認知症予防にも効果!
「共想法」で、ほのぼの会話
第1回 「共想法」とは?
「共想法」ということばを聞いたことはありますか。共想法とは、テーマに沿った写真や話題を持ち寄り、時間を決めて話し手と聞き手が交互に会話をして、想いを共有する手法です。脳の仕組みに基づく認知症予防を目指す新しい手法として、2006年に東京大学人工物工学研究センターの大武美保子先生が考案し、2007年よりNPO法人ほのぼの研究所の市民研究員の方々とともに開発が進められています。
*ほのぼの研究所HP http://www.fonobono.org/
*ほのぼの研究所HP http://www.fonobono.org/
共想法の効果
認知症の予防には、知的活動と社会的ネットワークによって認知活動を積極的に行い、認知機能の低下を遅らせることが大切だと言われていますが、共想法では、活発な会話により、参加者が総合的に認知機能を活用することを支援します。会話は、集中して行えば、それ自体が知的活動であり、かつ社会的ネットワークづくりの基本となります。
共想法の特徴
共想法は、聞くこと、話すことのどちらか、もしくは両方が苦手な人でも、楽しみながら会話ができるようになるように開発されたプログラムです。「どのように聞いたらよいかわからない」「どのように話したらよいのかわからない」という人のために、あらかじめ参加者一人ひとりの持ち時間と話す順序を決めておきます。また「何を話したらよいのかわからない」という人のために、あらかじめテーマも決めておきます。(1)テーマを決めて写真を持ち寄り、(2)時間と順序を決めて話し手と聴き手を明確にすることで、話し手は十分に準備することができ、聴き手は安心して「話を聴くこと」に集中することができます。
共想法と回想法の違いは?
ところで、「共想法」とよく似た名前の手法に「回想法」というものがあります。「回想法」は、過去を題材として想い出を語るもので、ご存知の方も多いと思います。会話を支援するという点で、共想法は回想法と共通していますが、回想法は過去を回想して話をするという「テーマ」によって定義されるのに対し、共想法はテーマを決めて写真を持ち寄り、一人ひとりの持ち時間と順序を定めるという「形式」によって定義されます。また、共想法に備えて新しい話題を探すため、共想法は「現在」「未来」に目を向けることになります。実際に、日常のちょっとした面白いことや興味深いことを見つけて写真を撮り、心に留める習慣ができた、生活が変わった、家族の会話が増えたという参加者からの報告もあります。
いかがですか。少し共想法に興味がわいてきませんか。次回は、共想法の具体的な実施方法について、詳しくお伝えします。
いかがですか。少し共想法に興味がわいてきませんか。次回は、共想法の具体的な実施方法について、詳しくお伝えします。
ご協力いただいた方
■大武美保子先生
東京大学人工物工学研究センター准教授。認知症をもつ祖母との会話をヒントに、写真を見てほのぼの会話をする「共想法」を考案。2007年に研究拠点「ほのぼの研究所」を設立し、翌年NPO法人化、代表理事を務める。共想法を日常生活の中で実践し、高齢者が本来持っている力を引き出し、認知症予防や介護、脳のリハビリテーションに役立てるサービスを、平均年齢73歳、最高87歳の市民研究員、福祉、介護、医療関係者と共に開発中。
現在、介護専門職の総合情報誌「おはよう21」(中央法規)にて、好評連載中。