウィルスなどの可能性を考えると、汚れた寝具や衣類、タオルなどは他の物と分けて洗うことをおすすめします。なお、あきらかに感染が予測される場合には、マスクや手袋をして汚染した物を片づけます。
◆血を吐いた
一言で吐血と言っても、吐いたものに血が混じる程度から、赤黒い塊のまじったものを吐くという場合もあります。いずれにしても、出血している原因を調べ、対応する必要があります。
また、吐血量が多いために血液が足りなくなり、血圧が下がる、意識が朦朧とするなどの症状が出る場合もあります。横になって安静にし、吐き気があれば横向きに寝て楽に吐けるようにします。
症状が良くならなければすぐに、また症状がおさまっても受診をして、なぜそうなったのか、今後の健康管理や症状への対応についてアドバイスを得ておくとよいでしょう。
高い熱が出た
39〜40℃の高熱であれば、何らかの変化が体に起こっていることを想定します。他の症状がないか確認し、寒気がなければ、わきの下や腿の付け根を冷やします。ビニール袋に氷と少量の水を入れてタオルで包んだり、保冷材を使ってもいいでしょう。半日程度対応しても症状がよくならなければ受診します。
お年寄りでよくあるのは、掛け物をかけすぎたり、室温が上がったままの部屋で過ごして体温調節がうまくいかずに熱が上がってしまうことです。汗をかいているのに寒いといって服を何枚も着るといった場合は、体温調整や寒暖の感覚が鈍ってきたということも考えられます。まず適切な室温にする、かけ物や衣類を薄くする、冷やすなどで対応します。結果として環境の調整で熱が下がれば体の異常の可能性は低いといえます。
お年寄りでよくあるのは、掛け物をかけすぎたり、室温が上がったままの部屋で過ごして体温調節がうまくいかずに熱が上がってしまうことです。汗をかいているのに寒いといって服を何枚も着るといった場合は、体温調整や寒暖の感覚が鈍ってきたということも考えられます。まず適切な室温にする、かけ物や衣類を薄くする、冷やすなどで対応します。結果として環境の調整で熱が下がれば体の異常の可能性は低いといえます。
意識が低下している
お年寄りでよくあるのは、食欲がないまま数日過ごし、元気がなく、意識がもうろうとする場合です。食事が取れないと水分量が不足し、結果として血糖が下がり、脱水になるということが考えられます。この場合には徐々に症状が悪化してきます。
一方、急に意識が低下して寝たまま起こしても反応がない、ぼんやりしていつものような覇気がない場合は、脳血管障害などさまざまな疾患が考えられます。医療機関を受診し、原因を確認した上で適切な治療をする必要があります。
ぼんやりしている程度だと、無意識に動いて転んだり、倒れたりして打撲や骨折など、さらに事故が多くなることもあります。安全への配慮と早めの対応を心がけましょう。
一方、急に意識が低下して寝たまま起こしても反応がない、ぼんやりしていつものような覇気がない場合は、脳血管障害などさまざまな疾患が考えられます。医療機関を受診し、原因を確認した上で適切な治療をする必要があります。
ぼんやりしている程度だと、無意識に動いて転んだり、倒れたりして打撲や骨折など、さらに事故が多くなることもあります。安全への配慮と早めの対応を心がけましょう。
呼吸が苦しそう
呼吸そのものが問題になる場合と、心臓の機能の低下など循環器の異常による場合があります。いずれも早く対応することが必要です。楽な姿勢をとり(一般には状態を起こしているほうが楽と言われます)、深呼吸を促し、症状が改善しなければ医療機関を受診します。顔色が悪い、冷や汗をかいている、胸、肩、背中などの痛みが伴う場合には、狭心症や心筋梗塞なども視野に入れ、救急車を呼んですぐに対応します。
どこかを痛がっている
まず、痛みの場所や状態を把握します。具体的には、いつからか、痛みの程度はどうか、押して痛いのか、ずっと痛いのかを確認します。また熱や腫れなどの症状があるかどうかも観察します。あきらかに熱をもっていたり、腫れていたら受診しましょう。
痛みが軽い場合には様子を見る場合もあります。基本的には痛みのある場合は炎症を起こしていると想定して、その場所を冷やす対応をします。いずれにしても症状にあわせた対応が必要なので、迷う場合には医療機関に相談するとよいでしょう。
痛みが軽い場合には様子を見る場合もあります。基本的には痛みのある場合は炎症を起こしていると想定して、その場所を冷やす対応をします。いずれにしても症状にあわせた対応が必要なので、迷う場合には医療機関に相談するとよいでしょう。
下痢、尿の色がおかしい
薬の種類によっては尿の色が変わりますので、薬を飲んでいる方は注意書きを読んだり、薬剤師に聞くのもよいでしょう。
トイレが近い、1回の尿量が少ない、排尿時に痛みや違和感があるときは膀胱炎などが考えられます。熱が出る、背中が痛いなどは腎炎の症状です。受診して治療が必要です。日頃から尿の状態に気をつけて異常を発見できるようにしましょう。
下痢は腹痛を伴うか否か、頻繁に繰り返すか否か、熱など他の症状があるかによって判断します。腹痛、頻繁な下痢、発熱などを伴う場合には、原因を調べて治療する必要があります。また、感染性胃腸炎(ウィルス性ではノロウィルスなどが有名です)などは、本人の治療とともに周囲への感染予防が必要です。その意味でも下痢には早めに対応することが大切です。
次回は「急変や事故を予防する1 いつもの様子を把握する」として、普段の心がけや、いつも把握しておくべきことなどを紹介します。
トイレが近い、1回の尿量が少ない、排尿時に痛みや違和感があるときは膀胱炎などが考えられます。熱が出る、背中が痛いなどは腎炎の症状です。受診して治療が必要です。日頃から尿の状態に気をつけて異常を発見できるようにしましょう。
下痢は腹痛を伴うか否か、頻繁に繰り返すか否か、熱など他の症状があるかによって判断します。腹痛、頻繁な下痢、発熱などを伴う場合には、原因を調べて治療する必要があります。また、感染性胃腸炎(ウィルス性ではノロウィルスなどが有名です)などは、本人の治療とともに周囲への感染予防が必要です。その意味でも下痢には早めに対応することが大切です。
次回は「急変や事故を予防する1 いつもの様子を把握する」として、普段の心がけや、いつも把握しておくべきことなどを紹介します。
第3回 急変や事故を予防する1 いつもの様子を把握する
お話をうかがった方
横浜市港北医療センター
訪問看護ステーション ケアマネジメントステーション
管理者・看護師・ケアマネジャー