ドキュメンタリー映画『ただいま それぞれの居場所』からみる“介護”
第3回 登場施設・事業所からみる介護
介護保険制度導入から10年――ドキュメンタリー映画『ただいま それぞれの居場所』は、介護福祉の“いま”をみることができます。その映画から介護をみつめ直そうという本特集。3回目は登場施設・事業所の紹介と、家族が無理なく介護を続けられる場所・方法をお伝えします。
施設・事業所の概要
最初に、『ただいま それぞれの居場所』に登場する4つの施設・事業所の概要を紹介します。
NPO法人 優人(京都府城陽市)
2009年4月1日オープン。園長の大川卓也さん(28歳)は、有障者施設で働きながら福祉大学を卒業。高齢者デイサービス施設に4年勤務後、妻の佳奈子さんとこの施設を立ち上げました。“年齢や障がいにかかわらず、みんなが通ったり泊ったり、ほっこりできる寄合い処”を目指しています。
自主事業
自主事業
民間福祉施設 元気な亀さん(埼玉県坂戸市)
1986年創設。当時、園長の瀧本信吉さん(60歳)は、不動産会社のサラリーマン。妻の静子さん(60歳)は老人病院の看護師でした。関わっていたボランティア活動を通じ、行政の措置では社会的弱者と言われている人達およびその家族に明日はないと痛感し、自宅をデイ・ケアの拠点として開放。1年後、現在の場所に移転しました。全国でも先駆的な試みでしたが、福祉制度の枠からは大きく外れており、行政からの金銭的援助は一切ありません。
自主事業
自主事業
有限会社オールフォアワン 宅老所 いしいさん家(千葉県千葉市)
2006年創設。代表の石井英寿さん(34歳)は、大学の福祉科卒業後、介護老人保健施設に8年間勤務。大規模施設の画一的な介護の在り方に疑問を抱き退職した後、同僚だった妻の香子さんと創設しました。若年性認知症の人たちのための「みもみのいしいさん家」も運営しています。
デイサービス、自主事業
デイサービス、自主事業
NPO法人 井戸端介護 宅老所 井戸端げんき(千葉県木更津市)
2002年創設。理事長の伊藤英樹さん(37歳)は大学の社会福祉学部を卒業後、有障者施設、老人介護施設に勤務。父親の介護をきっかけに、この施設を立ち上げました。利用者は年寄りだけでなく、ふらりと近所の人が遊びに来たり、自称ボランティアの人がいたりと多彩で、まさにご町内の“井戸端”です。2004年に宿泊施設「かっぱや」、翌年お年寄りと有障者のデイサービス「縁側よいしょ」をオープンしました。
デイサービス、自主事業
デイサービス、自主事業
介護保険施設と自主事業施設
介護保険を使える施設・事業所として皆さんによく知られているものは、訪問介護、通所介護(デイサービス)、特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホームなどです。今回の映画のなかでは、「いしいさん家」「井戸端げんき」が通所介護事業の指定を受けています。
宅老所という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? 映画に登場した「いしいさん家」「井戸端げんき」は宅老所とうたっていますが、宅老所とはいったい何でしょうか。「宅老所・グループホーム全国ネットワーク」によると宅老所を下記のように説明しています。
通い(デイサービス)のみを提供しているところから、泊まり(ショートステイ)や自宅への支援(ホームヘルプ)、住まい(グループホーム)、配食などの提供まで行っているところもあり、サービス形態はさまざまだ。また利用者も、高齢者のみと限っているところがある一方で、障害者や子どもなど、支援の必要な人すべてを受け入れるところもある。介護保険法や自立支援法の指定事業所になっているところもあれば、利用者からの利用料だけで運営しているところ、あるいは両者を組み合わせて運営しているところもある。
1980年代半ばから全国各地で始まった草の根の取り組み。大規模施設では落ち着けない、あるいは施設では受け入れてもらえない認知症高齢者に、少しでも安心して過ごしてもらいたいと願う介護経験者や元介護職員・看護職員などによって始まった。
宅老所の多くは民家などを活用し、通い(デイサービス)の形態から出発している。大規模施設では問題行動のある困った利用者という烙印が押された方も、宅老所ではお茶を飲んだり談笑したりと、落ち着いて過ごされる姿が見られる。1998年の全国調査(宮城県実施)では、600か所の宅老所があると報告されているが、宅老所の定義が不明瞭であるため現在の実数は定かではない。
