医療にかかわる犬――セラピードッグ
第1回 動物介在療法とセラピードッグ
高齢者施設を訪ねた際、入居者の傍らにいる犬たちを見て「なぜこんなところに?」と、その姿を不思議に思ったことはないでしょうか?
福祉、医療、教育―まだまだ絶対数は少ないものの、現在、多様な場所でさまざまな目的をもって動物との触れ合いを取り入れた活動が行われています。その代表格が、いわゆるアニマルセラピー。高齢者施設などで見る犬たちも、ただの犬ではなくアニマルセラピーを行う犬―セラピードッグ―なのです。
福祉、医療、教育―まだまだ絶対数は少ないものの、現在、多様な場所でさまざまな目的をもって動物との触れ合いを取り入れた活動が行われています。その代表格が、いわゆるアニマルセラピー。高齢者施設などで見る犬たちも、ただの犬ではなくアニマルセラピーを行う犬―セラピードッグ―なのです。
AATとセラピードッグ
ただ、日本ではアニマルセラピーという言葉は、その歴史の浅さもあり、“動物とのかかわりを通じて心身へのなんらかの良い効果を得る”という意味で使われることが多いようです。一方、人と動物の関係に関して研究の進んでいるアメリカでは、活動内容ではっきりした区別がなされ、大きくアニマル・アシステッド・セラピー(animal-assisted therapy:AAT:動物介在療法)とアニマル・アシステッド・アクティビティ(animal-assisted activity:AAA:動物介在活動)の2つに分けられます。
紙数の限りもあり、ここでは詳細には触れませんが、「療法」と「活動」という違いに端的に示されているように、AATは治療が目的であり、AAAは動物とのふれあいを楽しみながら情緒的な安定を得ることなどが目的となります。本特集ではAAT、すなわちゴールを明確にした活動を行うセラピードッグを取り上げます。
紙数の限りもあり、ここでは詳細には触れませんが、「療法」と「活動」という違いに端的に示されているように、AATは治療が目的であり、AAAは動物とのふれあいを楽しみながら情緒的な安定を得ることなどが目的となります。本特集ではAAT、すなわちゴールを明確にした活動を行うセラピードッグを取り上げます。
「セラピードッグ」を名乗るには
感情表現が乏しかった認知症高齢者が笑うようになった、患者の術後の痛みを軽減することができた―欧米や日本で、セラピードッグの効果を示した学術論文がいくつも出されています。
さまざまな効果をもたらすセラピードッグですが、施設などで姿をみる犬たち全部が、その役割にふさわしい訓練を受けているわけではありません。セラピードッグを名乗り、特にAATなどの活動をするのは重い責任が伴う行為です。そのため、例えば、セラピードッグの育成や普及などの活動を行う国際セラピードッグ協会では、2年間にわたる訓練カリキュラムを課しており、犬たちはそのハードルを超えてはじめてセラピードッグとして活躍をすることが許されます。国際セラピードッグ協会が行うトレーニングの詳細は連載第3回目で取り上げますが、どのような訓練を経て「セラピードッグ」を名乗るかは各団体の良識に任されており、アニマルセラピーの健全な普及のためにも、統一された基準が必要なのかもしれません。
さまざまな効果をもたらすセラピードッグですが、施設などで姿をみる犬たち全部が、その役割にふさわしい訓練を受けているわけではありません。セラピードッグを名乗り、特にAATなどの活動をするのは重い責任が伴う行為です。そのため、例えば、セラピードッグの育成や普及などの活動を行う国際セラピードッグ協会では、2年間にわたる訓練カリキュラムを課しており、犬たちはそのハードルを超えてはじめてセラピードッグとして活躍をすることが許されます。国際セラピードッグ協会が行うトレーニングの詳細は連載第3回目で取り上げますが、どのような訓練を経て「セラピードッグ」を名乗るかは各団体の良識に任されており、アニマルセラピーの健全な普及のためにも、統一された基準が必要なのかもしれません。
日本初のセラピードッグは捨て犬だった
そんなに厳しいトレーニングを突破し、日本で初めてのセラピードッグとなったのは、どんな優秀な犬なのでしょうか? 驚くべきことに日本で認定された第一号のセラピードッグは純血種ではなく、一匹の雑種の捨て犬でした。チロリと名付けられた、その犬の生涯は本や映画となって紹介されているので、ご存知の方も少なくないでしょう。
現在、どんな犬種でもセラピードッグになれると考えられていますが、重要な条件のひとつに、いわば“思いやり”とでもいうべき資質が挙げられます。偶然に捨てられていたチロリと出会い、引き取ることになった国際セラピードッグ協会代表・大木トオル氏が、その資質を見抜き、チロリは通常2年間かかるカリキュラムをわずか半年で終了。1996年から“日本での第一号”のセラピードッグとして活動をはじめました。当時、医療や介護・福祉業界であってもセラピードッグ自体への理解が浅く、無理解や偏見もあるなか、その実力によって価値を認めさせ、“後輩”の犬たちが活動するための道を拓いていったのです。
ご協力いただいた団体
国際セラピードッグ協会 http://www.therapydog-a.org/
■参考文献
上之二郎 著『チロリとブルースマンの約束』集英社、2011年
大木トオル 著『セラピードッグの世界 動物介在療法 あなたの愛犬も「名犬チロリ」になれる!』日本経済新聞出版社、2009年
■参考文献
上之二郎 著『チロリとブルースマンの約束』集英社、2011年
大木トオル 著『セラピードッグの世界 動物介在療法 あなたの愛犬も「名犬チロリ」になれる!』日本経済新聞出版社、2009年