医療にかかわる犬――セラピードッグ
第2回 セラピードッグの広がり
病院やホスピス、介護施設、教育現場―現在、さまざまな場所でセラピードッグが活躍しています。その道を拓いたパイオニアが、前回ご紹介したチロリでした。そして、チロリを保護した大木トオル氏もまた、日本でのセラピードッグ普及に尽力したパイオニアでした。
大木氏とセラピードッグの出会いは33年前。音楽好きな方なら、“大木トオル”という名前をブルースという言葉と結びつけて記憶していることでしょう。20代始めにブルースの本場アメリカに単身でわたり、東洋人のブルースマンとしてスターダムにのし上がりました。そんな大木氏のライフワークがセラピードッグの普及なのです。
アメリカにわたったばかりで貧しい生活を続けるなか、氏は高齢者施設でのセラピードッグ活動に偶然出会います。高齢者の笑顔と犬たちの思いやりの深さ―その時の感動に、「ブルースマンとして成功したらセラピードッグで社会貢献をしよう」と心に誓ったそうです。
アメリカで成功し、日本への凱旋。華やかなショービジネスの世界で生きる一方、一人で地道にセラピードッグの普及活動にも乗り出します。
大木氏とセラピードッグの出会いは33年前。音楽好きな方なら、“大木トオル”という名前をブルースという言葉と結びつけて記憶していることでしょう。20代始めにブルースの本場アメリカに単身でわたり、東洋人のブルースマンとしてスターダムにのし上がりました。そんな大木氏のライフワークがセラピードッグの普及なのです。
アメリカにわたったばかりで貧しい生活を続けるなか、氏は高齢者施設でのセラピードッグ活動に偶然出会います。高齢者の笑顔と犬たちの思いやりの深さ―その時の感動に、「ブルースマンとして成功したらセラピードッグで社会貢献をしよう」と心に誓ったそうです。
アメリカで成功し、日本への凱旋。華やかなショービジネスの世界で生きる一方、一人で地道にセラピードッグの普及活動にも乗り出します。
活動のはじめこそ冷たかった医療関係者の反応も、現在では、全国から応じきれないほどのオファーが届くまでへと変わっていったのです。
犬たちへの恩返し
大木氏は、セラピードッグの普及活動の背景にはもうひとつ、“犬たちへの恩返し”という理由があると語ります。ミュージシャンという職業からは想像がつきませんが、子ども時代は重度の吃音障害のために、人と話をすることが怖かったそう。でも、犬たちは、じっと言葉が出るのをまってくれる―。一緒に暮らす三頭の犬に愛情を注ぎ、犬たちは何倍もの愛情を返してくれました。しかし、そんなある日、親が事業が失敗し一家はばらばらに。犬たちも、どこかに引き取られていきました。
いまだに、犬たちがどうなったのかと罪の意識が消えないそうです。そのため、国際セラピードッグ協会では、保健所から殺処分をまつ犬たちを引き取って訓練を行い、セラピードッグとして第二の人生をスタートさせています。「捨てられる犬たちも人を助ける力があることを知ってもらいたい」と大木氏は、その意図をこう話します。「“無償の愛”という犬たちがもつ力、すばらしさを知ってもらい、日本人の犬への意識を変えていきたい」。実際にセラピードッグの活躍は、動物愛護法の大幅改正への大きな後押しとなりました。
いまだに、犬たちがどうなったのかと罪の意識が消えないそうです。そのため、国際セラピードッグ協会では、保健所から殺処分をまつ犬たちを引き取って訓練を行い、セラピードッグとして第二の人生をスタートさせています。「捨てられる犬たちも人を助ける力があることを知ってもらいたい」と大木氏は、その意図をこう話します。「“無償の愛”という犬たちがもつ力、すばらしさを知ってもらい、日本人の犬への意識を変えていきたい」。実際にセラピードッグの活躍は、動物愛護法の大幅改正への大きな後押しとなりました。
被災地へ
医療や介護の現場で、その力が認められているセラピードッグたちが、この度の東日本大震災によって仮設住宅に住むことを余儀なくされた方々へ心身のケアを提供できるよう、国や行政と折衝している段階です。
新潟県中越地震で問題となったことのひとつに、仮設住宅での孤独死や自死がありました。そうした悲劇を防ぐために、セラピードッグは大きな力を発揮してくれるはずです。
次回は、セラピードッグが一人前になるまでのトレーニングを紹介します。
新潟県中越地震で問題となったことのひとつに、仮設住宅での孤独死や自死がありました。そうした悲劇を防ぐために、セラピードッグは大きな力を発揮してくれるはずです。
次回は、セラピードッグが一人前になるまでのトレーニングを紹介します。
ご協力いただいた団体
国際セラピードッグ協会 http://www.therapydog-a.org/
社会福祉法人シルヴァーウイング http://www.silver-w.jp/
■参考文献
上之二郎 著『チロリとブルースマンの約束』集英社、2011年
大木トオル 著『セラピードッグの世界 動物介在療法 あなたの愛犬も「名犬チロリ」になれる!』日本経済新聞出版社、2009年
社会福祉法人シルヴァーウイング http://www.silver-w.jp/
■参考文献
上之二郎 著『チロリとブルースマンの約束』集英社、2011年
大木トオル 著『セラピードッグの世界 動物介在療法 あなたの愛犬も「名犬チロリ」になれる!』日本経済新聞出版社、2009年