このように宅老所は、大規模施設に入所できなかった認知症の症状が深い人などを受け入れることができるところです。「いしいさん家」や「井戸端げんき」のように、介護保険の通所介護事業の指定を受け、昼間はデイサービスを運営し、夜は自主事業として「泊まり」を行っているところもあります。また、「優人」や「元気な亀さん」は宅老所とうたってはいませんが、自主事業として昼間の通いと泊まりを行っています。
自分の家族が大型施設で受け入れ拒否をされてしまった、大人数施設のなかで不穏な行動が増えてしまったなど、家族の介護で困ったことがあった場合、この映画に出てくるような小規模施設や介護保険を使わない施設に相談してみるといいかもしれません。介護保険ではできないことができる場合もありますので、家族の介護を抱え込まず、まずは相談することから始めてみてください。
次回は、実際に介護保険外の施設がどのようなものなのか、映画に登場した「元気な亀さん」の様子をお伝えします。
『ただいま それぞれの居場所』は4月17日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次公開です。
詳しい映画情報を知りたい方は、http://www.tadaima2010.com/まで
宅老所という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? 映画に登場した「いしいさん家」「井戸端げんき」は宅老所とうたっていますが、宅老所とはいったい何でしょうか。「宅老所・グループホーム全国ネットワーク」によると宅老所を下記のように説明しています。
通い(デイサービス)のみを提供しているところから、泊まり(ショートステイ)や自宅への支援(ホームヘルプ)、住まい(グループホーム)、配食などの提供まで行っているところもあり、サービス形態はさまざまだ。また利用者も、高齢者のみと限っているところがある一方で、障害者や子どもなど、支援の必要な人すべてを受け入れるところもある。介護保険法や自立支援法の指定事業所になっているところもあれば、利用者からの利用料だけで運営しているところ、あるいは両者を組み合わせて運営しているところもある。
1980年代半ばから全国各地で始まった草の根の取り組み。大規模施設では落ち着けない、あるいは施設では受け入れてもらえない認知症高齢者に、少しでも安心して過ごしてもらいたいと願う介護経験者や元介護職員・看護職員などによって始まった。
宅老所の多くは民家などを活用し、通い(デイサービス)の形態から出発している。大規模施設では問題行動のある困った利用者という烙印が押された方も、宅老所ではお茶を飲んだり談笑したりと、落ち着いて過ごされる姿が見られる。1998年の全国調査(宮城県実施)では、600か所の宅老所があると報告されているが、宅老所の定義が不明瞭であるため現在の実数は定かではない。
このように宅老所は、大規模施設に入所できなかった認知症の症状が深い人などを受け入れることができるところです。「いしいさん家」や「井戸端げんき」のように、介護保険の通所介護事業の指定を受け、昼間はデイサービスを運営し、夜は自主事業として「泊まり」を行っているところもあります。また、「優人」や「元気な亀さん」は宅老所とうたってはいませんが、自主事業として昼間の通いと泊まりを行っています。
自分の家族が大型施設で受け入れ拒否をされてしまった、大人数施設のなかで不穏な行動が増えてしまったなど、家族の介護で困ったことがあった場合、この映画に出てくるような小規模施設や介護保険を使わない施設に相談してみるといいかもしれません。介護保険ではできないことができる場合もありますので、家族の介護を抱え込まず、まずは相談することから始めてみてください。
次回は、実際に介護保険外の施設がどのようなものなのか、映画に登場した「元気な亀さん」の様子をお伝えします。
『ただいま それぞれの居場所』は4月17日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次公開です。
詳しい映画情報を知りたい方は、http://www.tadaima2010.com/まで