転倒事故を防ごう!
第1回 転倒のリスクと現状
年をとると、骨がもろくなっていることもあり、転倒・骨折のリスクが高まります。そして、ひとたび骨折すると、その後の生活ががらりと変わり、介護の負担も増してしまいます。そのため、普段の生活の中で、転倒を予防していくことが大切です。
今回の特集では、転倒の予防と対策を考えていきます。
今回の特集では、転倒の予防と対策を考えていきます。
転倒の現状を知っておこう
転倒・骨折は、要介護状態になる原因の第5位となっています。寿命が延びるにつれて、転倒・骨折は今後ますます増えることが予想されます。
高齢者が骨折しやすい部位を図1に示しました。このうち最も多いのは、大腿骨近位部骨折(足の付け根の骨折)です。最も治りも悪く、車いす生活を余儀なくされるなど、その後の生活に大きな影響を及ぼします。
高齢者が骨折しやすい部位を図1に示しました。このうち最も多いのは、大腿骨近位部骨折(足の付け根の骨折)です。最も治りも悪く、車いす生活を余儀なくされるなど、その後の生活に大きな影響を及ぼします。
転倒する方向と骨折の関係
転倒する方向としては前方が約6割と多く、側方と後方がそれぞれ約2割となっています(図2)。
・前方への転倒
とっさに手をつくことで手首を骨折したり、足首を骨折することが多くなります。
・側方への転倒
手首、肩、太ももなどの骨折が多くなります。
・後方への転倒
胸や腰の圧迫骨折が発生しやすくなりますが、お尻や背中、そして頭部を地面に打ちつけることになるので、生命に関わる重篤な障害が発生する危険性もあります。転倒によって亡くなる人のほとんどが、後方に転倒したことによる脳挫傷が原因と推測されるので、特に後方の転倒には注意が必要です。
・前方への転倒
とっさに手をつくことで手首を骨折したり、足首を骨折することが多くなります。
・側方への転倒
手首、肩、太ももなどの骨折が多くなります。
・後方への転倒
胸や腰の圧迫骨折が発生しやすくなりますが、お尻や背中、そして頭部を地面に打ちつけることになるので、生命に関わる重篤な障害が発生する危険性もあります。転倒によって亡くなる人のほとんどが、後方に転倒したことによる脳挫傷が原因と推測されるので、特に後方の転倒には注意が必要です。
図2 転倒する方向と骨折部位
前方(約6割) | 手首、足首 |
側方(約2割) | 太もも、手首、肩など |
後方(約2割) | 頭部の傷害、胸や腰の圧迫骨折など |
転倒の原因
転倒の原因としては、大きく「内的因子」と「外的因子」の2つに分けて考えられています(図3)。加齢により身体が転倒しやすくなっていること、病気による影響、さらには薬による副作用などが内的因子として挙げられます。また、環境面におけるさまざまな要素が外的因子です。これらの要素に留意し、転倒を未然に防ぐことが重要です。
図3 転倒のリスク要因
図3 転倒のリスク要因
内的因子 | ・加齢や使わないことによる移動能力とバランス能力の低下 ・特定の病気(脳卒中後遺症、パーキンソン病、認知症、視力障害など) ・薬剤による薬理作用(睡眠薬、抗不安薬、多剤の服用など) |
外的因子 | 段差、滑りやすい床、履物、つまずきやすい敷物、電気器具のコード類、照明(の不良)など |
次回以降、転倒を予防するポイントを紹介していきます。
ご協力いただいた方
上岡洋晴さん(東京農業大学 地域環境科学部 教授)