医療にかかわる犬――セラピードッグ
第3回 一人前のセラピードッグになるまで
医師、看護師、薬剤師など―医療にかかわる職種には、その責務を果たすに必要なだけのトレーニング期間が義務付けられています。「治療」を行うセラピードッグも同様です。今回は、犬たちが一人前のセラピードッグとなるまでに受ける訓練※の一端を紹介します。
※紹介する訓練カリキュラムは、国際セラピードッグ協会が日米の高齢者施設、病院、障害者施設などでの現場実践から作成したオリジナルのトレーニング方法です。
※紹介する訓練カリキュラムは、国際セラピードッグ協会が日米の高齢者施設、病院、障害者施設などでの現場実践から作成したオリジナルのトレーニング方法です。
7段階のトレーニング
訓練カリキュラムは難易度でA〜Gに分けられ、A〜Dは基本的トレーニング、E以降は実践的なトレーニングとなります。
カリキュラムAでは、声の調子、指や手、表情などからハンドラー(訓練士、犬をリードする人)の指示や意思を理解するトレーニングや、ハンドラーに合わせて歩く歩行マナーなど、基本中の基本を学びます。施設や病院では大きな声を出せないため、声の調子や動作からハンドラーの意図を汲み取ることはとても重要であり、すべての訓練の基礎となるものです。
カリキュラムAでは、声の調子、指や手、表情などからハンドラー(訓練士、犬をリードする人)の指示や意思を理解するトレーニングや、ハンドラーに合わせて歩く歩行マナーなど、基本中の基本を学びます。施設や病院では大きな声を出せないため、声の調子や動作からハンドラーの意図を汲み取ることはとても重要であり、すべての訓練の基礎となるものです。
残りの基本的トレーニングとなるカリキュラムB〜Dでは、後遺症や障害をもった人と同じ速度で歩く(同速歩行)トレーニングや、不意に杖などを落とされても驚かないように、大きな物音に遭遇しても冷静に行動するトレーニングなどを行います。
カリキュラムEからは、実際のセラピー活動を想定した実践的内容となります。
たとえばEでは、車いすを利用する人のリハビリのための同速歩行を、Fでは少し趣を異にして、階段の上り下り、エレベーターの利用、ケージで待つなど、公共スペースで他人の邪魔にならないようなマナーを身に付けるトレーニングを行います。
たとえばEでは、車いすを利用する人のリハビリのための同速歩行を、Fでは少し趣を異にして、階段の上り下り、エレベーターの利用、ケージで待つなど、公共スペースで他人の邪魔にならないようなマナーを身に付けるトレーニングを行います。
トレーニングの最終段階であるカリキュラムGでは、ベッドマナーを学びます。これは、ベッドで寝ている人を対象に活動する際に必要なマナー。ベッド上で静かに過ごせるようにするだけでなく、入室に始まって退室まで、一連の流れを身につけます。
人と犬が信頼関係で結ばれる
上記で紹介した7段階のカリキュラムを身につけ、晴れて一人前となるまでの期間は平均で2年ほど。しかし、国際セラピードッグ協会で活動する犬たちは、その前に約半年間の“準備期間”を経ているそうです。その半年間とは、保健所から引き出されてきた犬たちが人間への信頼感を取り戻すためのリハビリ期間なのです。トレーニングセンターでハンドラーと寝食を共にしながら、犬たちはゆっくりと信頼を回復させていきます。
セラピードッグとして活躍するには、十分なトレーニングのほかにもう一つ重要な要素があります。それは、パートナーとなるハンドラーの存在。リーダーシップのとれるハンドラーと犬、両者がそろって始めて、“セラピードッグ”として機能することができるのです。トレーニングが必要とされるのは犬だけでなく、ハンドラーも同様です。犬の能力を引き出せるような訓練を積み、自分自身の人間性の向上も図っていかなければならないのです。
ところで、犬とパートナーを組むハンドラーの育成期間はどのぐらいなのでしょうか?「3年かけて、ようやくハンドラーとしてのスタート地点に立てます。犬たちよりも時間がかかりますよ(笑)」(大木代表)。
セラピードッグとして活躍するには、十分なトレーニングのほかにもう一つ重要な要素があります。それは、パートナーとなるハンドラーの存在。リーダーシップのとれるハンドラーと犬、両者がそろって始めて、“セラピードッグ”として機能することができるのです。トレーニングが必要とされるのは犬だけでなく、ハンドラーも同様です。犬の能力を引き出せるような訓練を積み、自分自身の人間性の向上も図っていかなければならないのです。
ところで、犬とパートナーを組むハンドラーの育成期間はどのぐらいなのでしょうか?「3年かけて、ようやくハンドラーとしてのスタート地点に立てます。犬たちよりも時間がかかりますよ(笑)」(大木代表)。
ご協力いただいた団体
国際セラピードッグ協会 http://www.therapydog-a.org/
社会福祉法人シルヴァーウイング http://www.silver-w.jp/
■参考文献
上之二郎 著『チロリとブルースマンの約束』集英社、2011年
大木トオル 著『セラピードッグの世界 動物介在療法 あなたの愛犬も「名犬チロリ」になれる!』日本経済新聞出版社、2009年
社会福祉法人シルヴァーウイング http://www.silver-w.jp/
■参考文献
上之二郎 著『チロリとブルースマンの約束』集英社、2011年
大木トオル 著『セラピードッグの世界 動物介在療法 あなたの愛犬も「名犬チロリ」になれる!』日本経済新聞出版社、2009年